磯野こずえ「あかい誕生日」(1991年8月20日初版第1刷発行)
収録作品
・「あかい誕生日」(1989年「コロネット冬の号」掲載)
「私立S女子高等学校。
母子家庭のマリコは、心優しい娘さんで、登校途中に、交通事故にあった、飼い主のわからない犬を動物病院に連れて行くほどであった。
しかし、クラスでは氷室里花を中心とするグループからいじめにあう。
しかも、母親はそんなことは露知らず、ふとしたことでいじめを更に煽ってしまう。
マリコは皆が憎くて憎くて、自分の中の「悪魔」を抑えることができない。
そんな時、彼女をいじめていたクラスメートが次々と行方不明になっていく…」
・「真夜中の訪問者」(1990年「週刊少女コミック」17号掲載)
「北陸から東京へ越してきた柳沢一家(両親と娘の陽子)。
引っ越した日の夜、陽子は、公園のブランコに乗っている少女に気付く。
ひどく痩せた少女はランドセルを背負っており、共働きの家庭らしい。
陽子は少女に引っ越しの挨拶のお菓子を渡すが、少女はいつの間にか、姿を消す。
翌日の夜、陽子は夜中の三時に誰かがドアを叩く音で目を覚ます。
しかし、ドア・レンズから覗いても、外には誰もいない。
怯えながら、布団に潜り込むが、翌朝、母親はそんな音は聞いていないという。
次の夜、父親の出張と、母親の旅行が重なり、陽子は一人きりとなる。
またドアをノックする者があり、陽子がドアを開けると、ランドセルの少女がいた。
それから、二日、陽子は学校を無断欠席する。
彼女と同じマンションで、クラスメートの瞳野(とうの/男)は、様子を見に、彼女の部屋を訪れるのだが…」
・「しあわせ指数」(1989年「週刊少女コミック」17号)
「神野幸美は、人生に絶望していた。
幼い頃から優秀な妹と較べられ、家庭内でも学校でも居場所がなく、更には、親友に裏切られ、好きな人を奪われてしまうという不幸っぷり。
ある時、彼女に、聞いたことのない会社から「しあわせをよぶペンダント」なるものが送られてくる。
彼女が申し込んだわけでなく、特別モニターに選ばれたらしい。
翌日、幸美はペンダントを付けて、登校するが、全てが彼女の思うようになる。
しかし、その代償は、他人の不幸であった…」
・「大きな樫の木の下で」(1988年「コロネット夏の号」掲載)
「呉林美稚子は、幼い頃から、悪夢をよく見る。
それは、幼い彼女が、首のない男児に、首を一緒に捜してと頼まれるという内容であった。
その夢を鮮明に見る時はいつも身の危険にさらされるが、バカップルにせがまれ、元基という青年を加えた四人で、ペンションに出かけることとなる。
何故か、そのペンションには来たことがないはずなのに、美稚子はデジャヴに襲われる。
その時、庭の樫の木が彼女に襲いかかり、すんでのところを元基に助けられる。
しかも、樫には藁人形が打ち付けられていた。
悪夢の原因を見極めるために、美稚子はペンションに滞在し続けることを決意するのだが…。
首なし男児と彼女との関係とは…?」
・「遠き日の恋人へ…」(描き下ろし?)
幼い頃の作者を慕った、いとこの貞通(さだみち)君のお話。
彼のエピソードが「大きな樫の木の下で」のアイデアの一つになっております。
少女漫画にあまり興味がなく、フラワーコミックスについて全くと言っていいほど、知識はありません。
ですが、「あかい誕生日」はフラワーコミックスの中で最もゴア度の高い単行本だと断言できます。(これを超えるものは早々ありません!)
絵柄は、女の子向けなのに、唐突に、メガトン級の残酷描写が捩じ込まれ、この落差にエビぞり必至です。
でも、欄外の作者のコメントにて「これらのホラーは描きたいと思って描きはじめたワケではありません。」と書かれており、ホラーに興味はなかったけれど、編集部からの依頼で描くこととなったとのこと。
だったら、どうしてこんな凄惨なことに…?と思ったら、どうも、アシスタントさんが黒幕の模様です。
推測の域を出ませんが、ホラー(それも、スプラッター)好きな方だったのではないでしょうか?
ともあれ、グロ描写ばかりが取り沙汰されますが、ストーリーも悪くありません。
いじめ、育児放棄、ネグレクト…といった、シリアスなテーマが採り上げられ、特に、「真夜中の訪問者」は今でも似たような事件が起こっておりますので、読後感は重いです。
ただ、あまりにもグロ描写がハジケとんでいて、シリアスなテーマがすっかり霞んでる気が…。
2020年9月27〜29日 10月5・20日 ページ作成・執筆