中嶋ゆか・他「まだ誰も知らないこわい話」(2017年6月5日初版第1刷発行)

 収録作品

・中嶋ゆか「ヒトシズク」
「一ツ橋祈(13歳)は、幼い頃、父親を事故で亡くし、母子家庭であった。
 最近、彼女の近所では、女性を狙う通り魔事件が頻発する。
 被害者は極度の失血状態で、首には噛み傷のようなものがあることから「吸血鬼事件」と呼ばれる。
 ある日、母親が過労で倒れ、入院することとなる。
 病院からの帰ると、家の前あたりで、少年が倒れそうになるのを目にする。
 少年は肌も髪も透き通るように真っ白で、外国人のようであった。
 祈は彼を家で休ませるが、彼は「ホタル」と名乗っただけで、他のことは教えようとはしない。
 また、彼はやることなすこと、とんちんかんで、人間の生活に慣れていないようであった。
 世話をするうちに、お互い寂しい身であることがわかり、彼女は彼が元気になるまで家にいさせる。
 その間にも、「吸血鬼事件」の被害者が出る。
 被害女性によると、犯人は「肌も髪も幽霊みたいに透き通って白かった」らしい。
 祈はホタルが犯人とかすかに疑うが、とても信じられない。
 だが、その夜、ホタルは祈に内緒で家を出る。
 祈がその後を追うと…」

・環方このみ「眠りの森の美女」
「ある国に生まれたお姫様。
 だが、一人の魔女が、15歳の誕生日に、糸車の針に刺され、眠りに就くと不吉な呪いをかける。
 王様は呪いを心配し、姫が小さい頃から大切に守る。
 ある時、彼は姫に「お前を傷つけるものなど、悪魔だと思っているぐらいでちょうどいい」と話す。
 その言葉を真に受けた姫は、自分を傷つけたものを「悪魔」とみなし、退治していく…」

・辻永ひつじ「レッドナース」
「中学三年生の及川咲は花を愛する、気弱な少女。
 彼女の前に、ヒメカと名乗る、ナース姿の少女が現れ、「愛の献血」をお願いする。
 ヒメカが求めているのは、「ピュアな女の子の血」であった。
 咲はためらうも、キレイな血をくれたら、その代わりに、容姿を美しくすると言われ、決心する。
 ヒメカの言葉に偽りはなく、献血後に咲は可愛くなり、憧れの優斗からデートに誘われる。
 これに我慢ならないのが、学校一の美人でタカビ〜の奈々。
 彼女は咲の悪い噂を流すも、突如、行方不明になる。
 学校一の美人となった咲は、奈々のポジションを奪い、好き放題に振舞うのだが…」

・小倉あすか「美しい顔」
「城田智雪はとても美人であったが、本人はこの顔がきらいであった。
 美人であるが故に、嫉妬も激しく、嫌がらせは日常茶飯事。
 更には、何者かからのストーカー行為も受けていた。
 そんな彼女を、友人の木崎凛と男子生徒の林原が支えてくれる。
 ある日、智雪の上に屋上から植木鉢が落ちてきて、林原に助けられる。
 このことを智雪は凜に話すと、凛は彼と付き合えばと言う。
 智雪にとって彼は友達に過ぎず、凛はどうなの?と話を振ると…」

・小室栄子「悪魔チャンネル」
「杏奈とたまきは、金を稼ぐべく、投稿できる動画サイトを探す。
 二人とも未成年なので、基本、収益を手に入れることができないが、ただ一つ、「悪魔チャンネル」というサイトだけは年齢無制限であった。
 どうやらオカルト系の動画サイトらしく、視聴者の数は見込める模様。
 二人はアカウント登録をし、オカルト系動画を撮り始める。
 第一弾は、心霊スポットして有名なトンネルの中で「こっくりさん」をするというものであった。
 スマホの接続が途中で切れていたものの、初配信にもかかわらず、動画は大反響。
 更に、動画の収益金とランキング一位の賞金が現金書留で送られてくるが、数十万円という大金であった。
 杏奈は味をしめ、もっと過激な動画を配信しようとするのだが…」

・福永まこ「私のボーダー」
「横嶋亜衣は気弱な小学生の女の子。
 彼女はいつも雄太という男の子にいじめられていたが、彼はいつも白黒のボーダーシャツを着て、「ボーダー・ジャイアン」と呼ばれていた。
 ある日、兄が亜衣に「週刊シマシマ」というムック本をプレゼントする。
 ボーダーは元気になるらしいという理由からであった。
 この本にはボーダー柄バレッタが付録で付いていて、亜衣は学校に付けていく。
 早速、雄太に取り上げられるものの、彼女は勇気を出して、彼からバレッタを取り返す。
 皆も彼女を援護してくれて、雄太は亜衣に何もせずに、その場を立ち去る。
 これをきっかけに、亜衣はボーダーの効果で性格が変わると信じ込み、身の回りをどんどんボーダー柄で固めていくのだが…」

・あずき友里「かわいいペット」
「向井千都世(中学一年生)はおとなしめの女の子。
 彼女のクラスには池森といういじめられっ子がいたが、誰もが見て向ぬふりをしていた。
 ある日の下校途中、千都世は公園で池森が木に縛り付けられ、サッカーボールを当てられているのを目にする。
 彼と目があったものの、すぐにそらしてしまい、何もせずにその場を立ち去る。
 その後、池森は自殺。
 罪悪感に苛まされる千都世は愛犬の小次郎に「今からでも私が責任取れるなら取りたい」と言う。
 その後、彼女の周囲で人面犬の噂が立ち始めるのだが…」

・牧原若菜「カチカチ山」
「有名な昔話の「カチカチ山」。
 後半、タヌキはウサギにいろいろとひどい目にあわされるが、その本当の理由とは…?」

 まあまあ面白い作品が多めの単行本だと思います。
 「動画配信」をテーマにした小室栄子先生「悪魔チャンネル」が、今時の話題をうまく取り入れて、興味深くあります。
 あずき友里先生「かわいいペット」は「人面犬」を扱い、この古臭さと悪趣味さが「昭和のホラー」を彷彿させます。
 福永まこ先生「私のボーダー」はほとほどヘンな話です…。

2022年8月13日 ページ作成・執筆

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