小池一夫・作/平野仁・画
「少年の町ZF@ ラポック光」(1977年8月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFA 遮断機は降りた」(1977年9月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFB 愛と灰」(1978年1月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFC 魔宴」(1978年6月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFD 酣の樹々」(1978年7月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFE 俘囚アケミ」(1979年1月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFF さよならスラッガー」(1979年4月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFG メモリアルアゲイン」(1979年5月1日初版第1刷発行)
「少年の町ZFH 灰に帰す」(1979年6月1日初版第1刷発行)
・「体験例@ ラポック光」(単行本@)
「ある金曜日の夜、多摩市の上空に『ラポック光』(UFOの編隊)が現れる。
そのうちの一つの光が突如急降下し、高陣山の樹海へ吸い込まれるように消える。
そして、残りの光は母船へと戻っていく。
翌朝、ラポック光を目撃した11人の少年がそれぞれ高陣山へと向かう。
(十一人については以下の通り。
真庭典明(多摩高三年)〜本作の主人公。剣道部。
探題剣司(多摩高三年)〜ちょっぴり不良の入ったバイク少年。空手部。
麓月夫(多摩高二年)〜野球部のスラッガー。体格よし。
村地日出夫(多摩高二年)〜アマチュア無線大好き少年。拳銃にも詳しい。
向井洋介(多摩高二年)〜村地日出夫の無線友達。
横手正臣(多摩中二年)〜科学や天体のエキスパート。メカマニアでもある。
三村信〜眼鏡で天然パーマ。動物や植物のエキスパート。
海出一郎〜アンコ型の少年。
海出二郎〜一郎の弟。
一色大〜海出兄弟の友人。
乾太郎(小学三年生)〜最年少。お調子者。)
真庭典明は飼い犬のコザック号と共に一人で山を登っていたが、途中、六人の少年たちと出会う。
彼らは雨に降られ、また、奇妙な笑い声におびえ、その場に固まっていた。
真庭が先に進むと、様子を見に行った探題、麓、横手が走って来る。
彼らは笑い声の出所を探ろうとしていたが、どうしても見つけられない。
すると、はぐれた向井洋介の叫び声が聞こえ…」
・「体験例A 囁き子」(単行本@)
「森の開けた場所で彼らは見知らぬ娘と会う。
彼女の足元には向井洋介が横たわっていた。
彼女から手渡された人形を介し、少年たちは彼女とテレパシーで会話する。
彼女の名は『囁き子』、そして、「悪魔(デモノ)の巫妖(ウィッチ)」であった。
探題剣司は彼女を捕まえようと意見するが、真庭はまずは向井洋介の状態を確認するべきと話す。
真庭と横手が彼に近づき、真庭が彼の胸に耳を当てると、彼は死んでおり…」
・「体験例B 兇兆(イルオーメン)」(単行本@)
「真庭はUFOについて聞き出すために、囁き子と信頼関係を築くことを主張する。
彼女から話を聞き出したところによると、彼女は人間(必要体)の存在を確認するために「墓船」から地上に降りて来たという。
そして、「墓船」には彼女の仲間の「悪魔」がおり、「悪魔」たちは「陽が落ち月が昇るまでは眠る」が、彼女はその逆であった。
少年たちはその場にキャンプを張り、彼女からもっと話を聞き出そうとする。
囁き子は半分眠りに落ちながら、少年たちに絶望的な事実を告げる。
彼女は「墓船」に「地球上には必要体が何千万匹もいること」を報告しており、月の出とともに兇兆が起きるというのだが…」
・「体験例C 墓船」(単行本@)
「夜、UFOが現れ、囁き子を取り戻そうとするが、少年たちはこれを阻止する。
その際、彼らはUFOの搭乗員を目の当たりにし、事態の重大さを思い知る。
真庭は一晩、ここで野営をして、翌朝、山を下りることを提案し、探題と揉める一幕があったものの、皆、それを了承する。
夜更け、コザック号の吠え声で皆は目を覚ます。
そこには死んだはずの向井が立っていた…」
・「体験例D 必要体」(単行本@)
「少年たちは再度、偵察機による囁き子の奪回を阻止する。
その際、彼らは搭乗員の一人を地上に転落させるが、そいつはサイボーグであった。
どうやら地球外生命体である「悪魔」たちは墓船からサイボーグを操っているらしい。
向井もまた「悪魔」に操られていたと真庭は話すが、三村信は異論を唱える。
囁き子の言葉や向井の行動から見て、向井は「吸血鬼」ではないかと三村は推測する。
探題はそれを鼻で笑い、ザイルでぐるぐる巻きにされた向井の死体にペンダントの十字架を置くのだが…」
・「体験例E 慟哭への前兆」(単行本@)
「甦った向井は「いふォォ〜む」という声を発しながら、少年たちに迫る。
無線仲間の村地日出夫は彼に話しかけるが、全く通じない。
探題は胸をナイフで抉るも全く動じず、真庭や麓月夫がとびかかってもはねのける。
この危機を救ったのが乾太郎が投げたビー玉であった…」
・「体験例F 飢血体(サバト)」(単行本@)
「翌朝、少年たちと囁き子は宇宙人と向井の死体を運びながら山を下りる。
山の麓で少年たちは自転車で町へ向かうが、どこにも人の気配がない。
囁き子は「兇兆により必要体は飢血体(サバト)に」なり、今、眠っていると教える。
一方、探題剣司は一足先にバイクで町に着いていた。
彼は警察に行く前に、恋人の遠山百合子の家を訪ねるのだが…」
・「体験例G 迷錯の河(ミステリーゾ・リバ)」(単行本A)
「遠山百合子の身体に起きた異変…それは向井洋介の身に起こったものと同じであった。
探題剣司は遠山家をとび出し、自分のマンションの部屋に向かうが、誰もいない。
次に向かった警察署も多摩駅も全くの無人であった。
静寂の中、彼は取り乱し…」
・「体験例H 背後の月」(単行本A)
「真庭の率いる少年たちも町へ到着する。
町には人の姿は彼ら以外になく、とりあえず、彼らは警察へ行く。
警察署には誰もおらず、電話は通じず、テレビもラジオも放送を流していない。
真庭は拳銃を身に付け、護送車に乗って、少年たちの家をそれぞれ回るのだが…」
・「体験例I 夜が狂った」(単行本A)
「事前に決めておいた待ち合わせ場所の多摩高校で真庭たちは探題と合流する。
真庭たちは護送車に集まり、木陰に車を隠し、外の様子を窺う。
月が出ると、家やビルの窓ガラスに明かりが灯り、人が次々と外に出てくる。
多摩高校では生徒や先生が登校し、授業が平常通りに行われる。
真庭・探題・麓が隠れて観察しても、皆、いつもと変りなかった。
ただ一人、三村信だけが彼らに違和感を抱く。
探題は男友達と接触を図るのだが…」
・「体験例J 遮断機は降りた」(単行本A)
「一見普通に見えた人々は皆、吸血鬼となっていた。
阿鼻叫喚の巷となった高校を少年たちは護送車で脱出する。
町はいつもと変りない様子だが、彼らの姿を見ると、皆、襲いかかってくる。
安全な場所へと行きたいが、普通の人間と吸血鬼の見分けがつかず、真庭は混乱する。
その時、乾太郎は母親の姿を見かけ、護送車ととび出してしまう。
どうにか乾太郎は救い出すものの、護送車は奴らに囲まれ…」
・「体験例K 處女(クレド)」(単行本A)
「少年たちは河原で朝を迎える。
少年たちが寝ている隙に、囁き子は草むらに行き、小用を足す。
真庭は彼女の後を追い、自分たちと一緒にいてくれるよう頼むが、彼女は自分は「悪魔の巫妖」だからと拒否。
すると、真庭は彼女を強姦し、少年たちに自分は彼女と結婚したと宣言。
そして、彼は自分がリーダーとなり、安全な「少年の町」を作ることを決意する…」
・「体験例L 結鎖の教会」(単行本A)
「太陽の昇っている間に、少年たちは町にこれからの生活に必要なものを取りに行く。
トラックに必需品を積み込むが、そて、その後、どこに向かったら良いのかがわからない。
真庭は囁き子に相談するも、彼女は彼の妻ではないと突っぱねる。
そこで真庭は教会に行き、地球式の結婚式を行うのだが…」
・「体験例M 夜を撃て」(単行本A)
「吸血鬼たちに対して安全な場所…それは教会であった。
少年たちは籠城するために窓やドアにバリケードを張り、武器を用意する。
その後、少年たちは夜に備えて休むが、真庭は囁き子の部屋を訪れる。
彼女は部屋に監禁され、真庭に憎しみを抱いていた。
それでも、生き延びるには彼女が必要なため、彼は…」
・「体験例N 流涕(ナンダ)の囮」(単行本B)
「教会での最初の夜。
少年たちは息を潜めて外を窺うが、異様に静かであった。
すると、一人の娘が教会の方に走って来る。
彼女は探題剣司の恋人、遠山百合子であった。
百合子は助けを求め、探題は二階の窓ガラスを蹴破り、彼女のもとに駆け寄る。
彼は彼女を教会の中に入れてくれるよう頼むのだが…」
・「体験例O 愛(アモ)と灰(アッシュ)」(単行本B)
「遠山百合子を操っているのは異星人の「灰(アッシュ)」であった。
灰は探題を人質に取り、囁き子を渡すよう要求する。
囁き子は彼らにとって生命線のため、真庭は灰を罠にかけ、探題を取り戻す。
しかし、真庭は遠山百合子の毒牙にかかり…」
・「体験例P 嫉妬(レプシ)」(単行本B)
「真庭は木に自分の身体を鎖でつなぎ、他の者を襲わないようにする。
徐々に吸血鬼の本能に侵され、彼は遠山百合子と互いに血を吸い合う。
そのうちに、二人とも意識を取り戻していくが、突如、欲情し、セックスを始める。
これは嫉妬によって少年たちの団結を壊そうとする「灰」の企みであった…」
・「体験例Q 悚懼(おそれ)の朝」(単行本B)
「囁き子の裏切りにより真庭は助かる。
しかし、遠山百合子は「灰」の魔血によってしばらく延命しただけで、直射日光を浴びた者は囁き子でも助けることができなかった。
探題は囁き子に彼女を助けるよう懇願するのだが…」
・「体験例R 尖石原野(とんがりいしのハラッパ)」(単行本B)
「遠山百合子の遺した「Z」の文字。
真庭は自分たちが人類にとって最後との意味を込め「ゼットフラッグ(ZF)」を教会の尖塔に掲げる。
少年たちにとって一番の急務は「灰」の脅威が届かず、夜、ゆっくり休める場所を手に入れること。
囁き子が設計図を描くが、それはストーンヘンジ・サークルで、場所についても非常に条件が厳しい。
真庭は建築士を目指していた探題に助力を求めるも、彼は恋人の死ですっかり無気力になっていた。
その夜、「灰」が現れ、ある交換条件を出してくるのだが…」
・「体験例S 目指せ!!尖石原野」(単行本B)
「「灰」の言葉から尖石原野こそがストーンヘンジを作る最適な場所だと判明する。
囁き子の作った朝食をとった後、彼らは尖石原野について彼女に尋ねる。
だが、尖石原野は地下にあるらしく…」
・「体験例21 ダイジング・ロッド」(単行本B)
「尖石原野を突き止めるため、囁き子は「ダイジング・ロッド」を提案する。
彼女の指示で材料を集め、とりあえず完成はするも、本来の材料を使っていないため、働きが弱い。
それを補うためには、少年たちの思念を集中させることが必要であった。
囁き子の指導の下、少年たちは「思念凝縮超常能力の訓練」を受ける…」
・「体験例22 黄昏の戦士」(単行本C)
「先頭に囁き子、その後にサポート役の真庭・探題・麓・三浦が続き、ダイジング・ロッドに導かれ進む。
ロッドが回転し、彼らは尖石原野に到着するが、そこは月光寺の墓地であった。
その時、彼らは日暮れがもうすぐだと気づく。
教会に戻る時間はなく、ストーンヘンジ・サークルを作るしか助かる方法はない…」
・「体験例23 殺シアムの中で」(単行本C)
「皆で協力し、ストーンヘンジ・サークルを作り上げるも、「灰」はその中に三人の女子プロレスラーを事前に潜ませていた。
三人の女子プロレスラーは手ごわく、少年たちが全員でかかってもかなわない。
真庭はストーンヘンジの外に出るも、今度は吸血鬼たちの群れがじわじわと迫って来る。
その時、囁き子は女子プロレスラーたちの本能がある音に反応していることに気付く。
その音が突破口になのだが…」
・「体験例24 ちびり月曜日」(単行本C)
「乾太郎は怖がりで、何かあるとすぐにちびってしまう。
それでも、パンツを履き替えずに、パンツは黄ばんで凄く臭い。
そのためについたあだ名は「ちびりマン」。
5月23日、この日は彼の誕生日であったが、彼は皆に隠れてパンツを洗う。
その理由とは…?」
・「体験例25 魔宴(フーガ)」(単行本C)
「ストーンヘンジ・サークルの中に小屋を建て、少年たちはようやく憩いの場を得る。
しかし、「灰」は追及の手を弱めない。
ある夜、「灰」の手下が現れると、彼に操られるように祭りの恰好をした男女が大勢押し寄せ、神輿を担ぐ者、太鼓を叩く者、笛を吹く者で、あたりは凄まじい喧騒に包まれる。
これは「魔宴」の始まりであった…」
・「体験例26 魔宴果つるまで」(単行本C)
「囁き子は自分の血を浸した布を少年たちに渡し、それで目隠しするよう命令する。
彼らは「魔宴」に対峙しつつも、決してそれを見てはならない。
「魔宴」とは一体何なのだろうか…?」
・「体験例27 戦いへの序幕」(単行本C)
「夜空にきらめく、幾つもの打ち上げ花火。
真庭は「灰」の罠と知りつつも、目隠しを外して、花火を見上げ、人間として生き延びるために「灰」たちを戦う覚悟を決める。
そして、打ち上げ花火が終わった後、「魔宴」の仕上げが始まる…」
・「体験例28 仲間よ」(単行本C)
「魔宴の後、ストーンヘンジ・サークルの周囲には多くの吸血鬼の死体が転がっていた。
彼らはそれを埋葬していくも、「魔宴」の衝撃のため、不眠と食欲不振に苛まされる。
そこで真庭は皆にショック療法を施すことにする…」
・「体験例28 仲間よ(続き)」(単行本D)
「真庭は「魔宴」以上のショックを皆に与えれば、事態は好転するかと思っていたが、逆効果となる。
寝床で彼がこれから先について思い悩んでいると、外からコザック号の吠える声が聞こえる。
真庭と囁き子が外に出てみると、そこには「仲間」が…」
・「体験例29 犬戦艦(ドギイ・バトルシップ)」(単行本D)
「横手正臣は「犬戦艦」の夢を見る。
それは車輪の付いた帆船を犬に引かしたもので、ニンニクの大砲を吸血鬼や「灰」たちにお見舞いする。
しかし、犬戦艦は墓船に空中へと引き寄せられ、かなりの高さから落とされてしまい、そこで彼は目を覚ましたのであった。
少年たちがその話で盛り上がっている時、ストーンヘンジ・サークルの上空に墓船がやって来る。
少年たちが外に出ると、横手正臣の夢が再現されようとしていた…」
・「体験例30 茸(フッコ)の黙示録」(単行本D)
「夏。
作業の後、少年たちは昼寝をする。
その間、真庭・探題・麓の三人は寺のお堂に集まり、囁き子から衝撃的な事実を聞かされる。
人間にとり憑き、吸血鬼化させる「スペース・ホーパー(宇宙の漂泊者)」の正体。
そして、「灰」や囁き子が何者であるかを…。
囁き子は人間なのであろうか…?」
・「体験例31 慣性(モメント)の町」(単行本D)
「昼間の町。
真庭たちは自動車の整備場で消防車の改造をする。
彼らは車の設備を片っ端から取り外していた。
一方、囁き子はミリタリー専門店で少年たちの制服作りに励む。
真庭たちによる車の改造が終わった頃、探題が現れるが、彼が連れているのは…」
・「体験例32 酣(たけなわ)の樹々」(単行本D)
「バトルシップ(という名の馬車)が完成し、少年たちは訓練に励む。
七日目の夜、少年たちの家の前に裸の女が現れる。
彼女は囁き子の母、流花(トリニダート)で、少年たちに「酣の樹々の垣根」のことを告げる。
この「酣の樹々」というのは「切れず折れず燃えず抜けずどんなものよりも堅く空よりも高く」「その中に閉じ込められてしまったら絶対に出ることはできない」のであった。
ヒューマノイドたちがストーンヘンジ・サークルの周囲に穴を掘り、流花がそこに種を蒔き始める…」
・「体験例33 酣の樹々は危機」(単行本D)
「少年たちはストーンヘンジ・サークルの外に出て、バトルシップでヒューマノイドたちに戦いを挑む。
あらかた片づけた後、流花に突撃するが、バトルシップはUFOから発する光によって空中に持ちあげられる。
だが、彼らには「灰」たちに対抗する秘策があった。
少年たちと流花との戦いの結果は…?」
・「体験例34 姉さん」(単行本D)
「長雨により少年たちは家に閉じ込められたまま。
更に、蒸し暑さが彼らを襲う。
これもまた「灰」によるものであった。
だが、囁き子は先手を打っており…」
・「体験例35 Mn(マンガン)疼傷」(単行本D)
「夜。
探題剣司はめくるめく性的な妄想に苛まされる。
寝付かれぬ彼は台所に行き、盥の水に自分の顔を映すと、水面に流花の顔が現れる。
流花に指示され、彼はストーンヘンジ・サークルの外へと向かう。
この原因は以前、流花と取っ組み合った時につけた左頬のひっかき傷のようなのだが…」
・「体験例35 Mn(マンガン)疼傷」(単行本E)
「(単行本Dからの続き)
探題剣司の行く先には裸の流花が待ち構えていた。
抱き合う二人を少年たちが物陰から窺う。
流花が本性を現した時…」
・「体験例36 狼は狼を食わない」(単行本E)
「探題剣司は町に出た際に、陸上自衛隊の基地に立ち寄る。
彼の目的は銃火器を手に入れることであった。
銃火器を手に入れ、試し撃ちも済まし、意気揚々と「少年の町」に帰るも、真庭は探題が勝手なことをしたことに激怒し、彼に鉄拳制裁をする。
これをきっかけに真庭と探題の対立が再燃。
少年たちは武器を手に入れ、吸血鬼たちを戦うことを望むも、真庭は自分たちが武器を使うことにより吸血鬼たちも武器を使うようになることを恐れる。
その夜、真庭の心配が現実となり、ストーンヘンジ・サークルは銃を手にした吸血鬼たちに囲まれる。
この危機を乗り越えるため、真庭は自分の命を賭けて…」
・「体験例37 すなどけい」(単行本E)
「真庭と囁き子は無人の多摩市役所を訪れ、婚姻届けを提出する。
その後、喫茶店でコーヒーを飲んでいると、囁き子が砂時計に興味を示す。
囁き子は時間を測っても、過ぎた時間は戻ってこないと指摘するのだが…」
・「体験例38 俘囚アケミ」(単行本E)
「吸血鬼化した人間が夜型になったことで、人間のライフスタイルに大きな変化が起こりつつあった。
この変化が人類にどのような影響を及ぼすのかを危惧し、真庭は吸血鬼化した人間を一人さらい、調査しようとする。
そんな時、彼らが偶然に見つけたのが、地下鉄の駅で酔い潰れて寝ていたピンクサロンのホステス、あけみであった。
少年たちは彼女を「少年の町」に連れ帰り、隔離された小屋の地下室に監禁する。
まずは、彼女から血を採取し、その血から人間を吸血鬼化したバクテリアを発見する。
これは空気感染するようなものでなく、どうやって人類全体に感染させたのかが問題となるのだが…。
一方、この案にただ一人反対していた探題は彼女に引っかかるものを感じる。
彼はこれが「灰」の罠ではないかと考えるのだが…」
・「体験例39 さよならスラッガー」(単行本F)
「アケミとの戦いの翌日、少年たちは多摩市立病院に行き、全員血液検査を受ける。
真庭は全員、正常と言うものの、それは嘘で、真実を知るのは真庭、探題、囁き子の三人だけであった。
病院からの帰り道、探題はスポーツ用品店で野球の道具を集め、皆で野球をすることを提案する。
また一から出直すために、はずみが必要と説明するのだが…」
・「体験例40 死番打者」(単行本F)
「麓月夫が監督となり、まずは練習で身体を慣らし、昼食の後、彼らは五人対五人の三角野球で試合を行う。
久しぶりに野球をして、麓の脳裏には夏の甲子園の思い出が駆け巡る。
試合は白熱しながら進んで行くのだが…」
・「体験例41 あきら芽を育てるな」(単行本F)
「仲間を一人失ったことにより、少年たちの心の糸が少しずつ切れていく。
彼らは自堕落かつ無気力になり、真庭の命令に従わなくなる。
「灰」はそれに目を付け、少年たちをストーンヘンジ・サークルの外へおびき出そうとする。
真庭は竹刀で少年たちを殴打し、それを阻止しようとするが…。
「あきら芽」を摘むことはできるのだろうか…?」
・「体験例42 追跡標識(トレーサー)」(単行本F)
「あることをきっかけに少年たちは再び団結し、「灰」に戦いを挑む。
まず、彼らは多摩大学原子科学研究所へ行き、横手正臣の指示により、放射性物質を手に入れ、追跡弾を作る。
その帰り道、彼らは町のあちこちに火をつけ、大火災を起こす。
日が暮れた後、焼け焦げた吸血鬼たちの群れと「灰」の一味がやって来る。
「灰」は少年たちの蛮行に怒り狂っていた。
その時、少年たちは「灰」たちに突撃し、追跡弾を投げかける…」
・「体験例43 特杭隊」(単行本F)
「翌朝、少年たちは背中に木の杭を背負い、ガイガーミュラーカウンターを装備して出発する。
目的は「灰」たちの寝場所を捜し出し、その心臓に杭を叩きこむことであった。
最年少の乾太郎をトランシーバーの中継役として原っぱに残し、「真庭・探題・海出兄弟」と「横手正臣・三村信・村地日出夫・一色大」の二つのグループに分かれ、放射線を追う。
タイムリミットは日暮れまで…」
・「体験例43 特杭隊」(単行本G)
「(単行本Fの続き)
古墳・遊園地・食肉工場で「灰」の仲間たちは見つけるも、肝心の「灰」が見つからない。
横手たちは東京現像所にたどり着くも、中は広くて、どうしたものか迷う。
報告を受けた真庭は横手たちと合流し、封鎖された暗室に突入するが…。
日暮れまであとわずか…」
・「体験例44 宇宙葬(ダフメ)」(単行本G)
「その夜、少年たちの頭上に「墓船」が姿を現わし、サイレンス・タワーを積み上げる。
タワーの頂上には「灰」の仲間たちの死体が置かれ、金色のロボットの蝙蝠が死体をついばむ。
これは「宇宙葬」であり、本来は異教徒たちに見せるものではなかった。
タワーの前に「灰」のホログラムが映し出され、彼は少年たちの卑劣な行いを非難する。
探題が卑怯なのは「灰」たちも一緒と言い返すと、「灰」は「一対一」の「正々堂々たる勝負」で決着をつけるよう提案する…」
・「体験例45 人間一刀流」(単行本G)
「「灰」が差し向けてきたのは「アングラ・マキュイ(ゾロアスター教の悪神)」の女司祭であり女戦士でもある眩火(くらか)で、対するのは真庭典明であった。
剣道四段の彼は杭を手に眩火に戦いを挑むも、眩火は恐ろしく強く、彼はじりじりと押される。
ストーンヘンジ・サークルの中で戦いを見つめる少年たちは…」
・「体験例46 メモリアルアゲイン」(単行本G)
「勝負に勝ち、「灰」は約束を実行する。
それは「5千万平方メートルの沃野に少年の町を築き、そこで暮らすことを許す」ことで、ここから出ないことを条件に決して侵されることはない。
そのために少年の町から三キロほどにある境界に「酣の樹々」が植えられるが、それはすなわち、この境界から外には出られないということであった。
その晩、探題は真庭と囁き子以外を酔っ払わせ、少年たちから本音を聞き出す。
やはり皆、町に行きたいと思っていることを確認し、会合を開く。
真庭は「酣の樹々」が完全に成長するまでに、町へ行き、気球を取って来ることに関して、皆の意見を聞く。
熱気球なら「酣の樹々」を越えることができるが、これを町に取りに行くには少年たち全員で行く必要がある。
そして、この計画は成功するかどうか非常に厳しく、もしも、少年の町に戻ることができなかったら、それは死を意味していた。
それでも、少年たちは全員、町に行く決意を示し、翌日、「酣の樹々」を越え、町に向かう。
少年たちを乗せた気球は無事、少年の町にたどり着けるのであろうか…?」
・「体験例47 はじめての夜にキミは…」(単行本H)
「少年の町は酣の樹々に囲まれ、少年たちにとって最初の安らぎの夜が訪れる。
探題は少年たちからこの初めての夜に何をしたいのか意見を集める。
少年たちの、そして、囁き子の願いとは…?」
・「体験例48 歯を食いしばるとき」(単行本H)
「「灰」の脅威が去り、少年の町を囲むストーンヘンジ・サークルも不要となる。
それを撤去する前に、その周囲で運動会をすることが決まる。
運動会ではスタートの時、合図の銃声が必要で、村地日出夫は本物の拳銃を改造することを提案。
彼は銃身を改造し、試し撃ちをしようとするのだが…」
・「体験例49 血涙のCQ」(単行本H)
「少年たちはこれから自給自足で全てを賄わなくてはならなくなる。
無線機ももはや不要であり、村地日出夫はバッテリーの続く間、無線機で発信し続けるよう真庭から命令を受ける。
ダメもとで発信すると、応答があり、少年たちは無線機の前へと集まる。
応答したのはキムラ・ヨシコという女性であった。
彼女は血化研に勤める科学者で、生き残りは彼女一人。
血化研では人工血液の開発に取り込んでおり、それを使えば、吸血鬼化した人間を普通に戻せるようなのだが…」
・「体験例50 血涙のQRZ」(単行本H)
「人工血液は完成しかけていたものの、それにはまだ欠点があり、彼女の命はあと30時間しかなかった。
彼女は少年たちに助けを求め、彼らは彼女のところに行く決意する。
彼らは24時間以内に血化研のある東京都南区白銀に行かねばならない…」
・「体験例51 絶望からのUターン」(単行本H)
「酣の樹々は30メーターもあり、同じ程度に根も張っていた。
横手正臣はいくら計算しても、熱気球で樹々を越える程の燃料はここにはない。
彼が頭を抱えていると、乾太郎が「でっかいパチンコ」でロープを飛ばしてはどうかと意見を述べる。
ここに突破口があった…」
・「体験例52 帰れないかもしれない」(単行本H)
「明朝、真庭は少人数を少年の町に残すことを考えていたが、囁き子の意見により、全員で酣の樹々を越えることとなる。
横手正臣のアイデアはうまくいき、まず探題が樹々を越え、残りの少年たちも後に続く…」
・「体験例53 灰に帰す」(単行本H)
「遂に少年たちは血化研でキムラ・ヨシコと会う。
早速、彼らは彼女に好感高速輸血を開始。
だが、途中、血液ポンプから血液が漏れていることが判明する。
AB型の血液の輸血が急遽必要となるのだが、提供を申し出たのは…」
オカルト・ブームの時期に発表された異色作です。
原作者の小池一夫先生に関して、私は無知に等しく、実のある話はできませんが、当時のオカルト的な知識を総動員して、作品にぶち込んでおります。
吸血鬼やUFOといったメジャーなものから「キノコンガ」あたりまでちょっぴり入っていたりして、個人的に嬉しいところです。(マニアックなトリビアをふんだんに採り入れたせいで、ところどころ歪に感じますが…。)
内容的にはホラーというよりも「サバイバルもの」の色が強く、地球で生き残った人間となった少年たちが侵略者の「灰」とギリギリで渡り合う、アツい展開になっております。
核となるのはリーダー、真庭典明の「人間」であることへの決意とこだわりで、「人間」をキーワードに少年たちの共同体をまとめていくのが、もう一つの見所です。
ちなみに、自分たちを守るために、異星人の娘をレイプして、自分たちのサイドに強制的に引き入れ、「母親」に仕立て上げていくのは、原作者の女性観の一つの現れなのでしょうか?
また、吸血鬼化した人間(「慣性人間」)を一種のゾンビのように描いており、社会風刺の面も強いとは思います。
約半世紀前の作品なので、若干の古さはありますが、今読んでも、様々な発見のある作品です。
小池一夫・平野仁タッグの隠れた名作として再評価が望まれます。
2024年7月2〜6・8〜10・15日 ページ作成・執筆