泉道亜紀「人間回収車B」(2014年12月3日初版第1刷発行)

 黒ずくめの男性が運転する、黒ずくめの軽トラック。
 この車は「不要な人間」を条件さえそろえば、二度と戻ってこれない場所へと回収するという。
 今日、この車に回収されるのは…?

・「回収リストJ 渡辺直美」
「渡辺直美はいじめっ子。
 と言っても、彼女にとっては退屈をまぎらわせるための遊びでしかなく、クラスメートたちに無理難題を押し付けて楽しんでいた。
 ある日、彼女の学校の近くを人間回収車が通りがかる。
 直美は現在、標的にしている少女を回収させるが、翌日、彼女は戻って来る。
 彼女から必要とされている人間は回収されないと聞かされ、直美はあるゲームを思いつく。
 それは「このクラスの人間を1人ずつ人間回収車に回収させていくゲーム」であった。
 毎週、人間回収車は現れる度に、彼女は指名したクラスメートを回収させるのだが…」

・「回収リストK 橘三恵」
「橘三恵は幼馴染の良幸に告白される。
 彼女も彼のことが大好きであったが、彼に想いを寄せる本橋久美子から脅迫を受けており、断ってしまう。
 本橋久美子に追われ、三恵が逃げ込んだ先は「不要な人間を回収する」仕事の事務所であった。
 人間回収車のドライバーは新しいサービスを始めたと彼女に「人間回収券」を見せる。
 この券を不要な人間に貼ると、ドライバーがその人間を回収しに来ると言う。
 三恵はこの券をもらうが、さすがに使用には躊躇いを覚える。
 だが、本橋久美子の横暴な振る舞いを目にして、彼女に貼ろうとするのだが…」

・「回収リストL 中村理紗」
「中村理紗(小学六年生)はクラスの坂下弘美が大嫌い。
 坂下弘美は乱暴で我が強く、クラスの誰も彼女に逆らえない。
 理紗は一応は弘美の友人であったが、心の中では散々悪態をついていた。
 ある日、理紗が弘美たちと下校していると、人間回収車が通りがかる。
 理紗は咄嗟に人間回収車を見ると呪われるが、誰かを回収させると呪われないと嘘をつく。
 彼女は弘美を回収させ、心晴れ晴れ。
 また、弘美がいなくなって、クラスメートたちも伸び伸び。
 しかし、弘美が人間回収車から戻って来て…」

・「回収リストM 美森小春」
「美森小春はモデルとして活躍する。
 彼女は子供の頃、両親を交通事故で亡くし、以来、叔父夫婦の家に厄介になっていた。
 彼女はこの家から出ていくため、モデルの仕事に励み、もっと美しくなろうとする。
 その反動で彼女は自分を磨こうとしない人間を軽蔑する。
 彼女の幼なじみの羽石日和もその一人であった。
 羽石日和は小春と仲良くしたいと思い、話しかけてくるが、小春は彼女がウザくて仕方がない。
 ある日の下校途中、小春は通りがかった人間回収車に日和を回収させる。
 日和は泣きながら、ドライバーに小春のようにかわいくなりたいと訴えると…」

・「回収リストN 畠山真澄」
「畠山真澄(高校一年生)はいくら努力しても、テストの成績で隣のクラスの藤原伊代に勝てず、全校中二位であった。
 彼女の両親は教育熱心で、兄と姉は有名高校に進学するも、彼女は受験に失敗し、以来、「畠山家の恥」扱いされていた。
 無名の高校でも一位になれば家族が見直してくれると考えるも、それが叶わず、彼女は焦る。
 ある日、彼女は町で占い師を見かける。
 占い師はとても美しい女性で、占ってもらうと、真澄は藤原伊代がいる限り、二位と告げられる。
 そこに人間回収車が通りがかり、占い師は自分なら人間回収車がいつどこに現れるかわかると言う。
 ただ、それを教える代わりに、必ず誰かを回収させ、もし誰も回収させなかったら、真澄が回収されてしまうのであった。
 真澄は女占い師から人間回収車が現れる場所と日時を教えてもらい、そこへ藤原伊代を呼び出すのだが…」

・「私立エレメント学園非公認うらない部 星巳鈴の事件簿」(「ちゃおデラックス」2014年9月号)
「星巳鈴(ほしみ・すず)は有名占い師としてテレビに出ている星巳ファミリーの末娘。
 彼女は占いに興味がなかったものの、人の役に立ちたいという思いが高じ、高校入学後、うらない部を立ち上げる。
 しかし、部員は彼女一人だけで、このままでは廃部の危機。
 彼女はうらない部の勧誘をして回るが、その際、関野健(せきの・たける)というイケメン男子生徒と出会う。
 彼は非常に迷信深く、占いに目がなかった。
 彼を入部させれば部に女子が殺到と考えるも、彼に想いを寄せる女子から鈴は嫌がらせを受けるようになり…」

・「エッセイ劇場〜漫画家デビューまでの道のり〜」(描き下ろし)
「子供の頃から漫画家が夢だった作者が紆余曲折の末、漫画家としてデビューするまでの話」

 「人間回収車」のエピソードはどれも粒よりですが、「M美森小春」「N畠山真澄」は事情が事情なので、さすがに気の毒に感じました。
 でも、まあ、人生ってこんなもんかもしれませんね…。

2024年8月6日 ページ作成・執筆

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