今井康絵・他「世にも怪奇な七物語」(2008年7月6日初版第1刷・2010年8月20日第7刷発行)
収録作品
・今井康絵「天使の瞳 悪魔の唇」(「ちゃおデラックス2008年春待ち超大増刊号」掲載)
「Scene1 天使の瞳」
小池未央はドッジボールが頭に当たって、脳震盪を起こす。
保健室で目を覚ますと、彼女は皆の「真実の姿」が視えるようになっていた。
いくら口ではきれいごとを言っていても、その心は正視に堪えないモンスター。
未央は先生も友人達も母親でさえも信用できなくなる。
ただ、その中で、クラスメートの春沢という女子にだけはモンスターを飼っていなかった。
ある日、彼女が未央に会いに来るのだが…。
「Scene2 悪魔の唇」
春沢英羅の通う学校は最近、給食がおいしい。
少子化で経営が苦しく、給食室はボロボロなのに、何故?と彼女は訝る。
どんどん給食が豪華になるにつれ、転校生が増えていく。
だが、転校した生徒は実際には引っ越ししていなかった。
英羅は職員室に忍び込み、生徒名簿をチェックすると…。
転校した生徒の共通点とは…?
・かがり淳子「迷宮団地」(「ちゃおデラックス2007年夏の超大増刊号」掲載)
「写真部の少女が文化祭展示用の心霊写真を撮るために「ゆうれい団地」を訪れる。
ここは人が住まなくなって放置された団地で、心霊スポットになっていた。
彼女が写真を撮っていると、物音が聞こえる。
音のする方に向かうと、その団地には住人がいた。
小さな女の子に声をかけられるが、女の子はカメラで写真を撮られることをとても嫌う。
女の子に案内されて、彼女の部屋に行くのだが…」
・みづは梨乃「鏡よ鏡…」(「ちゃおデラックス2007年夏の超大増刊号」掲載)
「前原杞由は内気な少女。
彼女はクラスメートの江草亨に想いを寄せていたが、親しい友人もおらず、両親は仕事で忙しく、誰にも相談できなかった。
ある日、図書館で古びた占いの本を見つける。
その本には、夜中の三時に鏡を覗くと、もう一人の自分に出会えると書かれていた。
一応、試してみると、鏡の中にもう一人の彼女が現れる。
鏡の中の彼女は真由と名乗り、双子の姉として産まれるはずだったと話す。
二人の違いは、杞由が左きき、真由が右ききというだけであった。
真由のアドバイスで、杞由はどんどん可愛くなり、友達もできる。
自信を持った彼女は、真由の勧めもあり、江草亨に告白するのだが…」
・栖川マキ「奇妙な同窓会」(「ちゃおデラックス2006年夏の超大増刊号」掲載)
「逢坂ちなみは二年ぶりにアメリカから日本に帰って来る。
以前住んでいたM市に行った際、彼女は、片思いをしていた緒方汰一に会いたいと思う。
どうやって会うか考えながら、歩いていると、通っていた小学校の前に来る。
夏休みで誰もいないはずだが、校内に緒方の姿があった。
声をかけようとすると、誰かに手首を握られる。
それは友人だったクラスメートで、この日、教室でちなみのクラスの同窓会が行われていたのであった。
懐かしい顔ぶれが揃っていて、ちなみは旧交を温める。
トイレに行った時、彼女はまた緒方を見かけ、呼びかける。
だが、彼は彼女を無視し、彼女は彼を追う。
玄関で彼は彼女を待っていたらしく、彼女に微笑みかけ、手を伸ばすのだが…」
・牧原若菜「ワレナイスイカ」(描き下ろし)
「夏の海。
三人の少女達がスイカ割りをしようとする。
店にスイカを買いに行くと、大きいスイカが何と百円。
早速、このスイカでスイカ割りをしようとするが、何故かうまくいかない。
最後の最後で、誰か間違った指示を出しているみたいであった。
美紗は意地になって、絶対に割ろうとするのだが…」
・姫川きらら「私の描いた天使」(描き下ろし)
「紗耶は絵を描くことが大好きな少女。
だが、そのせいで、いじめっ子三人組に目を付けられるようになる。
ある夜、彼女の枕元に、彼女が描いた天使が現れる。
夢かと思ったが、その絵から天使の姿が消えていた。
以来、いじめっ子達が次々と死んでいく。
しかも、紗耶が絵に描いた通りの死に方であった。
天使の正体とは…?」
・葵みちる「ラブリー様」(描き下ろし)
「渡明宏は女子生徒達の憧れの的。
放課後、ミナ、はるこ、華、正美の四人は「ラブリー様」(ぶっちゃけ、コックリさん)で、彼が好きな人を知ろうとする。
はるこによると、「ラブリー様」は「恋愛の神様」らしい。
まず、ラブリー様の顔を尋ねると、天使ではなく、奇怪な女性の風貌が描き出される。
次に、渡明宏の好きな人を尋ねるが、「みなごろし」と出る。
華は怒って、紙を引き裂き、一人で帰ってしまう。
その夜、ミナのもとに華から電話がかかってくる。
華が「助けてぇ ラブリー様がおいかけてくるっ…」と言った直後に電話が切れ、以後、華は行方不明。
正美が調べたところによると、ラブリー様は恋愛の神様でなく、悪霊で、「失敗すると、ハートを食べに来る」らしい。
正美もまた行方不明となり、ミナもラブリー様を鏡の中に見る。
彼女は「ラブリー様」をやり直そうとするのだが…」
個人的に面白いと思ったのは、牧原若菜先生「ワレナイスイカ」と葵みちる「ラブリー様」。
スイカ・ホラーは、岡本綺堂「西瓜」以来、地味に続いておりますが、その系譜にあたる作品かも…。(かなり大風呂敷な表現)
発想がかなり独特で、毛色の変わった作品として評価しております。
葵みちる「ラブリー様」は、昭和世代にはおなじみの「コックリさん」が平成でも生き延びていたと、ちょっぴり感動いたしました。
ストーリーも面白く、良作だと思います。
2022年4月19日 ページ作成・執筆