川崎ゆきお「恐怖!人食い猫」(1988年9月15日第1刷発行)
「南野もも子は、思春期真っただ中の中学生。
父親も、過保護で腺病質な母親も、学校も、勉強も、み〜んなイヤ!!
ある日、学校をさぼって、喫茶店に行った、もも子は、女性客が猫娘であることに気付く。
その猫娘をつけると、いつの間にか、もも子は猫町へと迷い込む。
猫人間達に捕まった、もも子は、大猫屋敷に連れて行かれ、主の巨大猫にまるかじりにされそうになるが、先程の猫娘の口ききで命を助けられる。
しかし、人間社会には戻れないと言われ、これから先一生を牢屋暮らしをすることとなり、もも子は嘆く。
そこへ、牢屋のレンガを取り外し、猫男がもも子の前に現れる。
猫男は、人間の男が変装したもので、彼は猫町に三味線用の皮を取りに来ていたのであった。
男の手引きによって、もも子は人間の世界に戻ろうとすると、先で猫達が二人を待ち受けていた。
男は猫達によって八つ裂きにされるが、もも子はかろうじて人間の世界へと逃げ帰る。
しかし、それも束の間、常識では考えられない、奇怪な出来事が、もも子に次々と降りかかる。
実は、もも子が帰ったのは「現実の世界」ではなく、「夢の世界」であった。
もも子は「現実の世界」に戻れるのであろうか…?」
川崎ゆきお先生が立風書房のレモンコミックスに一冊のみ残した、カルトな怪奇マンガです。(注1)
一応、ジャンルは「怪奇マンガ」に分類されるのでありましょうが、読めば読むほど、違和感倍増。摩訶不思議なマンガであります。
(ちなみに、萩原朔太郎「猫町」(注2)っぽいのでは?と思って読むと、のけぞること必至なのでご注意を。)
このマンガの魅力を皆様にお伝えしたいの思うものの、私の貧弱な感受性では荷が重すぎます。
ですが、どうにかこうにか言葉で表現すると、肝は「思春期の少女の不安定な心情」を「緊張感が妙に希薄な、味のあり過ぎるバッド・トリップ」描写によって表現しようとしたところでありましょうか。(注3)
それが適切かどうかは置いておいて、あまりに悪夢的な「夢の世界」の描写は、有無を言わさず、脳裏に刻まれます。
と言うか、私には「そういうマンガ」なのでありまして、もっと深い話ができずに、すんません…。
・注1
ちょっぴり入手困難な本であります。
復刻本もありますが、これまた、簡単には入手できません。
何故、川崎ゆきお先生が、斯様なマンガを子供向けの怪奇マンガに描かれたのか、いまだに謎です。
・注2
萩原朔太郎「猫町」に影響を与えたとされる、アルジャナン・ブラックウッド「いにしえの魔術」(「ブラックウッド傑作選」(創元推理文庫)収録)はズバリ名作です。
ただし、ブラックウッドの文章は今現在から見ると、ぶっちゃけ「冗漫」ですので、個人的にはすぐに眠たくなってしまいます。
・注3
この南野もも子というヒロイン、授業中、江戸川乱歩「孤島の鬼」を隠れて読んで、廊下に立たされております。
読んでる本が渋〜。
2016年9月16日 ページ作成・執筆