いばら美喜「死神がくる!」(1987年6月15日第1刷発行)
「深森中学校に通う沙織の町では、動物の死体の目玉がなくなるという事件が続発する。
その犯人は、この町にやって来たパンクロッカー(?)風の死神の仕業であった。
その町の鎮守の森の奥には、あばら家に住む、年老いた父娘がいた。
父親は今までムカデを食べて生きながらえてきたが、もうそろそろ寿命が尽きる頃。
ある夜、父娘のもとを死神が訪れる。
死期を悟った父親は、死神に娘を長生きさせるよう要求する。
そして、もしも娘が死ぬようなことがあれば、昔にニューギニアから持ち帰ったペットのムカシトカゲに乗り移って、復讐すると脅迫する。
というのも、このトカゲだけは死神のバリアが通用しないからであった。(詳しい説明は一切なし)
死神も父親の要求に対し、ある交換条件を出す。
死神は、先日、初めて人間の目玉を食べ、その美味しさに歓喜。
そこで、新鮮な目玉を供給する代わりに、娘を若返らすと約束する。
交渉は成立し、老人はトカゲに乗り移って、首だけ老人のトカゲとなる。
娘も十七歳に若返り、老人トカゲは新鮮な目玉を得るため、通りがかりの人間を殺し始めるのだった…」
立風書房のレモンコミックスでの、いばら美喜先生の代表作は「悪魔の招待状」でしょうが、個人的なベストは「死神がくる!」です。
全編にいい塩梅の「投げやりさ」が溢れて、どこをどうやったらこんなストーリーになるのか、いくら頭を捻っても理解不能という、非常にビザールな作品となっております。
なのに、それなりに読ませてしまうのが、いばら美喜先生の「魔法」。
と言うと、聞こえはいいですが、実際のところは、金のために描きとばした故に、下手な「理屈っぽさ」がないためではないかと勘ぐっております。
それにしても、目玉を食べた時の「イーッ おいしい!」という死神の描写や、取って付けた感ありまくりのラスト等、あまりのも軽薄で、凄まじく違和感があります。
実は、若者のウケをひそかに狙っていたとか…。(完全な空振り三振に終わっておりますが。)
2017年5月22日 ページ作成・執筆