藤子・F・不二雄「藤子不二雄少年SF短編集@ ひとりぼっちの宇宙戦争」
(1983年12月25日初版第1刷・1991年1月30日第22刷発行)

 収録作品

・「ひとりぼっちの宇宙戦争」(1975年「週刊少年サンデー37号」掲載)
「鈴木太郎は、空想壁のある、ごくごく普通の少年。
 なのに、彼は、地球とハデス星・間での戦争に巻き込まれ、地球の代表として戦うこととなる。
 彼が戦うのは、彼と全てがそっくりのロボットで、この戦いに彼が負ければ、地球はハデス星の植民地となる。
 午前零時、二人の戦いが始めるが、感情のないロボット相手では分が悪い。
 彼だけにある武器とは…?」

・「コマ―さる」(1975年「こどもの光8月号」掲載)
「ある少年が公園で出会った、奇妙な猿。
 この猿が手にしたものを見ると、どうしても買わずにはいられない。
 この猿を利用して、少年は、知人の売れない漫画家の作品を大手雑誌社の編集に紹介するのだが…」

・「なくな!ゆうれい」(1975年「小学五年生7月号」掲載)
「おチビだが、気丈な少年、洋一。
 彼の父親が古道具屋で買ったカエルの置物には幽霊が宿っていた。
 この幽霊は、洋一にしか見えないが、泣き虫な上に、すっトボけている。
 しかも、恨みを晴らさねば、成仏できないにも関わらず、肝心の敵(かたき)を忘れてしまっていた。
 ただし、幽霊によると、恨む相手の家には、もう一対のカエルの置物があるらしい。
 洋一はふとしたことから、もう一対のカエルの置物を発見するが、その家とは…」

・「未来ドロボウ」(1977年「週刊少年サンデー37号」掲載)
「学は、受験勉強に熱意を燃やしていたのに、家庭の事情で高校進学ができなくなる。
 家をとび出した彼はふとしたことで豪邸へと迷い込む。
 そこの持ち主の老人と話をしているうちに、彼はある契約を老人と結ぶことになるのだが…」

・「四畳半SF旅行」(1979年「マンガ少年12月号」掲載)
「あることに熱中すると、果てしなくのめり込んでしまう少年、母伊浩美(おもい・ひろみ)。
 彼の今度の趣味は、鉄道模型であった。
 離れの小屋で、彼はそのレイアウト(「ジオラマ」のことのようです)をひたすらに作り込む。
 レイアウトがある程度完成すると、今度は、鉄道模型を使って、彼が主役の8ミリ映画を撮ろうと意気込む。
 彼は自分の世界に深く深くもぐりこんでいき、遂には学校を欠席。
 心配したガールフレンドが彼の離れを訪ねると…」

・「恋人製造法」(1979年「週刊少年サンデー春の増刊号第二弾4月25日号」掲載)
「内男は、偶然に、地球に漂流した宇宙人を助ける。
 お礼をしたいと言う宇宙人に、彼は、想いを寄せる少女、毛利麻理と親密になりたいと話す。
 宇宙人が取り出したものは「インスタント・クローニング装置」で、簡単にクローン人間を作ることができる機械であった。
 麻理の髪の毛から、内男は毛利麻理のクローンを作りだす。
 当初、知性は赤ん坊同様であったが、彼女は急速に知識を吸収。
 彼は彼専用の彼女を手に入れるものの、彼女の存在が彼の重荷となっていく…」

 タイトルに「SF」と書かれてますが、藤子・F・不二雄先生の「SF」は「SUKOSHI FUSHIGI(少し不思議)」の頭文字を取ったものです。
 この単行本は少年向けに描かれた「SF」を収録したもので、シリアスなものからユーモラスなものまでバラエティ豊かです。
 個人的なお気に入りは、男のひそかな願望を活写した「恋人製造法」。(あまり深くは語りません…。)
 ちなみに、「ひとりぼっちの宇宙戦争」はフレドリック・ブラウン「闘技場」(注1)、「未来ドロボウ」はH・G・ウェルズ「故・エルヴシャム氏の物語」が下敷きになっております。(でも、単なるコピーに終わっていないのは凄い!)
 あと、「四畳半SF旅行」、ラストが理解できません。誰か教えていただけないでしょうか?

・注1
 「スポンサーから一言」(中村保男・訳/創元推理文庫/1966年3月25日初版)に収録。
 表題作の「スポンサーから一言」は、ラジオから突然流れた一言が意外な結末をもたらす短編で、皮肉が効いてます。

2019年4月24・30日/5月1日 ページ作成・執筆

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