坂元勲・他「いちばんこわい学校の怪談」(2016年6月6日初版第1刷発行)

 収録作品

・坂元勲「創立記念日」(「ちゃおデラックスホラー」2016年3月号増刊)
「明日は学校の創立記念日。
 学校も部活も休みで、先生からは教室には絶対入らないように言われる。
 だが、ほのかはスマホを教室に忘れ、創立記念日の朝、学校に取りに行く。
 すると、教室の前で、クラスメートの松井が、忘れ物を取りに教室に入ろうとして、先生と揉めていた。
 二人が去った後、ほのかは教室に入る。
 スマホを回収して、出ようとすると、友人達がドアの前に立っている。
 奇妙なことに、彼らは冬服であった。
 友人達によると、立入禁止なのは彼らの教室だけで、窓の外を見ると、他のクラスの生徒達は普通に部活をしていた。
 更に、友人達は教室で暴れ、破壊し始める。
 「今日だけは何をやってもいい」らしいのだが…。
 この教室の秘密とは…?」

・今井康江「龍刃池に花が咲くとき」(「ちゃおデラックスホラー」2015年7月号増刊)
「森に囲まれた、全寮制の女学校。
 そこには様々な才能に長けた、個性的な少女が家族のように生活していた。
 ある日、大神るい(13歳/中学一年生)の部屋に、親友の北森美穂がやって来る。
 北森美穂は多彩の才能を持つ、学園一の美少女であった。
 だが、彼女は昨晩、ピアノの練習の帰りに、何者かに刃物で襲われ、顔に傷を負わされ、顔に包帯を巻いていた。
 美穂は、犯人は学園内にいると話し、混乱を避けるため、るいに犯人捜しをお願いする。
 るいは美穂とトラブルがあった少女達に目を付けるが、彼女達は次々と災難に見舞われていく。
 その最中、クラスメートの一人が「龍刃池の呪い」を口に出す。
 龍刃池は学園の近くにある池で、昔、火を吐く龍が棲んでいたが、美しい姫様が龍と一緒に池に沈み、村は平和になったという伝説が語り継がれてきた。
 しかし、実際のところは、村で一番美しい娘をいけにえとして池に沈めたらしく、以来、二十年ごとに少女の祟りで「龍刃池に花が咲くとき、災いが起きる」とも言われる。
 るいは気になり、龍刃池について調べると、ちょうど二十年前、少女の行方不明事件が起きていた…」

・小室栄子「転落教室」(「ちゃおデラックスホラー」2016年3月号増刊)
「ある小学校の六年生クラス。
 午後の授業の最中、校舎の屋上から一人の男がとび降り自殺をする。
 黒板で問題を解いていた桐山沙栄以外のクラスメート達がその光景を目の当たりにして、教室はパニックとなる。
 翌日、沙栄が教室に入ると、窓はカーテンで厚く覆われていた。
 また、担任の黒咲先生もいつもと違い、廊下で沙栄は彼がナイフを所持しているのを目にする。
 しかも、黒咲先生の目は二重にぶれており、彼女の指の血を嘗めて、おいしいと言う。
 沙栄は早退して、家に帰ると、姉が、先日のとび降り自殺のニュースをネットで見ていた。
 ニュースによると、とび降り自殺した男は、悪魔にとり憑かれていたというのだが…」

・七瀬れい「嘆きの肖像」(「ちゃおデラックスホラー」2015年7月号増刊)
「美術室には「呪いの肖像画」があるという噂があった。
 その絵は、昔、友達ができなくて自殺した少女の自画像で、その絵と目が合うと呪われるという。
 ある日、陽香と夏弥は美術準備室でその話をする。
 陽香は、夏弥と出会う前は一人ぼっちで、自殺した少女に同情する。
 その時、物音がして、見ると棚の裏に絵が落ちていた。
 その絵は卒業生のものらしい、古びた肖像画で、絵の少女はとても寂しそうに見える。
 とりあえず、絵を棚に立てかけ、陽香は準備室を後にする。
 だが、以来、彼女に何者かがつきまとうようになり…」

・真己京子「こい・けし」(「ちゃおデラックスホラー」2016年3月号増刊)
「高校一年生の美咲めいは、ミカという女子生徒からいじめを受ける。
 その理由は、彼女が、女子一番人気の瑛多と仲が良いからであった。
 そんなある日、めいは「こい・けし」というアプリを知る。
 このアプリは、消したい恋敵の名前を送信すると、アプリ利用者同士が協力して、その恋敵を消してくれるというものであった。
 めいは「こい・けし」に心が動くも、やはり、踏ん切りがつかない。
 しかし、瑛多に告白された後、あまりにも身勝手なミカの行動にキレて、遂にめいはアプリを利用してしまう。
 直後、ミカは学校の屋上から転落死する。
 そして、めいの手の甲にはハート型の絵がいつの間にか刷り込まれていた。
 これはアプリ利用者の証で、彼女も他の人の恋敵を消さなければならなくなる…」

・なぎり京「真っ赤なランドセル」(「ちゃおデラックスホラー」2016年3月号増刊)
「小学六年生の坂下葵は、まわりの女の子達がオシャレなリュックなのに、自分だけランドセルで恥ずかしい。
 母親に言っても聞く耳を持たず、葵は下校途中、ランドセルを高所から落として壊す。
 これで新しいリュックを買ってもらったものの、母親はランドセルを修理に出し、葵のもとに戻って来る。
 葵がランドセルに八つ当たりをすると、ランドセルの中から手が伸びて、彼女の手を掴む。
 気味悪く思い、ランドセルを押し入れに入れるが、翌朝、押し入れがめちゃくちゃに荒らされていた。
 そして、机の上には、ランドセルを胸に抱いた少女の姿が…」

・なかむらさとみ「いつでも一緒」(「ちゃおデラックスホラー」2016年3月号増刊)
「第一中学校二年生の岡野玲花には、幼い頃から仲良しの丸山静奈といつも一緒であった。
 しかし、三か月前、彼女が引っ越してから、今まで他に友達がいなかったせいで、一人になってしまう。
 ある日、彼女は、高野理央のグループにカラオケに誘われる。
 その時、静奈から着信があるが、それに対して理央は顔色を変える。
 また、カラオケで、玲花が静奈の物真似をしようとしたところ、急に場の雰囲気が険悪になる。
 帰宅後、玲花が着信を見ると、静奈から数分おきにかかってきていた。
 電話で、玲花は静奈に理央達のグループに入ったことを告げ、静奈に関わらないよう言う。
 その翌日、校門で静奈が玲花の登校を待っていた。
 このままでは理央達に嫌われると、玲花は静奈と絶交するのだが…」

・福永まこ「僕の棲む残酷な世界で」(「ちゃおデラックスホラー」2016年3月号増刊)
「有須高校。
 二年生の矢之貴佑(やのき・たすく)はスクールカーストの最底辺、すなわち、いじめられっ子であった。
 ある日、ひどいいじめにあい、彼が学校から逃げ出すが、轢き逃げにあう。
 薄れゆく意識の中、生まれかわったら人生をやりなおしたいと考えていると、見知らぬ少女が現れ、「どうやりなおしたいの?」と尋ねてくる。
 彼は「強くなりたい」と答えると、彼女は「その言葉を忘れないで」と言い、彼の手の指にキスをする。
 気が付くと、少女の姿はなく、彼は軽傷で済んでいた。
 翌日、彼のクラスに昨日の少女が転校してくる。
 彼女の名は木崎莉亜(きさき・りあ)。
 クラスの男子達は彼女に夢中になるが、彼女が関心を持ったのは佑であった。
 いじめっ子達はそれが気に入らず、佑に絡むが、佑は逆にいじめっ子達をボコボコにする。
 彼女にもっと好きになってもらうため、彼は剣道部に入り、瞬く間に、部長に次ぐ位置を得る。
 しかし、莉亜は強い男の子が好きで、龍堂主将しか目に入っていない。
 彼女を賭け、佑は龍堂主将に挑むのだが…」

 特筆すべきは、やはり、坂元勲先生「創立記念日」。強烈なバッド・エンドには背筋に戦慄が走ります。(ただし、校庭で部活している生徒達の描写は内容と矛盾していて、そこが残念。)
 他にも、小室栄子先生「転落教室」、真己京子先生のダークな「こい・けし」、「ランドセル・ホラー」のなぎり京先生「真っ赤なランドセル」は独特の味わいがあります。

2023年1月5日/2月1日 ページ作成・執筆

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