泉道亜紀「人間回収車@」(2013年7月6日初版第1刷発行)

 黒ずくめの男性が運転する、黒ずくめの軽トラック。
 この車は「不要な人間」を条件さえそろえば、二度と戻ってこれない場所へと回収するという。
 今日、この車に回収されるのは…?

・「回収リスト@ 黒谷美鈴」
「黒谷美鈴は学校一の極悪非道なヤンキーであった。
 ある日、彼女は学校の裏庭で反抗的な一年生女子に暴力を振るう。
 だが、やり過ぎてしまい、困っていると、人間回収車が通りがかる。
 試しに声をかけると、運転手は一年生女子をあっさりトラックの荷台に放り込んで連れ去ってしまう。
 また、家でも寝たきりの祖母が毎日彼女に小言を言うのにキレて、祖母も回収してもらう。
 彼女はウザい奴らを皆、回収してもらおうと喜ぶのだが…」

・「回収リストA 長谷川沙織」
「長谷川沙織は先生の前では良い子面をしているが、実際はクラスメートの白井に陰湿ないじめをしていた。
 ある日の昼休み、沙織は友人と共に白井をいじめていると、人間回収車が通りがかる。
 沙織は面白半分に白井の回収を頼むと、本当に連れ去ってしまう。
 これにより学校は大騒動になり、最後に彼女といた沙織たちは追及され、沙織の裏の顔が明らかにされてしまう。
 沙織と友人は白井を回収されたことがばれることを心配し、仲間割れするのだが…」

・「回収リストB 柿沢伊織」
「柿沢伊織は学校でひどいいじめにあっていた。
 理由はないまま、いじめの標的にされ、学校に彼女の味方はいない。
 また、彼女は両親を心配させたくなくて、いじめの件を家族に秘密にしていた。
 しかし、いじめはエスカレートする一方で、遂に彼女は限界を感じる。
 その時、人間回収車が通りがかるが、彼女が回収をお願いした人とは…?」

・「回収リストC 折原流佳」
「田島樹と折原流佳は二人とも両親がおらず、夜中で遊んでいた時に出会い、付き合い始める。
 田島樹はカッとなるとすぐに手を出すタイプで、生徒たちのだれも逆らえない。
 だが、折原流佳には甘く、彼女はそれをいいことに学校で好き放題していた。
 ある日、二人が男子生徒をカツアゲしていると、そこに人間回収車が通りがかり、田島樹は回収されてしまう。
 折原流佳はこのままでは自分も回収されてしまうと、彼を戻す方法を調べるのだが…」

・「回収リストD 澤田由奈」
「澤田梨奈と由奈は双子の姉妹。
 しかし、二人は対照的で、梨奈は才能に溢れ友達も多いのに、由奈は大した才能もなく地味であった。
 由奈は散々両親に比較され、イヤな思いをしてきたが、ある日、梨奈にもっと努力するよう言われ、姉に対し殺意を感じる。
 そこに人間回収車が通りがかり、由奈は梨奈を回収させる。
 由奈は梨奈と入れ替わろうとし、更に、自分の死を偽装するのだが…」

・「ラッキーガールズ」(「ちゃおデラックス」2012年春待ち超大増刊号)
「小谷楓は生まれつき運の悪い女の子。
 そんな彼女に気を遣ってくれるのはクラスメートの幸田明美。
 幸田明美は成績優秀で、かわいく、クラスの人気者であり、楓は彼女に反感を覚える。
 ある日の体育の授業、明美は楓の方に飛んできたバスケットボールを身体を張って防いでくれる。
 だが、楓は皆が明美を心配している様子を見て、明美に嫌味を言ってしまう…」

・「エッセイ劇場〜まさかのホラー!!〜」(描き下ろし)
「「人間回収車」ができるまで…についてのお話し」

 ちゃおホラーの人気作、「人間回収車」。
 巻末の「エッセイ劇場」によると、ホラー初挑戦なのに、とんとん拍子に作品が出来上がったようで、こういうことってあるんですね。
 ともあれ、「人間回収車」という発想は面白いと思います。
 それだけでなく、この作品の肝は「回収の条件」でしょう。
 回収されるのは「不要」な人間のみで、これにより様々なシチュエーションが生み出されます。
 この駆け引きが(ちゃおホラーにしては)スリリングで、異色のシチュエーション・ホラーと評価してもいいのではないでしょうか?

2024年8月4日 ページ作成・執筆

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