浜慎二「黒ねこ」(小学五年生6月号/1968年6月1日発行)

「肺病が不治の病だった頃、東北地方の田舎に奇妙な言い伝えがあった。
 その言い伝えとは、人の骨を誰にも見られずに掘り出し、粉にして飲ませると、肺病に効くとされていた。
 肺病病みの息子を持つ源は、夜中、墓場で死体の骨を掘り出した帰り、片目の黒猫に見られてしまう。
 やむを得ず、黒猫を鍬で殴り殺し、家に持ち帰って、壁の中に埋める。
 だが、翌朝、息子が変死、その死体の周囲には猫の足跡があった。
 源といわの夫婦は祈祷師を呼んで、猫を埋めた壁のある部屋を封印してもらう。
 だが、猫の呪いは二人にすでに及んでおり、程なくして、両人とも怪死を遂げる。
 それから、数十年過ぎ、その家には源といわの孫にあたる家族が住んでいた。
 家族は、父親の小川浩一郎、母の明子、姉弟のマリ子と章二の四人。
 ある夜、住み込みの女中のたけが、呪われた部屋の封印を破ってしまう。
 凄まじい悲鳴が聞こえ、家族が駆けつけるが、たけはそこまで変わった様子はない。
 しかし、姉弟は、たけの顔が片目の猫に変わっているのを目撃する。
 父親が部屋を再び封印しようと、戸に木切れを五寸釘で打ち込むと、たけが急に苦しみ出し、悶死。
 その死体の胸には、釘を打ち込んだ数と同じ、四つの穴が空いていた。
 数日後の雨の日、章二は片目の男と出会う。
 男は、章二にたけの墓に連れて行くよう頼み、その墓を掘り出すよう言う。
 章二はその場から逃げ出すが、その夜、墓から脱け出たたけが小川家に戻ってくる。
 たけに襲われ、マリ子も猫に憑りつかれ、その魔手は章二にも伸びる…」

 ポー「黒猫」をちょっぴり取り入れた、「化け猫」テーマの作品です。
 浜慎二先生にしては珍しく、「分裂症的」もしくは「悪夢的なイメージの連鎖」でありまして、ストーリーははっきりと理解しがたいです。
 更に、「死体の骨を粉にしたものを薬として飲む風習」なんて、高学年とはいえ、小学生向きではないなぁ…。
 あと、たけさんの死体、どうなったんだろう…?

・備考
 下側、全体的に折れ曲がっている。

2017年7月30日 ページ作成・執筆

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