森由岐子「鬼女の泣く夜」(1989年7月15日第1刷発行)
「クラブのホステス、坂口渚(23歳)は父なし児を孕んだため、「亡幽羅(もゆら)」という占い師を訪ねる。
亡幽羅は、母子は「一生つつましく生きる」ことで幸せになれると占うが、渚は占いの結果に反発する。
後日、冬のある日、渚は女児を出産するが、同じ産院で、有名な宝石店の二代目、工藤友之の妻、道子も女児を出産していた。
工藤友之はホステス達の憧れの的であり、渚は彼に想いを寄せていた。
占いに対する反発と自分の子供に対する憐れみから、渚は自分の子供と工藤家の女児を取り換える。
そして、工藤家の子供は適当な家の前に捨てたのであった。
数年後、渚は、工藤家が家政婦を募集している新聞広告を目にして、手を尽くして、住み込み家政婦としてもぐりこむ。
元気に成長した我が娘、みゆきを目の前にしながらも、娘と呼ぶこともできず、渚は幸せいっぱいな道子に対して嫉妬の炎を燃やす。
そこで、まずは道子が病弱なのをいいことに、友之を誘惑、肉体関係を結ぶ。
そして、道子は、薬を隠した上で、精神的ショックを与え、心臓発作で亡きものとする。
道子の死後、渚は友之の妻の座に収まるが、意に反して、みゆきは渚に決して懐こうとしない。
みゆきは、母の死に渚が絡んでいると確信しており、父親を寝取った渚を憎悪していた。
みゆきの素行が荒れ始めたため、友之は、大学生の家庭教師、仁科冬磨を雇う。
みゆきは冬磨に一目惚れし、誕生パーティの際に、彼を招待する。
だが、パーティに同行した、冬磨の妹、純子は、渚の顔を目にすると、悲鳴を上げる。
彼女には渚の顔が鬼に見えるのであった。
みゆきは、渚の化けの皮を剥がすために、冬磨が家庭教師に来る時には、純子も一緒に来るようお願いする。
一方、渚は純子が工藤家の本当の娘であることを知り、純子の殺害を目論む。
そして、みゆきが、自らの忌まわしき出生の事実を知った時…」
浜慎二先生の「恐怖!深夜の校内放送」と共に、レモンコミックスの末尾を飾った作品だと思います。
レモンコミックスの末尾を飾るのにふさわしく、この作品はなかなかの力作です。
とは言え、陰湿で悲惨なストーリーは、読んで素直に楽しめるものとはいいがたいです。
加えて、人は運命には逆らえないというスタンスも引っかかりました。
個人的には、人の運命の大筋はあらかじめ決まっているとは思うものの、「泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生」なのであれば、笑うことまではできなくとも、もっと前向きに生きたいものです。(まあ、本作のヒロインは、方向はともあれ、前向きではありますが…。)
2019年1月22日 ページ作成・執筆