阪本誠一・画/山梨賢一・原作「ああ戦艦大和」(1977年8月10日発行)

 ストーリーは、戦艦設計を夢見る赤木清治とそのライバルのガキ大将、安藤鬼助の対立を軸に、戦艦大和の建造から最期までを描いたものです。
 戦艦大和や当時の歴史的背景についての専門的な解説の合間に、当時の風俗や、戦争の前にはかなく散る恋物語が、いい塩梅に散りばめられており、読ませます。
 と書くと、何故に戦争マンガを「怪奇マンガ」オンリーなこのサイトで採り上げているの?という疑問を抱く方がいるかもしれません。(まあ、今現在、こんなへっぽこ・サイトを見ている方は日に十人もいないのですが…。)
 私もこのサイトで扱うべきか、ちょっぴり考えました。(注1)
 でも、このマンガのラスト、およそ30ページの酸鼻を極めた描写は紹介する価値があると判断しました。
 子供向けの戦記マンガと高をくくっていたら、メチャクチャエグくて、チビっ子達は腰を抜かしたのではないでしょうか。
 私はミリタリーには全く興味のない人間でして、戦艦大和についての知識は大して持ち合わせていないのでありますが、あの広い甲板が血とバラバラになった人体で染まったという話を耳にしたことがあります。
 この本によると、約3300人の乗組員のうち、269人しか生き残らなかったということですので、その話もあながち誇張ではないでしょう。
 そういった凄惨な状況を(ある程度まで)再現しようとしたのか、片端から登場人物が肉片と化していきます。
 そして、ラスト、両腕を失った瀕死の主人公が、艦内から聞こえる万歳三唱に苦笑するシーンに、何故か涙腺が緩んでいくのです。
 過去、日本人は戦争で言葉通りの「地獄」を体験いたしました。(南方戦、沖縄戦、空襲、原爆、etc)
 今こうして、のほほんと読んでいる「怪奇マンガ」の遙か源流に、このような「地獄」の体験があるのかもしれません。
 そういうことを考えさせられたマンガでありました。

・注1
 個人的に、この世で最も恐ろしいものは「戦争」だと思います。
 「想像力の欠如」があらゆる悲惨の原因だと私は考えているのですが、その際たるものが「戦争」でありましょう。
 いろいろと思うことはあるのですが、書き出すと、キリがありません。
 ついでに、戦争の不毛さを描き尽くした作品だと私見で思う「伝説巨神イデオン」(テレビ版+映画版)をお勧めしておきます。(「ガンダム」よりも好きです。)

・備考
 p4の写真ページとp5のタイトルページの隅に細長く剥げ痕あり。pp37・38、上部に折れ痕あり。

2016年11月10日 ページ作成・執筆

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