池川伸一「白髪娘の呪い」(1975年8月25日発行)

「八月の盆前、高木奈保美は親戚に連れられて、大津島を訪れる。
 奈保美は、宿屋の息子、真太郎と親しくなる。
 男っぽい、勝気な奈保子と、大人しい真太郎は、余程相性が良かったのか、ずっと交際を続ける約束をする。
 しかし、真太郎の妹、富子は奈保子にいい顔をせず、陰で敵意に満ちた視線を奈保子に送る。
 奈保子が島を去る前日、真太郎は奈保子にお土産として素敵な貝殻を渡す。
 町に戻り、数日後、奈保子の周囲でおかしなことが起こる。
 夜、決まった時刻になると、真太郎からもらった貝殻から泣き声が聞こえてくるのであった。
 また、真太郎から届いた速達には奈保子とは二度と会えない旨、書かれていた。
 奈保子は真太郎に連絡を取ろうとするが、全くの徒労に終わる。
 奈保子は悲嘆に暮れるが、妹の文枝が一緒に大津島に行って、真相を確かめようと勧める。
 善は急げとばかり、奈保子と文枝は船で大津島に向かう。
 二人は真一郎が勤めていた旅館を訪れるが、旅館は閉まっていて、留守番の老婆が一人いるだけであった。
 近所の人の話によると、実は、真一郎は富子のもとへ養子に来ており、二人は奈保子が島を去った後、何故か崖から転落、真一郎は奇蹟的に助かったが、富子は行方不明だと言う。
 奈保子は何はなくとも真一郎に会おうとするのだが…」

 まず、気になるのが、ジャケットのイラストであります。
 前側の少年少女だけ、明らかに絵のタッチが違うのですが、これは描いた絵師が違うのでありましょうか?
 個人的な推測ですが、ジャケットを描いている絵師が、池川伸一先生の絵柄を真似て描いたのでは…と考えております。(根拠は皆無です。)
 そして、ストーリーとしては、他の影響を頑として受け付けない、相変わらずの「池川節」です。
 女性のストーカー気質な愛情が描かれており、お馴染みの展開でラストまで突っ走りますが、この作品はそこそこ面白いと思います。
 工夫している描写がちらほらあり、雰囲気づくりに一役買っているせいでしょうか。
 また、この作品には特筆すべき点が一つあります。
 それは「トイレの怪談」を扱っているところ。(下の画像を参照のこと。単行本が割れるのが怖くて、大きく開けませんでした。ごめんなさい…。)
 文枝が旅館のぽっとん便所で用を済ました後、便所の穴から出てきた手に引きずり込まれそうになる描写があり、これは最も早い便所での恐怖描写の一つであるように思います。
(私が知らないだけで、他にもいろいろあるのかもしれませんが、そこまで調べる時間が残念ながらありません。)


 若い人や都会に住んでいる人にはわかりにくいでしょうが、水洗便所と違って、ぽっとん便所の底はズバリ「屎尿」でありますから、これは恐怖!!
 この描写だけは今現在も色褪せません!!(言い換えますと、これだけのマンガと言っていいかも…。)
 余談ですが、便所がらみの怪奇マンガを集めた単行本があります。
「コミック版学校の怪談@ 戦慄のトイレ恐怖体験集」(秋田書店/ホラー・コミックス・スペシャル/1994年10月30日初版発行)
 メインは、古賀新一先生、日野日出志先生、谷間夢路先生といった大ベテランの描いたマンガ…ではなくて、あまり名前を聞いたことのない女性マンガ家達の描いたマンガの方です。
 舞台が便所なだけに、パンツを半下ろしのまま、怪奇現象に慄く女子学生のマンガが単行本の大半を占め、そのスジの人にとっては夢のような内容となっております。
 それにしても、便所で恐怖体験をするのは何故に女性ばかり…?(男はどこでもできるからなんですかね。)

・備考
 カバー背表紙下部に切れ。小口下部に何かにぶつけたような歪みあり。

2016年3月17日 ページ作成・執筆

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