関よしみ「鮮血の法則」(2000年8月5日第1刷発行)

・「鮮血の法則」(「恐怖の館DX1998年3月号」初出)
「B型の美貴は、血液型占いの信奉者。
 判断の基準は基本的に血液型で、友人だろうが、何だろうが、ケツハラ(注1)しまくり。
 だが、町内で頻発する、衝動的な無差別殺人がある血液型に関係あるらしく…」

・「我慢のススメ」(「ホラーウーピー1999年夏号」初出)
「西嶋紀華と坂東貴子はライバル同士。
 スポーツでも勉強でも、何でも張り合わなければ、気が済まない。
 二人の競争は際限のない我慢くらべの様相を帯びてくる…」
 ピアスの描写が「キュン」ときます…。

・「タイム・リミット」(「ホラーウーピー1999年秋号」初出)
「1999年、Y2K問題(西暦2000年問題)について聞かされた、岸田栄の母親。
 彼女は、そのパニックを恐れて、万が一のための備えを始める。
 それは徹底したもので、自給自足できるようにするだけでなく、他の人達に呼びかけやビラ配りまでする始末。
 そんな母親に、受験勉強中の兄もその影響を受けていき…」

・「絶対+安全」(「ホラーウーピー2000年冬号」初出)
「笹浦望は、町中の空き地に低レベル放射性廃棄物用のドラム缶が放置されているのを発見する。
 父親が核燃料の再処理施設の会社で働いている、浜田真が言うには、他にも行方不明の核廃棄物があるらしいが…」

・「捨てないで!!」(「ホラーウーピー2000年春号」初出)
「母子家庭だが、友人に恵まれ、幸せな上原紫乃。
 ただ一つ、隣のゴミ屋敷の、蒲簀(かます)のおっさんには非常に迷惑していた。
 このおっさんはゴミの声が聞こえるらしく、あちこちからゴミを集めては、家の敷地いっぱいに貯めこむ、大変人。
 ある日、紫乃の母親が胃癌で倒れてからは、紫乃の生活は一変する。
 学業だけでなく、家事や母親の看病に追われる紫乃は心身ともに荒んでいき…」

・「捨てないで!!U」(「ホラーウーピー2000年夏号」初出)
「非情な世間に背を向け、ゴミ屋敷のおっさんと共に第二の人生を歩む紫乃。
 何のしがらみもなく、七面倒臭いこと全てから解放された紫乃は、毎日のゴミのチェックが楽しくて仕方ない。
 そんな最中、ゴミ屋敷を壊滅させるための企てが進められていた…」

 この単行本に収録されている作品は、時事問題(Y2K問題、エコロジー、原子力問題、等)をテーマにしたものが大半で、基本的に怪奇色は薄いです。
 そりゃ、放射能やパニック、石油危機も「怖い」ことには違いないのですが、「怪奇」とは言い難いのです。
 これは「if(もしも〜なったら)」という可能性を追求した、社会派な作品と捉えるべきでありましょう。
 もしかしたら、目先のショック描写ばかりを追求して、肝心の「本当に恐ろしいこと」には全く想像力が働かない私のような人間を弾劾しているのかもしれません?!
 まあ、そんなことにはおかまいなく、「盲蛇に怖じず」という言葉通り、何も見ず、何も考えず、安穏と生きて(死に近づいて)いるのでありますが…。

・注1
 血液型ハラスメントのこと。
 室山まゆみ大先生の「あさりちゃん」の「ケツハラ知ってる?」を参考とさせていただきました。
(「小学一年生9月号増刊 まるごとあさりちゃん」(小学館/2012年8月9日発売)収録)
 それにしても、「あさりちゃん」って…ファンタスティック!!(感極まってます。)

2016年1月5・6日 ページ作成・執筆

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