いばら美喜「恐怖の体育祭」(1986年8月15日第1刷発行)

「秋。体育祭の季節。
 運動音痴の瞳は、運動神経抜群の妹と比較され、コンプレックスに悩む。
 ある日、風邪で休んでいる親友のあけみへのお見舞いに向かう途中、物陰から黒いコートに身を包んだ女性が現れる。
 女は瞳を体育祭のリレーで一着にする代わりに、ある頼みごとをする。
 それは、瞳の友人のあけみの一家が十年前に住んでいた家の地下室の、そのまた地下に通じる床石を開けて欲しいというものであった。
 黒衣の女と黒衣の男二人と共に、瞳がその家の地下室に降りると、床石は十字架で封印がしてあった。
 瞳が十字架をのけ、床石を上げると、その下にはあったのは、首なし死体が三体。
 黒衣の男女は実は首だけであり、その首が飛んで、胴体と合体し、三人は復活する。
 この男女は、魔界を信奉する黒蝶会のメンバーであり、女はその教祖、男二人は信徒であった。
 黒蝶会の教えは「死後、超能力が備わって、生き返る」というもので、どんどん勢力を拡大したのだが、キリスト教徒に弾圧され、三人は海に近い洞窟に隠れ住む。
 だが、その上に洋館を建てられ、彼らは閉じ込められてしまう。
 その家を建てたのは、黒蝶会を潰したキリスト教のリーダー、あけみの祖父であった。
 脱出を図る三人はようやく地下室の床を外し、首だけ出して、辺りを窺っていたところを、あけみの祖父に発見される。
 あけみの祖父は三人が逃げられないよう、床に重しをして、人を呼びに行く。
 床に首に挟まれたままの三人は自ら首を捩じ切り、首だけになって、海に飛び込み、海中を漂うこと七年、ようやく日本に戻って来た。
 しかし、首のままでは超能力を発揮できず、まず飛ぶ練習をし、次に衣服を入手する。
 そして、胴体を取り戻すことを考えていた時に、瞳と出会ったのである。
 復活した三人はまず、あけみの家に復讐に向かう。
 三人は超能力によって、あけみの祖父を黒蝶に変え、あけみとその両親も首を切断し、黒蝶会の信徒に変える。
 そして、迎えた体育祭。
 百メートル競走で瞳の組の番が来る…」

 立風書房での、いばら美喜先生の作品は珍作・怪作だらけであります。
 その中でも、この作品は「破天荒さ」においてトップ・クラスなのではないでしょうか?
 実際、上の粗筋だけ読んで、どれだけの人が理解できるのか謎ですが、本当にそういうストーリーです。
 ワケわからないながらも、問答無用でグイグイ読ませる「いばら美喜」節は健在で、やっぱ、面白いです。(ただ、絵がかなり粗いのが、残念です。)
 あと、「みな殺し」(「オール怪談・45」(貸本/ひばり書房)収録)と同じ、「円盤で首切断」のギミックが使用されているのも、嬉しいところです。
 でも、まあ、個人的に最も印象的だったのは、「来年の運動会で私はまたビリ……」と心の中で呟く、ヒロインのネガティブさだったりします。
 確かに、体育祭なんてやりたい奴だけやりゃあいいんです。何であんなものに血道を上げるのかさっぱり理解できません。(運動神経ゼロのおっさんからの意見)

2017年5月11日 ページ作成・執筆

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