黄島点心「黄色い耳 (((胎教)))」(2022年2月3日初版第一刷発行)
・「プロローグ」
「海辺の浜茶屋でバイトをする二人の黒ギャル、レーナとジュレ(二人とも22歳)。
ある日、ナンパされて、夜の浜辺で花火をすることとなるが、それにガタイのいい、パンチ・パーマの男が混ざる。
これが「耳地獄」の発端であった…」
・「第一部 (((胎教)))」
「雨の夜、桃色峠。
レーナとジュレの仲間である黒ギャル達は山中にパンチ・パーマ男の死体を埋める。
この男は最低最悪のクソヤローで、暴力は日常茶飯事、レーナとジュレに二股をかけたりした結果、黒ギャル達に殺されたのであった。
そして、レーナとジュレは妊娠するも、レーナは堕胎し、ジュレは子供を育てる決意をする。
ある夜、黒ギャル達は男友達と桃色峠を訪れる。
皆はマジック・マッシュルームをキメてラリっているが、レーナとジュレはそんな気分になれない。
ジュレを車に残し、レーナが外を散歩すると、男を埋めた所に、耳の形をしたキノコが生えていた。
キノコは彼女の耳を誉め、愛の告白をし、すっかりときめいたレーナはキノコとファックする。
翌朝、目を覚ますと、レーナの鼓膜は破れていた。
後日、鼓膜は治ったものの、今度は耳たぶが腫れてくる。
ある日、黒ギャル達はジュレと共に産婦人科に行く。
そこに現れたのは、キノコに寄生された、クソ男の腐乱死体であった。
寄生しているのは「耳キノコ族」。
「耳キノコ族」は「人間の耳から進化したキノコ」で、「人間社会の音を太古からずっと聞いてきた」のであった。
だが、耳キノコ族が桃色峠に埋められた死体を養分にしようとした時、そこに雷が落ちる。
その瞬間、耳キノコ族と男の耳が化学変化を起こし、「耳ュータン人(ミュータント)」が生まれる。
そして、レーナとまぐわったのは、この「耳ュータン人」で、彼女は彼の子供を耳に妊娠していた。
「現実の世界への誕生」を恐れる耳キノコ族はレーナの子供をつけ狙う。
レーナと耳ュータン人は、耳キノコ族の菌糸の届かないポリネシアを目指すのだが…」
・「第二部 (((帰郷)))」(注1)
「人里から遠く離れた、元・金山の頂上にある一軒家。
この家で、兄と妹の桔梗が二人、父親が帰るのを待っていた。
不思議なことに、兄は耳は蟻を誘引し、彼はしばしば蟻にたかられては、悶え苦しむ。
しかも、その蟻を餌に、耳の奥には凶暴なアリジゴクが棲みついていた。
このアリジゴクを何度も除去しようとするも叶わず、兄は手の指を全て食いちぎられる。
だが、父親が毒蟻に殺されてしまい、三か月もの間、兄妹は山頂の家に取り残される。
兄を一緒に寝るうちに、桔梗の腹は膨らみ、また、兄は正気を失っていく。
二人の運命は…?」
・「漫画の耳」
「ある独房で、漫画を読んでいた囚人がある秘密に気づく。
それは漫画の耳にある「6」についてであった…」
個性派だけど、そんな「枠」なんか遥かに飛び越えてしまっている感のある黄島点心先生。
多作とは言えませんが、その全てが一筋縄ではいかない、独特の世界をどんと提示しております。
この「黄色い耳」ですが、私にはこの作品を表現する言葉を持ち合わせておりません。
あえて言葉を絞り出すと、白川まり奈が「マタンゴ」でトリップしながら「ドグラ・マグラ」を描いたら、こんな感じになるんじゃないでしょうか?(ならねーよ!!)
奇を衒い、破天荒を装った漫画は多々ありますが、これを高度のエンターテイメント作品として成立させているところに黄島先生の凄さが窺えます。
この駄文を読んで、どれだけ作品の魅力を伝えることができたか心もとないのですが、漫画とキノコが心底好きな人は是非読むべきです。
皆で読んで、三半規管を狂わせましょう。
・注1
私の勘違いかもしれませんが、花輪和一先生の漫画のオマージュなのでしょうか?
そう言えば、花輪作品で、平安時代あたりが舞台で、アリジゴクを食べた女性がアリジゴク人間になった話があったなあ…。(タイトル失念)
2023年1月1日 ページ作成・執筆