今井康絵「見てはいけない」(2009年2月4日初版第1刷発行・2010年7月20日第5刷発行)

 収録作品

・「顔」(2008年「ちゃおデラックス」初夏の大増刊号)
「小学校5年2組の村下香織は、容貌に大きなコンプレックスを抱いていた。
 雑誌の美容整形の広告を見て、彼女は顔を、人気モデルの「新宮かりん」そっくりに整形する。
 すぐに男子にモテモテになり、暗くて引っ込み思案だった性格は、明るく傲慢なものに変化。
 香織を真似して、クラスの女子生徒達は次々と美容整形を施していき、整形してないのは、香織の友人だった美月だけとなる。
 クラスの女子達の、美を追い求める欲望は果てしがなく…」

・「パンデミック」(2008年「ちゃおデラックス」春の大増刊号)
「研究所からネズミが逃げ出したことから、ある地域で謎の奇病が広がる。
 その奇病に感染すると、人間は15〜30分で破裂してしまうのであった。
 児童達は小学校で待機するよう指示されるが、担任の教師が破裂して、大パニック。
 更に、人に伝染せば、治るというデマが広がり、パニックに輪をかける。
 江奈と圭太は理科準備室へと逃げ込むのだが…」

・「リフレイン」(2008年「ちゃおデラックス」夏の超大増刊号)
「2008年7月25日。
 美久は直樹に告白され、ルンルン気分。
 だが、帰宅後、美久に差出人不明のメールが来ており、それには、直樹が交通事故にあう動画がリンクされていた。
 そのメールを調べると、発信されたのは、7月26日で、明日の日付。
 いたずらと思い、無視するが、翌日、動画の通りに直樹は事故死する。
 彼の死を未然に防げず、美久は後悔に苛まされるが、気が付くと、過去の25日に戻っていた。
 今度は、彼を事故から救うものの、またもや、未来からのメールが来る。
 そのメールには海で溺死する動画がリンクされていた。
 彼女はその未来を回避しようとするのだが…」

・「私の王国」(2008年「ちゃおデラックス」秋の大増刊号)
「大伴ちひろは、私立の名門学園に在籍する身ながら、実際は貧乏暮らしであった。
 見栄を張って、クラスメート達に嘘をつきまくるが、理事長の娘、上野ゆかりにはバレバレで、気が気でない。
 そんな彼女が唯一、心を許せるのは、拾った雑種犬のチロだけであった。
 ある時、上野ゆかりに誕生パーティーに招いてくれないのかと問われ、ちひろは、ゆかりの背後に霊がいると驚かして、その場をしのぐ。
 だが、指摘した当の場所には学園に棲みついている「悪魔」が本当にいて、ちひろの前に姿を現す。
 ちひろは悪魔と契約し、自分の魂と引き換えに「ウソを全部本当にして」と願う。
 以来、彼女が今まで夢見たことが次々と現実となるのだが…」

・「心霊写真」(2008年「ちゃおデラックス」冬の大増刊号)
「明穂は、心霊写真を捏造して、皆に自慢していたが、写真家の兄を持つクラスメートにデータを持ってくると約束してしまう。
 仕方なく、本物の心霊写真を撮るべく、心霊スポットや墓場、葬式会場に出かけるが、成果は思わしくない。
 いろいろと考えた結果、人が「死ぬ瞬間」なら撮れるかも…と交通事故が多発している場所に向かうのだが…」

・「見てはいけない」(「モバフラ」2008年7月20日配信号)
「亜由美の場合」
 高校二年生の桜川亜由美は、通学路の踏切で、猫の死骸を目にする。
 可哀想に思い、手を合わせたところ、友人の美加から「かわいそうと思うと憑いてきちゃう」とたしなめられる。
 以来、注意していたが、数日後、踏切りに女子高生がとび込む場面に遭遇する。
 その夜、彼女の部屋に現れたものとは…?
「江美奈の場合」
 友長江美奈と友人の二人は、クラスメートの森谷千賀を学校の屋上でいじめていて、千賀を転落させてしまう。
 事故は江美奈達の仕業とばれなかったものの、今度は、江美奈がいじめられる番となる。
 その帰り道、歩道橋の上で、死んだはずの千賀が、江美奈の前に現れる。
 江美奈は幽霊なんか怖くないと強がるが…。
「ちはるの場合」
 ちはるの幼馴染、真樹は最近、妙にきれいになる。
 噂によると、クラスメートから無視された真樹は、中年男性と付き合うようになり、彼と行った東南アジアで特別なエステを受けたらしい。
 その噂を聞き、ちはるは美樹に一緒に帰ろうと声をかける。
 真樹は噂は全部、本当だと言い、自分は一人でないので、幸せだと打ち明ける。
 そして、きれいになったのは、東南アジアで食べた、名の知らぬフルーツのお陰と明かす。
 実際、真樹の身体からは甘い香りが漂っており、それは、彼女の胸の薔薇のタトゥーから発していた。
 香りに眩惑された、ちはるはそのタトゥーに触ってみるのだが…。

 個人的に感銘を受けたのは、表題作の「見てはいけない」。
 ショートショートが三話収録されたオムニバスですが、どのストーリーも、これで短編が一話、描けるぐらいの出来です。
 もっと内容を膨らませて、細かい部分にまで手を入れたら、傑作になったかもしれません。

2020年10月20・21日 ページ作成・執筆

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