ムッシュー・田中「赤蛇少女がすむ館」(新装版/1986年8月15日第1刷発行)

「横浜。
 妙霊寺にある赤松家代々の墓から先祖のミイラが発見される。
 驚くべきことに、秀秋と共に埋葬されていた蛇の頭骨の中には、脳髄が新鮮なままで残っていた。
 ミイラの発掘・調査に当たった、考古学者の赤松京一郎博士と助手の荒巻真吾は、蛇の脳髄を自宅の研究室で検査すると、いまだ生命反応があった。
 その夜、蛇の脳髄は容器から這い出し、赤松博士の双子の次女、星視と水絵の部屋へ向かう。
 そこで脳髄は二つに分裂し、整形手術をしたため、二人の顔に巻かれている包帯の中に潜り込む。
 蛇の脳髄が行方不明になって以来、赤松家では奇怪なことが起こる。
 家の庭ではマムシが大量発生し、人間とは思えぬ形相をした女が、赤松博士の長女、しずかを襲う。
 しずかの婚約者である荒巻真吾は、星視と水絵は蛇神憑きと見抜き、発見されたミイラに秘密を解く鍵があると考える。
 だが、遂に本性を現した星視と水絵により両親も蛇人間へと変えられ、しずかは赤蛇族に拉致される。
 そして、ミイラの赤松秀秋について知るため、妙霊寺を訪れている新吾に水絵が襲いかかる。
 戦国武将、赤松秀秋の秘められた、恐ろしい過去とは…?
 新吾は赤蛇族の復活を阻止できるのであろうか…?」

 ジャケットから「ゴーゴン」かと思ったら、由緒正しき「蛇女」でした。
 長く伸びた舌の先はちゃんと割れて、ズルズルと這って移動するシーンも、カエルを貪り食うシーン(かなりグロいです)もあり、基本に則って「蛇女」をしていて、安心です。
 惜しむらくは、ムッシュー・田中先生の描く「○○女」はほとんど顔が同じで、区別がつきにくいのが難点。(注1)
 それでも、ラストには蛇神様(蛇の胴体にゴーゴンの頭/ジャケットのアレ)というモンスターが出てきて、なかなか楽しめます。(個人的には、トップレスな暴れ太鼓も。)
 ラストは、「奇蹟」とか「愛」とか、ちょっぴりクサいです。
 とにもかくにも、「蛇女」を、その当時の感覚風にリメイクした意欲作だと私は思っております。
 ちなみに、冒頭、アシスタントまで引っ張り出して、この作品を執筆中に起こった怪奇現象を描いておりますが、ありゃ、本当に起こったことなのでしょうか?(いつものコケオドシとか…)

・注1
 それに加えて、冒頭の街頭の占い師のエピソードは不必要だった気がします。
 恐らくは、当初は重要な伏線だったはずが、ストーリーが膨らむにつれ、埋もれてしまったのではないかと考えております。
 よくある話ですよね。

・備考
 本体、表紙から外れ。

2017年7月2日 ページ作成・執筆

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