まちだ昌之「たたり」(1974年5月31日発行)
「高慢ちきで、わがままな対馬裕美は、豪邸に住む、社長のお嬢様。
そんな彼女が恋をした。
相手は、違うクラスの佐々木という男子生徒。
しかし、彼にはすでに恋人がいて、それは裕美のライバルの三善という女子生徒であった。
三善に憎悪を燃やした裕美は、裕美の父親の会社で家族が働いている、孝子を協力させ、ある計画を実行に移す。
その計画とは、理科の時間、棚の上に蓋の緩んだ、硫酸の瓶を置き、三善にかかるようにするというものであった。
計画通りに進み、裕美は顔半分に硫酸を浴びてしまう。
顔半分にケロイドが残った三善は佐々木に捨てられ、その後釜に座った裕美は佐々木と仲を深めていく。
ある日、三善のもとに事の真相を暴露する、匿名の手紙が届く。それは孝子が出したものであった。
三善は裕美を、人気のない、鬱蒼とした沼に呼び出し、硫酸の瓶を片手に裕美を詰問する。
だが、手紙を出したことを知られると困る孝子が裕美に加勢し、形勢逆転、遂には三善を溺死させてしまう。
困った二人は、三善の死体を池に沈めるのだが…」
凄まじく「陰惨」な内容です。
当時、これほど「陰惨」だったマンガは他になかったのではないでしょうか?(あったら、ごめんなさい。)
「負の要素」満載といったストーリーが、いまだ衰えない瘴気をぶくぶく発散させております。
出てくる登場人物は皆、何かしらどす暗い感情を胸に抱き、最後の最後まで誰も救われません。(「エリナー・リグビー」以上!!)
「ネガティブな感情の行き着く果て」を(知らず知らずのうちに)描写し尽くした漫画の一つなのでは?…と、私は考えております。
そして、このマンガで一番の曲者が、この「絵」であります。
パッと見は昭和の素朴なマンガなのですが、この絵で悪意の渦巻く、ドロドロな犯罪ドラマを展開されると、何ちゅ〜か、凄いです。(注1)
比較的明るい絵柄によって、写真におけるソラリゼーションのようにネガポジが反転、「陰惨さ」が際立つことになっているような気がします。(「陰惨」なシーンは恐ろしく気合が入っていて、他の絵柄との落差も味わい深いです。)
でも、一番凄いのは、こんな「陰惨」なマンガを(多分)「うっかり」描いてしまった、まちだ昌之先生ではないのでしょうか?(注2)
・注1
この「絵」で「極限状況におけるカニバリズム」を活写した(のか…?)、まちだ昌之先生の処女作「人喰い少女」は、現在、入手が非常に困難です。
読みたいなあ〜。(まあ、機会を待ちましょう。)
・注2
プレミア価格…納得です。
内容が…というわけでなく、「売れなかったんだろうな〜」という意味で…。
でも、今回、「毒蛾少女」とともに読み返してみて、ストーリーはかなりいいと思いました。
・備考
カバー色褪せ。
2016年4月20・21日 ページ作成・執筆