まいた菜穂「さよならエレベーター」(2010年12月29日初版第1刷発行)
収録作品
・「さよならエレベーター」
ある学校に伝わる怖い噂。
職員室近くのエレベーターは死後の世界とつながっており、存在しないはずの地下二階から霊が上がってくるという。
これは、そのエレベーターにまつわる三つの物語…。
「天国からのプレゼント」(2010年「ちゃおデラックス」春待ち超大増刊号)
及川しのは、その大人びた風貌と口べたなせいで、クラスメートから敬遠されていた。
ある日、彼女は、噂のエレベーターに、事故死した梢の姿を視る。
彼は彼女に頼みがあって、現世に現れた。
彼の頼みとは、職員室にある彼の私物から「女の子ノート」を捜し出すことで、そのノートには全校女子のプロフィールが詰まっていた。
だが、ただ一人、及川しのだけは話ができず、ノートを完成させるために彼は戻ってきたのと話す。
どん引きして、しのは彼を無視するが、そのノートが、他の女子生徒達との会話のきっかけとなり…。
「1番大切な宝物」(2010年「ちゃおデラックス」春の超大増刊号)
佐倉都は、小学五年生の時に引っ越した水川ハルキが初恋の人で、いまだに心に想っていた。
夏休みに再会する予定だったが、夏休み前の学校のエレベーターから彼が現れる。
ハルキは転校するので、学校の下見に来たと説明し、都はこのサプライズに大興奮。
学校を案内した後、二人は、昔、夕日をよく見た高台に出かける。
だが、高台の向こうには高層マンションが建っていた。
変わらないものはないと呟くハルキに、都は彼のことが永遠に大切だと言う。
翌日、彼女は、エレベーターの噂を聞くのだが…。
「今度はまちがえない…」(2010年「ちゃおデラックスホラー」7月号増刊)
奥村ゆめと津久井七瀬は幼なじみ。
表面上は仲が悪そうだったが、ゆめは、6歳の時、18歳になったら、彼女と結婚するという七瀬との約束をいまだに胸に秘めていた。
ある日の放課後、彼女は、彼が他の女子のロッカーにラブレターを入れるところを目にする。
混乱した彼女は、ロッカーから手紙を抜き出し、ゴミ箱に捨て、その場から逃げ出す。
学校の外で、彼女は七瀬とぶつかり、しどろもどろになっているところに、車が突っ込んでくる。
二人が気が付くと、学校のエレベーターにいた。
生徒達の話から、二人は、自分達が意識不明の重体だと知る。
幽体の彼らは元に戻る方法を探るのだが…。
・「キミがくれた奇跡」(2009年「ちゃおデラックスホラー」夏の超大増刊号)
「皆藤レミは、人の嘘を何でも見抜き、気味悪がられていた。
昔から彼女は、人が嘘をつくと、その人の肩に黒い生き物が出てきて、その人の本音を告げるのが見えるのである。
ある日、明日賀頼人という生徒が久々にクラスにやって来る。
レミは彼のことを全く覚えていなかったが、彼は病気で半年前、入院していて、学校にほとんど来てなかったのである。
彼は自分の病気について何も知らされていないことに不安を抱き、レミに真実を教えてくれるよう頼む。
しかし、その結果は、手術をしたら治るが、ドナーがおらず、このままでは余命一年であった。
これをきっかけに、レミは彼の見舞いに行くようになり、嘘一つない、太陽のような彼に次第に惹かれていく。
だが、彼の病状は悪化の一途をたどり…」
・「星にねがいを」(2009年「ちゃお」10月号)
「早坂叶は、片想いをしていた夏目に告白したものの、あっさりふられ、その直後に事故死する。
幽霊になった彼女を夏目だけが視ることができ、叶は彼に復讐を宣言。
復讐はちっともうまくいかないものの、彼の隠れた優しきに触れていく。
彼女は、彼がいつもしているヘッドフォンにFMラジオのストーム音が流れていることを知るが、その理由とは…?」
恋愛ホラーがメインの単行本です。
基本、純愛ものですが、一つだけ強烈なバッド・エンドがあって、目が点になりました。
個人的なベストは「キミがくれた奇跡」で、相手の嘘を告げる「黒い生き物」という発想が面白いと思います。
2021年4月28日 ページ作成・執筆