大石まどか「妖怪の子守唄がきこえる」(1975年2月25日発行)



「小さな村に流れ着いた、図体が大きいが、オツムは幼児のレベルの青年、タロ。
 庄屋の家で働くお加代や、寺の和尚に世話され、その日その日を暮らしていた。
 が、タロがどこからやって来たのか、また、どこに住んでいるのか知る人はいない。
 ある日、村に大きな地震が起こる。
 タロのねぐらであった枯れ木が倒れてしまい、タロが別のねぐらを探していると、山裾に洞窟を見つける。
 すると、洞窟の奥から、呻き声が聞こえてくる。
 タロが奥へ向かうと、大きな岩に下半身を下敷きにされている女性がいた。
 その岩をのけ、タロは女性を水の湧き出る場所へ移す。
 その女性は、お礼に天国というところに案内するとタロに言う。
 そこでは会いたい人に会えると言うので、タロはすかさず自分の母親と答える。
 女性の言うまま、横になり、母親のことを一心に考えていると、タロの目の前に亡き母親が現れるのであった。
 その後、二夜続けて、タロをいじめていた愚連隊の連中が生き胆をえぐり取られて、殺される事件が起きる。
 村人は狼の仕業と言うが、和尚はタロに不吉な影がつきまとっているのを感じる。
 六十年前にこの村を恐怖のどん底に陥れ入た、白竜山の妖怪が甦ったのであろうか…」

 大ベテランでありながら、マニア人気のあまりなさそうな大石まどか先生。
 ひばり書房黒枠に残した単行本は良質なものが多いです。
 この作品も良質な作品でして、ストーリーがちと弱いのが難点なのですが、端正な絵が時代劇にマッチして、非常に味があります。
(この絵に、古臭さがあることは認めますが、同時に色褪せない新鮮さを見出す人は多いのではないでしょうか。若い人に是非読んでいただきたいものです。)
 そして、見どころは、何と言っても「ジャイアント・スパイダー大襲来」!!
 大抵、こういうモンスターものは、チマチマ姿を垣間見せて、ラストに大開帳(そして、ヘボさにガッカリ…)ってなことが多いのですが、そんなケチ臭い真似はしません。
 モンスターを包み隠さず、見開きいっぱいに、ド迫力で、その暴れっぷりを見せつけてくれます。
 また、絵柄に似合わず、意外と残酷度が高いのも魅力です。(なかなかグロくて、心躍ります。)
 ストーリーに奥深さがもう少しあれば、と思わずにいられない…惜しい、惜しすぎる作品です。

2016年1月7日 ページ作成・執筆

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