やすだたく「呪いの悪魔像」(1980年10月15日第一刷発行)

「桜女子高等学校に通う木沼絵美子。
 彼女のボーイフレンドは青木真悟という彫刻家の青年で、個展を目指して制作に励んでいた。
 ある雨の日、彼は絵美子の家を訪れ、布に包んだ彫刻を預かってくれるよう頼む。
 その際、彼はこの像を大切に扱い、もしも、壊したり、なくしたりしたら、恐ろしい事が起こるかもしれないと警告する。
 それから、十日後、友人の春野恵子が絵美子の部屋にやって来る。
 恵子はその像を「悪魔の像」みたいと言い、絵美子がいない間、鉛筆でつくった十字架を像に突き付け、悪魔祓いの呪文を唱える。
 その時は恵子の背中に毛虫がついていたぐらいであったが、彼女は帰宅後、ポルターガイスト現象に襲われ、精神に異常をきたす。
 更に、絵美子の部屋からは預かった像が消える。
 絵美子は恵子のことを理科の田沼先生に相談する。
 田沼は超心理学に造詣が深く、彼女の話に興味を持つ。
 早速、青木真悟の部屋を訪ねるが、彼は、絵美子に像を預けた日以来ずっと留守にしていた。
 その晩、絵美子が恵子の家を訪ねると、恵子は精神病院に入れられていた。
 そこは家族の面会を認めず、田沼と絵美子はムリヤリ恵子を病院から連れ出す。
 しかし、恵子の姿は変わり果て、悪魔に憑かれたようであった。
 悪魔の像について調べるうち、それがフランス中西部のミラン聖堂の悪魔像であることがわかる。
 二人はその像の行方を追うのだが…」

 レモン・コミックスの「恐怖シリーズ」にはトラウマ・ホラーの名品が幾つもありますが、これは隠れた逸品です。
 大本は「エクソシスト」なのでしょうが、飛び降り自殺をした死体の描写、病院で大勢の看護婦が襲いかかってくる描写、感電死した死体の描写等、ストーリーの合間にきっちりショック・シーンを捻じ込んでいて、ラストは何とサイキック・バトル(メチャクチャ地味ですが…)です!!
 「著者あとがき」で「ごっつ恐かったって……。ガーハハハ、それそれ、それですよボクの聞きたかったコトバ。」と書いており、ガキンチョをひたすら怖がらせることのみを念頭に描かれた模様です。
 こういうなりふり構わない怪奇マンガって昨今ではほとんど見かけなくなったので、あらためて読むと、とても新鮮でした。

2022年8月19日 ページ作成・執筆

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