かがり淳子・他「禁じられた恐怖夜話」(2008年7月30日初版第1刷発行)

 収録作品

・かがり淳子「ふしぎ岳キノコ一家」(「ちゃおデラックス2006年夏の超大増刊号」掲載)
「野外実習の際、山で迷った三人の少女。
 不思議岳というところで、彼女達は老婆に出会い、その家で一夜を過ごすこととなる。
 そこの一家はキノコを栽培しているという話だが、どうも様子がおかしい。
 その夜、彼女達はそこの一家の秘密を知る…」

・河村じゅん「鬼ごっこは終わらない」(「ちゃおデラックス2007年夏の超大増刊号」掲載)
「夏休み、公園で遊ぶ少女達に、真衣という少女が鬼ごっこを持ち掛ける。
 真衣は最近、公園で知り合った少女で、いつも鬼ごっこをしようと言い、鬱陶しがられていた。
 真衣が鬼をすると言うので、ちなつは友人達に、鬼ごっこをするふりをして、家に帰ろうと提案する。
 しかし、それ以後、ちなつの友人達が交通事故にあったり、失踪したりする。
 そして、ちなつの周辺にも真衣の姿が…」

・清水真澄「彼女がそこにいる」(「ちゃおデラックス2006年冬の超大増刊号」掲載)
「音楽室にある古い大きな鏡の前で告白すると、両想いになれるという言い伝え。
 ある日、その鏡の前で、七恵の友人であるミサが、大沢という男子生徒に告白しようとする。
 だが、ミサは浮気性で、大沢は以前から七恵が想いを寄せていた青年であった。
 当然、一悶着起き、もみ合ううちに、二人は鏡に突っ込み、ミサは破片が身体中に突き刺さり、死んでしまう。
 七恵は怪我一つせずに助かるが、血まみれのミサの亡霊が、大沢を渡さないと彼女に付きまとう…」

・栖川マキ「禁じられた井戸」(「ちゃおデラックス2007年夏の超大増刊号」掲載)
「妃菜と貴斗は幼馴染であったが、互いに意識する年頃になっていた。
 ある雨の日、川に転落した妃菜を救おうとして、貴斗は帰らぬ人となってしまう。
 彼の死を悲しむ妃菜は、神社の裏の細い道の先にある井戸を思い出す。
 その井戸に故人が大切にしていたものを投げ入れると、死者が生き返ると言い伝えられていた。
 妃菜は、彼と交換した腕時計を井戸に入れようとするが、足を滑らして転落。
 気が付くと、彼女は病院のベッドの上で、横には、奇跡的に生き返った貴斗の姿があった。
 二人は自分の気持ちを打ち明け、夏休みを楽しく過ごす。
 しかし、妃菜は貴斗の祖母から井戸の恐ろしい秘密を聞かされる…」

・牧原若菜「せみの鳴き声」(「ちゃおデラックス2007年夏の超大増刊号」掲載)
「暑さに加え、セミの鳴き声に苛立つ結香。
 そこで、彼女は飼い猫にセミを襲わせる。
 その夜、風呂場で漫画を読んでいた彼女は、浴槽にセミがぎっしり詰まっているという幻覚を見る。
 彼女が意識を取り戻した時、腹部にセミの脚のようなものが…」

・北村有香「闇に棲む影」(描きおろし)
「山奥にある別荘に泊まる、四人の少女。
 夜、彼女達は、影のような化け物に襲われる。
 その化け物は影の中に潜み、少女達を次々と、眼球を抉り取っては殺していく。
 生き残った少女達は、別荘の部屋を電気で明るくして、朝を待つのだが…」

・久世みずき「夜がくる日」(描きおろし)
「葛城りいなは、内気なことに加え、転校が多いため、友人に恵まれない。
 だが、今度の学校は、佐藤一夜(かずや)という少年のおかげで、すぐにクラスになじむ。
 早速、クラスの女児が一人、彼女の家に遊びに来るが、彼女はその日のうちに行方不明になる。
 りいなは母親と兄が彼女の失踪に関係しているような気がして、不安で仕方がない。
 そこで、一夜と共に、兄の部屋を調べようとするのだが…」

 夏休みに当て込んで、編集された単行本でしょうが、どれも、なかなか読ませます。
 また、正統派なものよりも、明らかに「ゲテモノ」な作品が大半を占めるのも嬉しい限り。
 昭和の怪奇マンガにあった「『ガキんちょを怖がらすのに手段を選ばない』スピリット」がこんなところで命脈を保っており、目からウロコが落ちる思いでありました。
 少女向けのライトな絵柄のために、食指が動かない方が多いとは思いますが、怪奇マンガが好きな方は一度試しに読んでみては如何でしょうか?

 個人的なベストは、かがり淳子先生の「ふしぎ岳キノコ一家」。
 タイトルからして「マタンゴ」ですが、そんじょそこらの二番煎じとはワケが違います!!
「このキノコを食べると…マッシュルーム・カットになるのよ…」
 この独自かつ斬新な解釈に、おじさん、脱帽せざるを得ません。
 「マタンゴ」のファンの方は必読です!!
 ただ、唯一、残念なのは、かがり淳子先生と並ぶ、もう一方の雄、牧原若菜先生の蝉・ホラー「せみの鳴き声」が今一つ、突き抜けていないことです。
 徹底的にやったら、傑作になったかもしれないのになあ…。

2018年4月6・7日 ページ作成・執筆

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