穂実あゆこ「人形師」(1987年6月20日初版第1刷発行)
収録作品
・「人形師」(1985年「ちゃお6月号」マイラブコミックス)
「人形師・中原千舟の人形芝居を上演していた劇場で、火災が起きる。
その際、千舟の双子の娘、姉の「ちぎり」と妹の「せあら」が猛火の中に取り残される。
父親が娘を捜しに来るが、ちぎりは「どちらを先に助けに来るか」と、せあらとは別の場所に移動する。
父親はせあらのもとに向かい、火のついた材木の下敷きとなり、死亡。
せあらは軽傷で済んだが、発見の遅れたちぎりは重体となる。
六年後、ちぎりとせあらの姉妹は高校生となっていた。
ちぎりは天才人形師として注目を集める一方、せあらは不愛想で取り柄のない嫌われ者になっていた。
ポール・ギャリコの「七つの人形の恋物語」公演のため、ちぎりは演劇部に人形遣いとして協力する。
だが、演劇部部長、科野(しなの)秀介は、ちぎりの代わりに、せあらがひそかに代役を務めていることを見抜く。
姉のちぎりは過去の事故で後遺症が残り、床に臥すことが多くなったのであった。
ちぎりは秀介のことが好きで、公演をどうしても成功させたいと願う。
せあらも姉の意を汲むが、彼女と秀介は互いに惹かれていく。
病床のちぎりは二人の仲を勘付き、嫉妬と憎悪の炎を燃やす。
そこで、ちぎりは、幼少の頃からの、人形を動かす超能力を使い、自分の命を削ってでも、妹に復讐しようとする…」
・「月夜見の娘」(1986年「ちゃお6月号」マイラブコミックス)
「氷川香名子は、十歳の誕生日、父親からフクロウのオルゴールをもらう。
彼女は、特別に夜目がきくたちであった。
その夜、トイレで目を覚ました彼女は、書斎(?)を荒らす男達を目撃。
幸い、ケガはなかったが、三日後、両親が交通事故死する。
香名子は、車を運転していた同僚の息子、厨子暁(ずし・あきら)と共に、祖父の氷川洋蔵に引き取られる。
氷川洋蔵は、日河コンツェルンの会長で、政財界に顔がきく人物であった。
六年後、香名子と暁は高校生になる。
香名子は暁を慕うものの、暁は彼女にも祖父にも距離を置き続けていた。
彼は、父親が交通事故を起こした負い目を感じており、高校を卒業したら、氷川の家を出ようと考える。
ある日、香名子に、不審な男が声をかけてくる。
彼は、六年前の交通事故を担当した、勝田という刑事であった。
彼によると、あの交通事故には仕組まれた形跡があり、香名子の父親と暁の父親は何らかの調査をしていたらしい。
交通事故の前の怪しい男達が何らかの関係があると香名子は考え、ある賭けに打って出る。
それは「両親の死は事故ではなく、殺人で、香名子は容疑者の一人の顔を見ている」という情報を警察に流させるというものであった…」
・「こわいもののはなし」
作者が「こわいもの」について語るエッセイです。
・備考
カバーの背表紙上部、欠損。
2020年3月5日 ページ作成・執筆