古山寛「白蛇の少女」(220円/1966年4月30日完成)


「舞台は東北の山深い地方。
 孤児の美也は、またぎを営む老人と、彼が親戚筋から引き取った令治と共に、山奥の小屋で暮らす。
 美也と令治は実の兄妹のように育ち、いつしか二人の間には深い愛が芽生えていた。
 しかし、美也の素性がわかり、美也は老人と令治のもとを去る。
 美也が引き取られたのは、山間の温泉郷、鹿の沢村にある、牧本家の屋敷であった。
 美也の両親は、牧本家の若主人であった明彦と、この村に流れ着いた、美貌の遊芸の巫女であった。
 昔、この二人が許されぬ恋をした。
 村の占い婆が巫女を蛇性の女と警告するにもかかわらず、明彦は妻子を捨て、二人は東京に出奔。
 数年後、明彦は病死し、この村に戻って来た母親は、美也の将来を考え、湖に身を投げる。
 だが、美也の祖母は美也を屋敷に引き取らず、美也はマタギの老人に育てられることになる。
 だが、明彦の本妻が産んだ女児がマムシに噛まれ、死んだことより、牧本家の血をひく唯一の者として、急遽、美也は屋敷に呼び戻されたのであった。
 母親に瓜二つの美也を憎む祖母と、子供が死んでから発狂した明彦の妻に囲まれて、生活を送ることになった美也は、家から出ることもかなわず、孤独に満ちた生活を送る。
 時が過ぎ、美也は、肌が白く透き通るような、美しい少女となる。
 そんな美也を、村人達は死んだ母親と同じく、白蛇の精だと噂するのであった。
 一方、美也と別れた令治は、老人の死後、片耳と呼ばれる人食い熊を追っていた。
 片耳は、美也が幼い頃、拾った子熊であったが、人間に追われるうちに凶暴化してしまったのであった。
 令治は片耳を決して殺したくはなかったが、自分の因縁にケリをつけるため、また、もう一つの目的があり、決死の思いで片耳を追う…」

 「犬神の少女」に続いて、「白蛇の少女」もこれまた傑作だぁ!!
 この作品も設定がしっかりしており、巧みな構成と相まって、読み応えは充分です。
 また、スリラーというよりも、白蛇の精と言われる、薄幸の少女の運命を描いた悲恋ものでして、なかなか泣けます。
 難を言いますと、美也の母親の死の描写がわかりにくいことと、美也が白蛇の化身と囁かれる理由が若干弱いかもしれません。
 まあ、全てに説明を求めるのは私の悪い癖でして、何度も読んで、細部からいろいろと想像を働かせることも、また一つの楽しみなのであります。(また、それが可能な作品です。)
 最後のあとがきには、蛇に関する伝説や神話などに関する、作者のうんちくが書かれてあり、古山寛先生のポテンシャルの高さを感じます。
 読んだら、喜ぶ人、意外と多いのでは?

・備考
 ビニールカバー一部貼りつき、また、ビニールカバーに紙か何かの貼りつきが少しあり。糸綴じあり。読み癖ひどし。シミ、汚れ、裂け、多くあり。pp5・6、下隅のコマにかかる欠損あり。pp78〜92、目立つシミあり。巻末、貸出票の剥がし痕あり。

2016年8月8日 ページ作成・執筆

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