成毛厚子「水迷宮E」(1990年3月20日初版第1刷発行)

 収録作品

・「熱帯夜」
「岸田玲子は三流の翻訳家。
 彼女は優秀な姉の布美子に強いコンプレックスを抱いており、姉の夫の道彦を寝取ることで満足感を得ていた。
 ある日、布美子は祖父の七回忌のために外出し、その合間に玲子は道彦と楽しむ。
 しかし、姉は七回忌には出席しておらず、翌朝、二階のベランダで首を吊っている彼女が発見される。
 幸い、命は助かったものの、一時、脳死状態になり、完全に回復するまでに時間がかかると医者に言われる。
 布美子は目は開いていても、何も見えていないようだが、玲子はわざとそんなふりをして自分に復讐するつもりだと考える。  とりあえず、玲子は姉を家に引き取り、療養させるが、家の中で何者かの気配がある。
 それは子供ぐらいの大きさで、姉は自室で木箱の中に何かを飼っていたようなのだが…」

・「夢喰い」
「川辺淳子はFA(ファッション・アドバイザー)。
 彼女は一流好みで、そのぶん、プライドも高い。
 彼女は専務の片上透と密かに付き合っており、妊娠三か月であることを打ち明けるタイミングを窺う。
 ところが、彼女の身の周りに怪しい男が出没するようになる。
 彼女は男にレイプされる夢を何度も見て、男に見覚えがあるように感じるのだが…」

・「繋がれた男」(「ミステリーJ」1988年VOL.2)
「良子はしがないサラリーマンの妻。
 彼女の楽しみは向かいの超高級マンションのベランダに姿を現わすイケメンを見ること。
 彼はハーフっぽい顔立ちに引き締まった体をしており、物憂げに遠くを眺める眼差しがたまらなく魅力的であった。
 彼と同居しているのは四十歳ぐらいのオミズっぽい女性で、夫婦のようには思えない。
 ある日、良子が飼っていた小鳥が逃げ出し、向かいのベランダに飛んでいく。
 小鳥を捕まえたのは良子の憧れの彼で、これをきっかけに彼女は彼の部屋を訪れる。
 彼は働いておらず、部屋でずっとコンピューターゲーム(注1)を作り続けていた。
 彼の母は夫に逃げられたことのトラウマのため、彼を部屋から出さず、学校にも行かさなかった。
 そんな彼が夢中になったのはコンピューターゲームで、彼はゲームの中で「万能の神」になれる。
 しかし、テレビの箱の中からは出られず、彼が自由になるには「魔法をとく呪文」が必要だと言うのだが…」

 個人的に、「水迷宮」シリーズの中で最高の単行本だと思います。
 目玉は広永マキ先生張りのシスコンが炸裂する傑作「熱帯夜」で、生き人形やゾンビまで出てくる大盤振る舞いな一作です。
 また、残りの二編も実に澱んだ後味で、「女の性」をビンビン感じさせてくれる秀作です。(特に「夢喰い」はヘビー!!)
 成毛厚子先生はいまだご活躍中ではありますが、若い方には馴染みがなさそうですので、興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、一度、試し読みをされてみたら如何でしょうか?
 昭和時代(若干、平成が入ってますが…)のホラー、奥が深いですよ。

・注1
 作中にファミリーコンピューターが出てきて、懐かしい〜。
 「ファンタジーゾーン」はわかったけど、ヘリコプターの出てくる見下ろしのシューティングゲームは何なんだろう?(「バンゲリングベイ」か?)

2025年6月18・19日 ページ作成・執筆

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