森由岐子「今夜も人形がすすり泣く」(1987年4月15日第1刷発行)

「M市にある、人形寺として知られる妙真寺。
 火事で焼失し、再建された際、新しく住職となったのが海羽道雪であった。
 海羽道雪は金儲け主義の職業坊主で、金にならない人形供養は一切引き受けない。
 ある雨の夜、びしょ濡れの女性が道雪の家を訪れ、西洋人形の供養を乞う。
 この人形は、行方不明になった娘の持ち物で、恐らくは死んでしまったであろう娘の霊が成仏できずにのり移っていると話す。
 女性の迫力と遠くのK市から来たことから、道雪はしぶしぶ引き受けるが、供養なんかさらさらする気はない。
 人形を長女の珠子にあげてしまい、更に、珠子はその人形を、新しくやって来た、イケメンの家庭教師、神恭介にプレゼントする。
 しかし、人形はいつの間にか、次女の弥夜のもとに戻ってくる。
 人形の怪異はこれだけにとどまらず、また、雨の夜には、あの女性が現れ、執拗に供養を要求する。
 弥夜は、K市の幼女行方不明事件に鍵があると考え、神恭介に調査に協力してくれるよう頼む。
 この様子をかげで見た珠子は、二人ができていると勘違いし、嫉妬に狂うあまり、人形を庭の焚火に投げ込れる。
 このせいで、人形は顔半分が焼け焦げた、不気味な外見となるが、翌朝、珠子の顔も人形と同じように爛れてしまう。
 弥夜は、人形の呪いを解くために、K市に調査に赴くのだが…」

 「人形もの」の隠れた佳作だと思います。
 とにもかくにも、顔の焼け焦げた人形の描写が凶悪過ぎます。(俺のトラウマが蘇える…oh,no〜)
 表紙とのギャップに、ビビりまくったガキんちょは多かったのではないでしょうか?
 また、「魔神の巫女」と同じく、金儲け主義の宗教家を描いているのも面白いです。
 最初は幽霊なんて信じてなかったのに、人形の怪異が続くと、必死に念仏を唱えて供養しようとする生臭坊主の姿はなかなか滑稽かつリアルです。(当然、祈りはちっとも通じません。)

・備考
 貸本。カバー貼り付け。後ろの見開きに貸出票貼り付け。

2018年12月26日 ページ作成・執筆

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