阿部潤「ポルタス」(2006年2月5日初版第1刷発行)

・「第1話. 踊るナイフ」
「ある高校の美術室。
 美術部員の川上あさみ(高校二年生/17歳)は、美術顧問の沢ケイゴ(美術教師/25歳)に「ポルタス」の噂話をする。
 「ポルタス」は昔、流行ったゲームソフト(ファミコン)で、ゲームのプレイ中、ある場所で男の子が現れ、「こっちに来る?」という質問に「はい」で答えると、答えた人物は必ず死んでしまうという。
 ケイゴはそんなゲームなど聞いたことがなく、そっけないが、そこに美術部員の千春が現れる。
 千春は最近、引きこもって、親友であるあさみにも全く連絡がなかった。
 千春はどうも上の空で、言う事も全て後ろ向き。
 彼女は引きこもっている間、「ポルタス」というゲームにはまっていたと言うのだが…」

・「第2話. そこに希望なんてない」
「突然、自殺した千春。
 あさみは彼女の葬式に出た際、母親から千春の部屋を見て行ってくれるよう頼まれる。
 千春の部屋は凄まじく荒れ、壁には奇怪な記事を掲載した新聞紙がびっしりと貼られていた。
 あさみは、ゴミの中にファミコンの本体が半ば埋もれているのを目にする。
 ファミコンに刺さっているソフトは「ポルタス」…。
 一方、沢ケイゴは「ポルタス」のことが気にかかり、ネットで検索をする。
 噂についての詳細な情報はなかったが、ある掲示板で、制作者が自殺していたことを知る…」

・「第3話. ばたふらい」
「あさみは千春の部屋から「ポルタス」を持ち帰り、家でプレイする。
 途中、飽きて、昼寝をすると、あさみは奇妙な夢を見る。
 彼女は巨大な石造りの建物の中にいた。
 廊下の先にあるカーテンを開くと、目の前の部屋の床には芋虫がぎっしり敷き詰められている。
 そして、その先の一段、高くなっている所に、両手両足を縛られた子供が座り込んでいた。
 子供の頭には、巨大なこけしの頭がかぶせられていて、助けを求めているのだが…。
 その頃、ケイゴは、あさみの担任である山下真由美(国語教師/26歳)に声をかけられる。
 彼女は、あさみが親友の死を受けて、後追い自殺をするのではないかと心配していた。
 彼女の立ち去り際、ケイゴが「ポルタス」について尋ねると…」

・「第4話. 隠し面」
「あさみが夢から目覚めると、テレビのゲーム画面が変わっていた。
 サンドストームの中、こけしの面が一瞬、現れると、「たすけて」という文字が浮き上がる。
 その夜、ケイゴは、友人の浩一を飲みに誘う。
 「ポルタス」はチューンナップ・ソフトのスガノ社長の兄、菅野サトシが開発したもので、浩一はその会社で派遣で働いていた。
 浩一によると、菅野サトシが「ポルタス」にプログラミングいた「隠し面」を見ると死ぬという噂話があることはあるのだが…」

・「第5話. 爪を噛む」
「あさみも千春と同じように「ポルタス」にとり憑かれ、部屋は荒れ果てる。
 ゲームの中は、黒い蝶が幾匹も舞う、田舎の農村。
 そこで、彼女は「タカシ」という少年と対峙していた…。
 その頃、あさみの部屋を、担任の山下真由美が訪れる。
 そこで目にしたものとは…?
 一方、ケイゴはチューンナップ・ソフトの社長宅を訪問する。
 スガノ社長は彼を昔の仕事場に案内し、「ポルタス」の隠し面について説明をする。
 それは、こけしの頭を捜すというミニゲームで、ゲームをクリアすると、ある住所が表示される。
 その住所には「呪いのこけし」が埋められているというのだが…。
 「呪いのこけし」とは…?」

・「第6話. 子消し」
「真由美は、あさみの部屋で奇怪な現象に襲われる。
 彼女はケイゴの携帯電話に助けを求めるのだが…。
 その頃、スガノ社長はケイゴに20年前に出来事について話していた…」

・「第7話. 石つぶて」
「夢の中、あさみは見知らぬ農村にたどり着く。
 その農村では、タカシの一家が村八分にされていた。
 タカシの一家は、祖母と父親を加えた三人で、タカシの父親はその凶暴性から村人達から蛇蝎の如く忌み嫌われていた。
 あさみはタカシの父親に暴行されそうになるが、気が付くと、タカシの家の土間の柱に縛り付けられていた…」

・「第8話. 憎悪」
「千春があさみを助けてくれる。
 千春は、ここはタカシの魂の中で、同時に、昭和三十年に長野県にあった長沢村だと教える。
 長沢村は伝説となってしまったのだが、その理由とは…?
 千春は逃げるよう勧めるが、二人の前にタカシが現れる。
 その頃、スガノ社長はミニゲームを解き、「呪いのこけし」の場所を突き止めるのだが…」

・「第9話. 呪念」
「あさみは月沢村で起こったことを目の当たりにする。
 彼女はゲームの中の世界から生還し、ケイゴ、山下真由美と共に、月沢村跡を訪れる。
 黒い蝶が導いた廃校のどこかにこけしを供養する場所があるらしい。
 しかし、彼らに月沢村の怨霊が襲いかかる…」

・「第10話. 青い空」
「ケイゴにタカシの父親がとり憑き、あさみを襲う。
 首を絞められながら、あさみは青い空を見上げていた。
 彼女はタカシの死の真相を知る。
 その時、千春の言葉が彼女の耳に届く…」

・「最終話. 愛するということ」
「あさみとケイゴは校舎から逃げ出そうとするが、講堂で山下真由美が縄で吊り下げられているのを目にする。
 二人が助けに行くと、床に穴が開き、ケイゴが転落。
 床の下には、奇妙な穴があり、ケイゴは確かめに行く。
 一方、あさみの前に、タカシが現れ、彼女に襲いかかる…」
(「週刊ヤングサンデー」2005年40号〜49号掲載)

 呪われたゲームという都市伝説をテーマにした力作です。
 あと、レアな「こけし・ホラー」でもあります。(巨大なこけしの面をかぶった少年の描写はインパクト大なので、これだけでも見ておいた方がいいです。)
 面白いのですが、気になる点がちらほら。(タカシの父親があさみに暴行しようとした理由や、最後の方で山下真由美が何故縄抜けできたのか?等)
 また、残酷描写の一部にモザイクがかかっているのは、個人的に興ざめでした。(モザイクかけるぐらいだったら、描写を工夫してほしい。)
 ラストは、B級スプラッター・ホラー映画っぽく、キメてくれます。

2023年1月12・15日 ページ作成・執筆

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