牧原若菜・他「呪われた心霊ゲーム」(2008年12月31日初版第1刷・2009年12月30日第5刷発行)

 収録作品

・牧原若菜「わら人形ショッピング」(描きおろし) 「かなと樹(いつき)は幼なじみ同士。
 かなは樹に想いを寄せるが、今までの関係を壊したくないために、言い出せずにいた。
 しかし、宮内清香という少女が二人のクラスに転校してきたことで、関係に変化が訪れる。
 樹は清香に惹かれていき、彼の変化にかなは心乱される。
 そんな時、かなはテレビショッピングで「究極の癒しグッズ」を目にする。
 その中身は実は「わら人形」であり、帰宅後、かなはストレスをわら人形にぶつけていくのだが…」

・栖川マキ「親指の殺意」(「モバフラ2008年8月5日配信号」掲載)
「携帯電話を新調した沙奈。
 だが、その携帯電話で写真を撮った時、被写体の人物の身体が歪んでいると、その部分に何らかのトラブルが起こる。
 しかも、その写真を写メにして転送すると、写真の歪みはひどくなるのであった。
 沙奈は、自分を裏切った恋人とその彼女を写真に撮り、不幸のチェーンメイルとして転送して、復讐するのだが…」

・みずの梨乃「欲しがる人」(「ちゃおデラックス2008年夏の超大増刊号」掲載)
「麻田ミク(13歳)は欲しいものでいっぱい。
 欲しいものをスクラップにして保存するが、ほとんどのものは手に入らず、欲求不満は高ずるばかり。
 ある日、ふと覗いた骨董品屋で、彼女は黒い木箱を手に入れる。
 その箱に欲しいもののスクラップを入れると、実物を手に入れることができ、ミクは今まで欲しかったものを片端から入手する。
 彼女の飽くなき欲望の行きつく先は…?」

・坂本勲「呪い画像」(「モバフラ2008年8月20日配信号」掲載)
「ちひろが受け取った写メールは呪いのメールであった。
 メールに添付された写真は、学校の屋上から飛び降り自殺をする直前の女子生徒を背後から写したもので、一週間以内に誰かに送らないと死んでしまうと言う。
 そのメールを受け取ったことから、ちひろは友人達から孤立。
 また、その写真を他の人間に送っても、今までその写真を受け取った者は皆、不審死を遂げていた。
 一週間の期限が近づく中、怯えるちひろを、ボーイフレンドのリョータは支えようとするが…」

・清水まみ「冷たい教室」(描きおろし)
「教室に宿題を忘れた、萩野なおみは、雪の降る中、学校に戻る。
 休日の学校は無人であるはずが、教室にはクラスメートのこずえがいた。
 こずえは教室でいじめられた仕返しをしていると話す。
 異変を感じた、なおみは教室から逃げ出すのだが…」

・姫川きらら「親友ごっこ」(「ちゃおデラックス2008年夏の超大増刊号」掲載)
「綾峰あんじの引っ越し先の隣には豪邸があった。
 お邸には千代という、あんじと同年齢の少女がおり、彼女は病弱な身故に、家からほとんど出ることがなかった。
 現在は身体がよくはなったが、いまだ引きこもってばかりの千代に、あんじは外の世界に踏み出すよう励まし、彼女の親友になると約束する。
 だが、あんじがいくら言っても、千代は家から外へは出ようとせず、また、あんじが他の友人達と仲良くするのを快く思わない。
 千代に殺されかけた、あんじは千代と縁を切ろうと考えるが、遊びに来るよう電話で懇願され、もう一度、彼女の邸を訪れる。
 千代に案内された地下室で、あんじが目にしたものとは…?」

 個人的に、興味深かったのは、栖川マキ先生の「親指の殺意」と坂本勲先生の「呪い画像」。
 共に携帯電話を扱っており、身近なものとなった携帯電話を既存の怪談にはめ込んで、巧みにリクリエイトしているように思います。(「都市伝説」の観点から見ても、面白いのでは?)
 そして、何と言っても、牧原若菜先生の「わら人形ショッピング」!!(そのスジでは評価の高い作品です。)
 わら人形をテーマにした作品は多々あれど、「わら人形依存症」を扱ったものは史上初なのでは?!
 高度成長期にはストレス解消のため、社員に人形をボコらしていた企業もあったようですが、わら人形もそれと同じだと言われれば、その通りかも。
 ともあれ、「依存症」というものをかなり的確に描写しており、作者の慧眼に唸らされます。(注1)

・注1
 ここでのポイントは「ストレス解消のために藁人形を釘で打つ」ではなく、「藁人形を釘で打つためにストレスを溜める」と本末転倒なことになっているところ。
 そのために、問題の解決は先延ばしにされ、事態は雪だるま式に悪化していくのが、アルコールと同じだと、アル中予備軍のオヤジは思うのでありました。

2018年4月24日 ページ作成・執筆

小学館・リストに戻る

メインページに戻る