鳥海やすと「怪談 狂った苗木」(200円/1964頃)
「江戸時代。
ある商店の主、茶屋四郎え門の遺言により、全財産は娘の智美に譲られる。
更に、十年前に茶屋四郎え門によって拾われ、育てられた松がその面倒を見るよう告げられる。
しかし、智美は美しくはあったが、オツムが少々かわいそうな娘であった。
また、茶屋四郎え門も妹でありながら、相続権を得られなかった、おちょうとその娘、おのぶもおもしろくない。
松は智美を持て余し、その隙をついて、おちょうの差し金で、おのぶは松に接近する。
そして、大晦日、慰安のために皆出かけ、店には智美と松、おちょうとおのぶが留守番をしていた。
おちょうはこれを機に智美の殺害をもくろみ、淵に突き落とそうとするが、智美に逆襲される。
包丁を振り回す智美を松は取り押さえようとして、過って智美を刺殺。
三人は裏庭に智美の死体を埋め、最終的に、智美は淵から転落したものと判断される。
春になり、裏庭から四本のびわの苗が生える。
それは智美の死体の胸元に入れていたびわの実から出たものであり、そのびわの実は、おのぶの兄、角次郎がびわを食べたがる智美のために探し出してきたものであった。
四年後、びわの木は大きく育つ。
智美は生死不明のまま、松とおのぶは婚約することとなる。
だが、店の女中が智美の姿を見たと言い出したことを皮切りに、怪異が続出、おちょう達は追い詰められていく…」
何と申しましょうか、味わい深いマンガなのであります。
内容はちょっぴり他愛無い幽霊譚なのですが、達者な描線で描かれた、瑞々しい絵柄がそれを補って余りあるほど、魅力的。
貸本マンガでも斯様な印象的なマンガはあまりないように個人的には思います。
今現在、読んでも、なかなか新鮮なのではないでしょうか?
・備考
カバーなし。糸綴じの穴あり。前の遊び紙、下隅が少し欠損。後ろの遊び紙、半分欠損。シミ、汚れ、切れ、たくさんあり。
2016年8月31日 ページ作成・執筆