今井康絵「地獄のエレベーター」(2013年11月6日初版第1刷発行)

 収録作品

・「地獄のエレベーター」(2012年「ちゃおデラックスホラー」11月号増刊)
「大津美裡香(13歳)は、他人への優しさなどかけらも持ち合わせていない少女。
 ある日、彼女は、アイドルのオーディションを受けに、指定されたビルへと行く。
 だが、会場へ行くエレベーターに閉じ込められ、「国立矯正施設」による「イジメ加害者矯正プログラム」が始まる。
 これは、一つ問題に正解するごとに一階上がり、最上階に着いたら、矯正完了とみなされ、元の生活に戻ることができるのだが…
 「矯正プログラム」を拒否すれば死!!
 問題に不正解の場合も死!!
 解答に遅れても死!!
 死と隣り合わせの中、どうにか最上階に辿り着くのだが…」

・「魔女裁判」(2011年「ちゃおデラックスホラー」1月号増刊)
「小学校五年2組。
 社会の授業で、裁判について学ぶことになる。
 扱う事件は、強盗が、家人二人をガソリンで焼き殺し、金を奪って逃走したというもの。
 役割はくじ引きで選ばれ、小林美奈は容疑者の役となる。
 先生は自由に話し合いができるよう場を外し、生徒達だけで模擬裁判を行うこととなる。
 美奈は所詮、遊びだと軽い気持ちでいたが、他の生徒達は裁判員の役柄にのめり込み…」

・「シナナイカラダ」(2011年「ちゃおデラックスホラー」7月号増刊)
「広田望(小学校6年生)は「不思議研究クラブ」の一員。
 部員は部長の仲村未来、山口、双子の萌絵と直美の計5人。
 ある日の会合で、未来は、死なない生物として知られるクマムシについて報告する。
 報告が終わった時、息も絶え絶えの山口がやって来る。
 彼は何かに噛まれたと話すが、突如、脱皮して、巨大な虫に変身。
 虫に足を噛まれた萌絵も虫へと変化してしまう。
 気が付くと、部室の外は、クマムシ人間で溢れ返っていた…」

・「七人ミサキ」(2012年「ちゃおデラックスホラー」1月号増刊)
「田島秀人は原因不明の病気にかかって、急死する。
 更に、彼の近所の子供達も五人、立て続けに亡くなっていた。
 田島の友人だった大和は、原因はどうやら「七人ミサキ」にあるらしいと知り、調べてみる。
 「七人ミサキ」とは、島に流れ着いた七人の坊主や武士が、島民に殺された後、怨霊化。
 その霊が七人並んで歩く姿を見た者が呪い殺されると、先頭の幽霊が成仏し、最後尾に呪い殺された者の幽霊がついて、永遠にさまようという伝承であった。
 大和がそれについて、ガールフレンドの高垣結奈に説明していると、彼らの前に「七人ミサキ」が現れる。
 その最後尾には、田島が付いていた。
 そして、七人目に呪い殺されるのは、大和か結奈のどちらか。
 呪いを解くために、二人は「七人ミサキ」の石碑を探すのだが…」

・「肉のヨロイ」(2013年「ちゃおデラックスホラー」9月20日号増刊)
「小田原まゆは、クラスでいじめの標的になっていた。
 ある日、彼女はテレビの動物番組を観て、強くなるためには体が大きくなればいいと気づく。
 夏休みの間、ずっと引きこもって、ひたすら食べ続け、二学期に入る時には「肉の鎧」を手に入れるのだが…」

・「病院の妖怪」(2013年「ちゃおデラックスホラー」3月号増刊)
「大野あかねは入院中。
 お見舞いに来た友達が、病院に現れるという妖怪の話をするのだが…」

・「鏡のむこうのセカイ」(描きおろし)
「陸田舞亜(まいあ)は学校ではいじめられ、家では母親にネグレクトされていた。
 大嫌いな世界から逃れるため、彼女は、本に載っていた方法を試してみる。
 それは、真夜中12時ぴったりに鏡を覗くと、別の世界に行けるというものであった。
 すると、鏡の向こうに、別世界の自分が現れる。
 その世界は「子供たちだけの平等な世界」らしく、舞亜は別世界の自分と入れ替わる。
 だが、そこは、子供達が、理由も知らずに、ただ戦争し続ける世界であった…」

 いじめ、矯正、環境問題…というシリアスなテーマを扱った「社会派」な作品が多い単行本です。
 ちゃおホラーで「スタンフォード監獄実験」(「魔女裁判」)が出て来るなんて、思いもよりませんでした。
 あと、「シナナイカラダ」は「トリビアの泉」を観て、思いついたのかな〜。
 ちなみに、個人的なベストは「七人ミサキ」。
 この作品は古の伝承を題材にしておりますが、いろいろと内容を膨らませることができるように思います。

2020年10月25・27日 ページ作成・執筆

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