大石まどか「亡霊!四谷怪談」(1982年9月15日第1刷発行)

 数多(あまた)とある「四谷怪談」を漫画化したものの一冊です。
 細かい部分で多少の差異はあるものの、基本的なストーリーは同じなので、粗筋は割愛いたします。
 大石まどか先生には、ひばり書房黒枠単行本の「お岩の怪談」と、立風書房のレモンコミックスでのこの作品の二冊、「四谷怪談」を漫画化しております。
 「お岩の怪談」は凄まじく荒んだ雰囲気のマンガでありましたが、こちらは歴史的な背景(注1)も取り入れ、より繊細な出来となっております。
 また、一応は純愛もので、伊右衛門は最後の最後でお岩への愛に目覚めるのですが、今まで散々鬼畜に等しい振る舞いをしておいて、死ぬ前に改心したって遅いんだよ!!…と私は思います。
 というワケで、私は「お岩の怪談」の方が徹底していて、好きなのですが、人によってはこちらを好む方も多いでしょう。
 実際、非常に丁寧に描かれた、美しい作品ですので、一読の価値は十二分にあると思います。
 ちなみに、後書きにて、大石まどか先生が、この作品を描く前に、お岩の墓のある妙行寺(巣鴨)にお参りしたとの記述があります。
 四谷於岩稲荷ではないんですね。(インターネットで調べましたら、この神社のお岩さんは四谷怪談のお岩さんとは別人のようです。)

・注1
 民谷伊右衛門は元・赤穂藩士という設定で、伊右衛門に片思いするのは、吉良上野介の家臣の孫娘となっております。
 「東海道四谷怪談」は「忠臣蔵」と関わりがあるようですが、詳しくは知りません。(鶴屋南北の原作ではどうなっているのでしょうか?)
 余談ですが、私、「忠臣蔵」はあまり好きでありません。
 そりゃあ仇討ちですから手段を選んでいられないでしょうが、「闇討ち」って卑怯だと思ってしまうのです。

2017年5月30日 ページ作成・執筆

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