浜慎二「吸血少女カレン」
(1975年9月10日第1刷・1978年12月15日第10刷・1983年7月15日第19刷発行)

「ルーマニアのある地方。
 幸せな一家があった。善良な父母と息子のキニフ、そして、13歳のカレン。
 父と兄が旅行に旅立った夜、どしゃ降りの雨の中を一夜の宿を請う初老の男性が家を訪れる。
 快く一夜の宿を提供する母親だが、この男性は永い眠りから覚めたばかりの吸血鬼であった。
 その夜のうちに母親が吸血鬼の毒牙にかかる。
 吸血鬼は日が明ける前から立ち去り、母親はひどくやつれてしまう。
 母親は昼間はカーテンを閉ざして家に閉じこもり、家畜小屋では動物達が無残な死骸となる。
 そして、明るく優しい少女であるカレンも…」

 吸血鬼を扱った怪奇マンガでは、かなりの出来でありましょう。
 ベースは「吸血鬼ドラキュラ」なのでしょうが、ほとんどオリジナルであります。ドラキュラは一応出てきますが、影は薄いです。(まあ、太陽光線で灰になるぐらいですから。)また、吸血鬼となった後も、人間らしさを残しているあたりの描写が意外に斬新です。
 難を言えば、ストーリーが弱いのですが、そこは雰囲気で充分カバーできていると思います。洋画が大好きな浜慎二先生だけに細かいところまできっちり描写しておりまして、当時のひばり書房の「黒枠」マンガと比較したら、差は歴然としております。
 ちなみに、立風書房の「恐怖コミック」よりも「黒枠」マンガの方がraw かつ brutalだという印象がありますが、このマンガは動物の派手な惨殺描写から嬰児(えいじ)殺しまでやっちゃってます。
 今から考えると、ちょっとやばいんじゃないか…。

平成27年2月23日 ページ作成・執筆

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