いばら美喜「恐怖の修学旅行」(1985年8月15日第1刷発行)

「修学旅行を目前にした、笹山中学校三年B組の生徒達。
 彼らが期待に胸をふくらましながら、下校していると、橋の下の穴に何かが素早く潜り込むのを目にする。
 生徒達は猪と思い、穴の中に石を投げつけ、終いに、竹やりを投げつける。
 その時、担任の女教師、高山先生が通りがかり、生徒達はようやく帰り始める。
 一足遅れてやって来た、三年B組のめぐみ、ヨーコ、俊彦は橋の下の穴から竹やりが動いているのに気づき、橋の下に降りる。
 彼らが穴を覗き込むと、穴から大柄な黒衣の男が出てくる。
 ボサボサの髪の毛、落ちくぼんだ眼、猛烈な出っ歯、そして、首を左右に貫通している竹やり…。
 めぐみ達が男を心配すると、男は自分の手で竹やりを引っこ抜き、心配しないよう笑いかけ、再び穴の中に引っ込んでしまう。
 そして、迎えた修学旅行。
 生徒達は京都の名所を次々と回るが、めぐみ達の向かう場所場所で、同じ老人がたたずんでいる。
 それは翌日の奈良でも同様で、めぐみは老人のことが気になって仕方がない。
 旅行の最後にクラスごとに写真を撮ることとなるが、三年B組を撮影した瞬間、生徒達の姿が掻き消えてしまう。
 その場に残ったのは、めぐみ、ヨーコ、俊彦、高山先生の四人のみ。
 四人が他の生徒達を探していると、あの老人が四人に話しかけてくる。
 老人は地面に円を描くと、その中に生徒達の姿が見える。
 老人は、自分が魔界へ送り込んだと話し、四人もそこへ落とされてしまう。
 荒涼とした風景が延々と続く中、四人は他の生徒達のところに向かうが、生徒達はどんどん植物と化していた。
 このままでは自分達も危ないと四人は逃げ出すが、ヨーコは泥の化け物に襲われ、行方不明。
 次は、俊彦が巨大なワシにさらわれてしまう。
 めぐみと高山先生は逃げ続けていると、左右に分かれた分岐路に出る。
 そこに先程の老人が現れ、一方は元の世界に戻る道、もう一方は魔界の者の食料となる道と告げる。
 そして、各々、案内人を付き、左の道に現れたのは、金髪の美しい少女。
 一方の右の道は、先日、橋の下で見かけた、あの怪しい男であった。
 めぐみと高山先生は少女を案内人に選ぶのだが…」

 いばら美喜版「地獄巡り」です。
 ということは、すなわち、荒唐無稽極まりない…ということになりますが、ビシバシと畳みかける展開は疾走感があり、やっぱ、面白いと思います。
 見所は、フランケンちっくな大男と金髪美少女の、イマイチ何がどうなっているのかよくわからない対決でありましょうか。(文章では非常に形容が難しいです。)
 難点としては、この作品、(多分、生活のために)描きとばした感があり、若干雑な印象があります。
 ただし、ラスト・ページ(p187)の高山先生のイラストは惚れ惚れとするぐらい、色気があり、いばら美喜先生の実力の片鱗が窺えます。

2017年5月13日 ページ作成・執筆

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