藤子・F・不二雄「藤子不二雄少年SF短編集A ポストの中の明日」
(1984年7月25日初版第1刷・1990年10月30日第14刷発行)
収録作品
・「ポストの中の明日」(1975年「週刊少年サンデー18号」掲載)
「市川少年は、ある日突然、明日を予知をする能力に気付く。
頭がボヤ〜っとした状態で、新聞を見ると、明日の紙面を視ることができるのであった。
しかし、未来を変えようとしても、全ては無駄骨に終わり、予知能力が苦痛になり始める。
そんなある日、彼は、自分と友人達が明日、ハイキングで遭難することを知る。
運命に抗おうとするも、結局、彼らは青木ヶ原樹海に迷い込む。
雨の中、意気消沈した彼がふと空に目をやると、そこに見えたものは…」
・「おれ、夕子」(1976年「週刊少年サンデー4月15日増刊号」掲載)
「クラスメートの夕子の死。
佐藤弘和・少年は、彼女の葬式の翌々日、彼女の父親の家を訪ねて以来、おかしな出来事に幾度も見舞われる。
眠りから覚めると、女物のアクセサリーや衣装を身に付けているのだ。
更に、友人から、夕子の幽霊を見たとの話を聞かされる。
彼は謎を解き明かすべく、決して夜に眠らないよう努めるのだが…」
・「ニューイヤー星調査行」(1976年「マンガ少年2月号」掲載)
「銀河系の辺境にある、ロルカル系第三惑星、ニューイヤー星。
地球型惑星であったが、あまりに辺境にあったため、興味を示されることは全くなかった。
2385年、調査隊の一行がニューイヤー星に降り立つ。
調査隊は、リーダーのバンボルグ博士、その助手の青年、地質学担当のロッシュ博士、イケガミ博士の四人。
バンボルグ博士は、この星が、全ての星の文明の出発点であるとの仮説を立てており、それを証明しようと意気込む。
だが、住民は皆、原始的な状態で、攻撃性はないが、質問しても、知らない、わからないの一点張り。
あらゆる方面から調査するものの、成果は上がらず、五か月が経つ。
しかし、鍾乳洞で、石筍化した深眠者(ディープ・スリーパー)を見つけたことから、調査は急展開を迎えるかと思えたのだが…」
・「世界名作童話」(1975年「小学四年生12月号」掲載)
「1巻 みにくいアヒルの子」
「2巻 ねむれる森の美女」
「3巻 うらしま太郎」
「4巻 ヘンゼルとグレーテル」
「5巻 ジャックと豆の木」
名作童話のパロディーです。
・「流血鬼」(1978年「週刊少年サンデー52号」掲載)
「バルカン諸国に端を発する、リチャード・マチスン病。
それは、急激に体温が下がり、脈拍や呼吸が乱れ、そのまま、亡くなってしまう奇病で、更に、死後、吸血鬼として蘇るのであった。
病気が全世界に蔓延する中、生き残った少年とその友人は、秘密の洞窟に隠れ住む。
だが、食料探しに出かけた際、友人は吸血鬼達に捕まってしまう。
遂に一人になった少年が洞窟に戻ると、そこには、吸血鬼と化した、彼のガールフレンドが待っていた…」
・「ふたりぼっち」(1979年「週刊少年サンデー1月25日増刊号」掲載)
「SF漫画家志望の少年、健二。
ある日、彼の部屋に次元の狭間が開き、パラレルワールドにいる、もう一人の自分と出会う。
以来、二人は互いの世界を行き来するようになり、宿題や、取り組んでいる漫画について協力し合う。
最初は、お互い腹蔵なく本音が打ち明ける相手を思っていたが、やがて互いにライバル心を持つようになる。
同時に、二人の住む世界の齟齬が次第に大きくなり始め…」
とりあえず、言いたいことは、「流血鬼」、最高です!!
作中にも「リチャード・マチスン病」と出ている通り、元ネタはマティスンの名作「地球最後の男」(1954年/注1)。
基本的な設定やストーリーはほぼ同一ですが、あえて言いましょう、「原作を超えた!!」と。
原作の長編小説をうまく短編にアレンジしただけでなく、結末の鮮やかさには目を瞠ります。
また、思春期の少年の不安定な心理を通して、吸血鬼の持つ、エロティックなイメージが描かれている点も特筆に値すると思います(が、かなり個人の好みが反映された意見です)(注2)。
・注1
wikipediaによると、「地球最後の男」は三度、映画化されており、「地球最後の男」(1964年)、「地球最後の男オメガマン」(1971年)、「アイ・アム・レジェンド」(2007年)の三作。
特に、ヴィンセント・プライス・主演の「地球最後の男」(1964年)は「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(1968年)に影響を与えたことでも重要です。
・注2
吸血鬼の少女の胸に杭を向けたり、少女を縄で縛ったりするシーンは、エロスだと私は感じております。
もちろん、吸血シーンは全てが完璧です。(このシーンにモヤモヤした小中学生男子は絶対に多いはず!)
2019年5月6・7・10日 ページ作成・執筆