五十嵐かおる・他「悪夢の館へようこそ」
(2005年8月5日初版第1刷・2010年8月20日第18刷発行)
収録作品
・五十嵐かおる「三人目はあなた」
「夏休み、彩と両親は、別荘を一週間、レンタルする。
そこのクローゼットの中には、きれいな女性を描いた絵がたくさんあった。
中の一枚は、女性を後ろ向きに描いたのか、黒髪しか描かれておらず、非常に気持ちが悪い。
彩は絵をクローゼットに片付けるが、その後ろ向きの絵だけが何故か、踊り場に飾られる。
最初は父親のいたずらかと思うものの、同じことが繰り返され、しかも、ここでは以前、子供が二人、行方不明になっているという。
一家は絵を倉庫に片付けるが、その翌日、外出した両親が雨で別荘に帰れなくなり…」
・かがり淳子「親切なクラスメート」(「ちゃおデラックス2004年8月25日号」掲載)
「夏休み直前に転校したササキマナミ。
学校にちゃんとなじめるか不安に思う彼女を、一人のクラスメートが手取り足取り、親切に教えてくれる。
そのクラスメートは「あさの」という名で、マナミが困った時には、どこからともなく現れる。
だが、クラスメート達はあさのの名を聞くと、不審な態度をとる。
更に、あさのは親切なことは親切だが、非常に押しつけがましい。
翌日、マナミは他のクラスメート達と話すきっかけを掴み、仲良くなる。
そして、あさのについて意外な事実を知るのだが…」
・清水真澄「闇からの呼び声」(「ちゃおデラックス2004年8月25日号」掲載)
「北村千里は、小学校二年の時の同級生だった沙織の幽霊にずっと付きまとわれていた。
ことの起こりは、六年前、彼女が海辺の町に住んでいた時のこと。
彼女の同級生の沙織は身体が弱く、千里がお姉さん代わりであった。
千里は、四歳年上のいとこ、祥悟に憧れていたが、沙織が何かにつけて彼を独占する。
ある日、沙織が、祥悟にもらったという人形を自慢し、千里は頭に血が昇る。
彼女は沙織から人形を奪おうとするが、争ううちに、二人は崖から海に転落。
沙織の死体は上がらず、以来、沙織の幽霊は、千里に人形を一緒に捜してと訴え続けているのであった。
中学二年の夏休み、祥悟が、予備校に通うために、彼女の家に滞在することとなる。
沙織の幽霊は祥悟にもまとわりつき、千里は気が気でない。
彼女を意を決して、彼に全てを打ち明けるのだが…」
・牧原若菜「宿借りの女」
「市井あゆみ(16歳)はボーイフレンドの健介と共に離れ小島に日帰りで訪れる。
だが、遊びほうけているうちに船の最終便が出てしまい、更に、宿はどこも満室。
ようやく一軒だけ見つけた旅館は、不気味な外観とは裏腹に、宿の支配人夫婦は礼儀正しく、全く普通。
しかし、あゆみは気味悪さをどうしても拭えず、胸騒ぎを抑えることができない。
そんな時、あゆみは女将が口からヤドカリを出して、食べ物を貪っているところを目撃する…」
・北村有香「あの日の約束」(「ちゃおデラックス2004年8月25日号」掲載)
「河野りん(14歳)は五年ぶりに町に戻って来て、仲良しだった四人と再会する。
ある日、彼らはよく遊んでいた森にやって来る。
この森の奥の洋館には「お姉ちゃん」が住んでいて、彼らと仲良しだった。
お姉ちゃんと知り合ったきっかけは、りんが時計を捜して欲しいと頼まれたことで、その時計は航平が見つけ出す。
だが、そのデジタル時計は、16年前の日付のまま、止まっていた。
その森で、りんはお姉ちゃんに再会する。彼女は五年前と全く変わっていなかった。
お姉ちゃんは自分のことは皆には言わないよう頼み、明日、森の秘密基地で会う約束をする。
翌日、りんは航平を誘い、お姉ちゃんに会いに行く。
しかし、お姉ちゃんは航平のことが邪魔なようで、彼への殺意さえ感じられる。
お姉ちゃんの目的とは…?」
・河村じゅん「君の、のぞむ世界」(「ちゃおデラックス2004年8月25日号」掲載)
「藤木真咲は、思いとは裏腹に、素直な気持ちを表せない少女。
小学校から付き合いのある沙織はそんな彼女をフォローしてくれたが、あることがきっかけに、沙織との仲にひびが入る。
自己嫌悪に苛まされながら、歩いていると、どこからか鈴の音がする。
その方向に向かうと、草むらの中に神社があり、鳥居の向こうには、首に鈴をつけた日本人形が置かれていた。
真咲が帰ろうとした時、橋田という男子生徒に腕を掴まれる。
彼は、彼女と同じくクラスでは浮いた存在で、行方不明になっていた。
彼は、真咲の望む世界に連れて行ってあげると、彼女の腕を引っぱって、鳥居をくぐる。
すると、神社はなく、そこは近所の商店街で、人々は皆、彼女の思い通りであった。
真咲は「ありがとう」も「ごめんなさい」も必要ない世界を満喫するのだが…」
2021年2月9日 ページ作成・執筆