はまえりこ「赤ん坊がこわい!」(関晴彦・原作/1968年7月1日発行/なかよし第14第8号付録)
「美ガ原にピクニックに来た母親と姉妹の和子と可奈子。
急に霧が出始め、気が付くと、三人は荒涼とした風景の場所に出る。
「ケケケーッ」という異様な泣き声に引かれて、向かうと、そこには可愛い赤ん坊が捨てられていた。
姉妹が止めるのも聞かず、母親は赤ん坊を連れて帰る。
奇怪なことに、美子と名付けられた赤ん坊は四か月経っても、少しも成長する気配がない。
一方で、母親は憔悴していく。
美子にお乳をあげようと無理をして、胸から血を飲ませていたのであった。
奇怪なことはそれだけにとどまらず、夜中、家の周囲を怪しい物影が徘徊する。
そして、何者かによって、ビリビリに裂かれた、戦争中の父親の写真。
その最中、航海中の父親が家族のもとに戻ってくる。
父親も異様な出来事に直面し、戦争中に犯した罪のことを思い出すのであった…」
講談社の雑誌「なかよし」で活躍したのは、御存知、楳図かずお大先生であります。(注1)
勿論、今回、ご紹介する「赤ん坊がこわい!」も影響を受けているはずですが、ぶっちゃけ、古賀新一先生のテイストが溢れております。
突拍子もないストーリーに、大仰なわりに「ユル〜い」描写…奇妙な味わいです。(p33に口まわりを血に染めた赤ちゃんはキモカワです。)
しかも、ネタバレで申し訳ないのですが、全ての原因は、戦争中、ある島で、父親が牝鹿を車で轢き殺し、その子鹿をサーカスに売り飛ばしたから…なんですって。
動物愛護団体に文句を言われるのを覚悟で言いますと、その程度のころでここまで呪われたら、かなわんがな!というのが正直な感想。
釈然としないまま、ラストは「バンビ」で締めてまして、素直に感動したらいいのか、あっけにとられたらいいのか、非常に難しい選択に迫られます。
とりあえず、「怪奇」ものを「動物」ものの感動的な方向に持って行こうとして、中途半端な内容になってしまった点はいただけないと思いました。
あと、このマンガには幾つか印象的な「絵」がありまして、個人的なお気に入りは右の図。
驚きの後の虚脱感を見事に描写したシーンだと、個人的には感動いたしました。(腰の筋も伸びて、健康的。)
・注1
この付録雑誌の巻末の読者コーナーに、楳図かずお先生のマンガ(「生き人形」)のイラストが投稿されております。
2016年7月16日 ページ作成・執筆