古山寛「犬神の少女」(220円/1966年2月頃完成)



「東北のI県にある僻村、犬神村にある旧家、風森家を訪れた萩原葉子。
 葉子の亡くなった母が風森家の出身だったために、呼び出されたのであった。
 風森家の現当主である、葉子の祖母は、病の床に臥せており、先は長くはない。
 風森家は、親戚は他になく、屋敷に血縁の者が集まっていた。
 血縁の者とは、葉子の祖母に、葉子の母親の妹の旦那、一平とその盲目の娘、明美、それと遠い血縁にあるじいやとばあや、それと葉子。
 明美の父は飲んだくれであり、この家を嫌悪しているらしく、葉子に一日も早く屋敷を去るよう忠告する。
 葉子が屋敷に泊まったその晩、祖母は逝去。
 その野辺送りの際、一匹の犬が現れる。
 その犬は犬神つきと言われている娘、お美智の飼っている犬であった。
 この少女は、幼少の頃、父親が米泥棒の濡れ衣を着せられて、家に火をつけられた時に、炎の中を飼い犬によって助け出されたのであった。
 それ以来、お美智は気が触れてしまい、村人達は彼女を犬神つきと信じ、敬遠していた。
 また、米泥棒の真犯人は風森家の人間だったという噂があり、風森家は犬神の祟りを受けていると見られていた。
 そういう経緯があり、お美智の犬を忌々しく思った一平は、犬を毒殺する。
 しかし、直後に、自分も同じ毒を酒に入れられ、頓死する。
 風森家の人々は自分達に憑いている犬神をおとすために、いたこの老婆のもとでお祓いを受ける。
 そこには巫女の衣装に身をまとったお美智の姿もあった。
 しかし、悲劇はこれだけにとどまらない。
 犬神つきは一体誰なのだろうか…?」

 個人的には、貸本に描かれたものとしては、傑作だと思います。
 「犬神」をテーマに据えたミステリーですが、きっちりと下調べをして、ストーリーに活かしているのが凄いです!!(注1)
 本編の途中で「『ちょっとおやすみ』のページ」では、恐山を実際に訪れ、見聞したことも書かれております。
 素朴なタッチの絵ですが、ムードは満点、盛り上げるところはきっちり盛り上げます。
 ミステリーとしても少しわかりにくい部分はあるものの、構成が上手で、読むうちに引き込まれて、物悲しいながらも戦慄のラストまで一気に読んでしまいます。
 ただし、子供向けにしては内容が難しく、貸本マンガという媒体でしか発表の場はなかったマンガのように感じます。
 あと、この古山寛という御人について詳しいことはさっぱりわからないのですが、故・白川まり奈先生や巨匠・諸星大二郎先生といった「オンリー・ワン」な漫画家さん達の系譜の端緒に位置する一人ではないか?…と考えております。
 そのぐらい、独特な雰囲気を持ってます。
 かと言って、孤高というわけはなく、作者のお人柄でしょうか、温かさと繊細さに溢れた作風が、心にしみ入ります。

・注1
 過去、記憶違いでなければ、この作品の人物設定などを描いた設定資料が○○オクに出たことがあります。
 三万円以上までせったように覚えておりますので、隠れファンがいるのかもしれません。
 欲しかったなあ…。

・備考
 ビニールカバー一部貼りつき。カバーに痛みあり。糸綴じの穴あり。カバーの裏に鉛筆での書き込みあり。後ろの見開き、マジックでの書き込みあり。

2016年8月7日 ページ作成・執筆

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