柏ぽち・他「トイレの花子さん」
(2009年12月30日初版第1刷・2010年9月20日第4刷発行)
収録作品
・能登山けいこ「おっぴさん家のざしきわらし」(「ちゃおデラックスホラー」2009年7月号増刊)
「連休中、翔は、母親が出産する間、曾祖母の田舎に滞在することとなる。
広い田舎家には、翔の他には、「おっぴさん」と呼ばれる曾祖母と猫が一匹だけ…のはずだったが、いたずら好きの、女の子の座敷童もいた。
翔は、彼女が頭に鈴のついた髪飾りをしているので、「リンちゃん」と呼び、楽しく過ごす。
だが、翔が産まれてくる赤ん坊のために作ったぬいぐるみを、リンはいきなり奪うと、首を絞める。
その時、母親の容態が急変したと連絡が入るのだが…。
居間にあった人形と、リンの関係は…?」
・こはら裕子「いつかきっと」(描き下ろし)
「小学校四年の運動会。
日中夕菜は、応援に来てくれるはずの家族を、自動車事故で全員亡くす。
だが、次の日から、家族全員の幽霊が現れ、普通に生活し始める。
そして、四年経つが、夕菜はいまだに家族の幽霊に甘えていた。
彼女は親戚の家に世話になっており、その隣にはお寺がある。
そこの息子の詳仁は、夕菜が幽霊と暮らしていることを知り、早く成仏させるよう勧める。
彼によると、成仏できない霊は「自分を失ってさまよう」ことになるという。
夕菜は、自分の家族は大丈夫だと思うのだが…」
・かがり淳子「ランドセルの影」(描き下ろし)
「佐木を撮った写真は心霊写真であった。
彼女の左肩に、誰のかわからない手が乗っていたのである。
しかも、その手は、彼女のランドセルから出ているらしい。
彼女はランドセルから離れようとするも、いつの間にかランドセルは彼女の近くにある。
仕方なく、ランドセルを背負って、登校するが、途中の横断歩道で、ランドセルから手が伸びて…」
・姫川きらら「嘆きの人形」(描き下ろし)
「ルリと蘭花は同じ陸上部で、親友同士。
県大会を目前にして、蘭花は病気で倒れ、しかも、あと一月の命であった。
蘭花は、自分の代わりにと、ルリにピエロの人形を渡す。
ルリは、蘭花を励ますために、県大会で優勝しようと特訓に励むが、タイムはなかなか伸びない。
そんな彼女の焦りに、病院で孤独死した少女の霊がつけ込む。
少女の霊は、ピエロの人形と、誰よりも早く走れるようになる「魔法のくつ」を交換しようともちかけるのだが…」
・栖川マキ「見えないキズナ」(描き下ろし)
「佐々木果南は、産まれてすぐ母を亡くし、父親と二人暮らし。
一週間前、父の転勤である町に引っ越すが、積極的でないせいで、友達ができない。
昼休み、校舎の屋上で弁当を食べていると、きれいな女子生徒が彼女に話しかけてくる。
女子生徒は「アッキー」と名乗り、二人はすぐに友達となる。
だが、ある日、果菜は、クラスメートの山口に、アッキーが見えてないことを知る。
実際、果菜は彼女について何も知らず、学校中、捜しても、どこにもいない。
ふとしたことから、果菜は、アッキーが過去の生徒で、かなり前に死んだことを知るのだが…」
・柏ぽち「トイレの花子さん」(「ちゃおデラックスホラー」2009年7月号増刊)
「体育館の女子トイレの右から三番目を四回叩くと、花子さんが恋を叶えてくれるという噂。
稲川まほ(小学六年生)は、クラスメートのヒロと両想いにしてくれるよう、噂を試してみる。
すると、扉の向こうに、花子さんの幽霊が現れる。
花子は十五年前、12歳の若さでトイレで亡くなり、以来、ずっとこの場所にとどまっていた。
まほは花子の姿を視たことをきっかけに、花子の願いを聞くこととなる。
生前の花子は、十五年前、クラスメートの淳二に恋をしていた。
今、淳二は教師となり、まほの担任。
花子はまほに憑依し、淳二のそばにいようとする。
しかし、そのせいで、まほとヒロの仲はちっとも進展せず…」
ハート・ウォーミングなホラーを集めた単行本です。
そのため、ちっとも怖くありませんが、心にしみいる話が多く、それはそれでまた良しです。
個人的なベストは、栖川マキ先生「見えないキズナ」。
ただし、アッキーが怖い顔をするという設定が若干、意味不明なところが惜しいと思います。
2021年5月25日 ページ作成・執筆