広丘純「私でない私」(220円/1966年頃)
「石原美夏は三年前、両親を飛行機事故で亡くし、町工場を経営しているおじに世話になっていた。
友人のユミと映画を観に行った日、二人はタクシーで帰る。
途中、タクシーが急に止まり、運転手は慌てて外に出る。
女の子を轢いたと運転手は話すが、その場には誰もいない。
美夏はそこからおじの家に歩いて帰るが、おじ夫婦は彼女を美夏と認めず、彼女は戸惑う。
鏡の中の彼女の顔は他人の顔に変わっていた。
家をとび出し、夜の町をさまよっていると、見知らぬ夫人が声をかける。
夫人は美夏を宮崎春子と呼び、家に帰ろうと誘う。
彼女の娘、春子はある日、学校に出かけ、そのまま、帰らず、以来、行方不明であった。
美夏は見知らぬ夫人のもとに行くのは気が進まず、もう一度、おじ夫婦の家に戻るが、喧嘩になってしまい、いたたまれずに家をとび出す。
そこに先程の夫人が現れ、美夏は宮崎家へと行く。
その家は立派な作りで、彼女の部屋もとても素敵。
また、父親は彼女の帰りを心から喜んでくれ、美夏は宮崎春子として生きていくことを決める。
しかし、宮崎家の主人夫婦は様子がどうもおかしい。
家には何故か人の気配がなく、夫婦はいなかったかと思えば、突然、現れる。
美夏はこの家から出て行こうとするのだが…。
美夏の身に何が起こったのであろうか…?」
オカルトものの佳作です。
今読むと、大して怖くはありませんが、この雰囲気は捨てがたいです。
ただ、ヒロインの顔はビフォー・アフターでそこまで変化をしていないのが、ちょっぴり興ざめかも。
・備考
ビニールカバー貼り付け。糸綴じの穴あり。後の見開きに貸出票の剥がし痕、スタンプ印、書き込みあり。
2023年7月24日/2024年3月15日 ページ作成・執筆