浜慎二「白ヘビ少女の呪い」
(1975年3月10日第1刷・1981年7月15日第18刷・1985年7月15日第26刷発行)

「夏休み、バレエの練習のために、管理人の婆やと共に、別荘に向かう少女、鏡子。
 その別荘は田舎の山奥にあった。  その地方は、白蛇にまつわる不気味な伝説があり、白蛇を大切にしていた。
 別荘の周りは蛇だらけで、へビを大の苦手とする鏡子はふさぎ込んでしまう。
 翌日、病院を経営する鏡子の父母とバレエの花沢先生が別荘を訪れる。
 鏡子の様子を見て、花沢は別荘の周りの蛇を退治することにする。
 夜までかかって、花沢は白蛇を皆殺しにするが、翌日、花沢は原因不明の怪我と出血で衰弱。また、鏡子の愛犬も八つ裂きにされてしまう。
 気味悪がった一家は別荘を後にして、花沢は鏡子の父が院長を務める病院に入院する。
 家族が別荘から戻った日の夜、病院の前にひどい傷を負った、身元不明の少女が倒れていた。
 意識不明の少女を病院に運び入れ、治療を施すが、その夜から病院で惨事が相次ぐ…」

 1980年代を席巻した(かもしれない)、立風書房の「恐怖コミック」。
 その土台を支えた一人は、ひばり書房から移籍組の、浜慎二先生だったように思います。(注1)
 ひばり書房では基本的に短編の作品の印象がありますが、立風書房では描きおろしの単行本がメインです。
 描きおろし単行本となると、どれだけショック描写をブチ込めるかという点にのみ重点を置いて、ストーリーは二の次というマンガが多いのですが、浜慎二先生の作品は内容はどれもしっかりしておりますので、安心して読めます。
 とは言うものの、この作品はどうもサービス過剰に走りすぎたようで、後半の病院での殺戮は子供達にはかなり酷だったのでは?
 しかも、関係のない患者が何人も殺された挙句、一家は無事で、ハッピーエンドっていうのは凄いなあ…。
 いばら美喜先生や川島のりかず先生のマンガを読むうちに悲惨な結末に麻痺してしまった私には、新鮮な驚きでありました。

・注1
 貸本マンガの時代から怪奇マンガで活躍していたマンガ家さん達が最後の輝きを見せたのが、この「恐怖コミック」だったと考えています。
 浜慎二先生、好美のぼる先生、いばら美喜先生、鬼城寺健(月宮よしと)先生の作品は、若い新人作家の作品よりも遥かに面白いです。
 それにしても、何故、これらの先生方は、老舗のひばり書房で描かなかったのでしょうか?
 個人的な推測ですが、こちらの方がギャラが良かったからだと思います。
 田舎のどん臭いガキだった私が記憶する限り、本屋に並んでいた怪奇マンガは立風書房の「恐怖コミック」の印象があります。
 田舎の個人経営の小さな本屋にでも「恐怖コミック」はその禍々しい背表紙を本棚の片隅で黒光りさせておりました。
 また、私は、ひばり書房のマンガをその本屋で見かけた記憶がありません。
 この事実だけで断定することはもちろんできないのですが、「恐怖コミック」は、ひばり書房のマンガより流通量は勝っていたのではないか、と思います。
 そして、このマンガが10年で26刷も出していることを考え合わせますが、1980年代中頃まではかなりの売り上げを上げていたように思います。
 まあ、このあたりの詳細は専門的な知識を持つ人達により深く検証されることを待つことにいたしましょう。

平成27年2月22・23日 ページ作成・執筆

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