青木たかお「世にも奇怪な物語 XゾーンC」(2010年9月1日初版第1刷発行)
Xゾーン。
そこは、現実と闇の世界をただよう、恐怖の空間。
そこに迷い込んだ者の運命は…?
・「赤い実の怪」
「夏休みを田舎で過ごした、ケンタとケンジの兄弟。
東京に帰る日、二人は犬を連れて、お化けの噂のある山に探検に出かける。
しかし、登山中のカップルに出会っただけで、何の気配もない。
兄弟が疲れ果てた頃、藪の中から先程のカップルの女性の方がミイラのような姿になって現れる。
彼らは必死の思いで逃げ、気が付くと、中央に大樹のある草原に出ていた。
大樹には甘い香りを放つ、赤い実が二つ付いているが…」
・「リセットの怪」
「安田カズキは、教室の窓ガラスを割って、反省文を書かされていた。
その最中、彼は、Xゾーンの案内役から「リセットボタン」を貸してもらう。
リセットボタンとは「好きな時間に戻ってやりなおしができる」というもので、使っていいのは一度だけであった。
試しに使ってみると、ガラスを割る前に時間が逆戻りして、彼は先生に怒られずに済む。
だが、家に帰ると、愛犬が車に轢かれて瀕死の状態。
カズキは一度きりという約束を破り、リセットボタンで愛犬を救う。
二回使っても、特にペナルティーはなく、カズキはリセットボタンを濫用するようになるが…」
・「白い森の怪」
「父親と一緒にスキーに来た良太は、雪山で老人から「雪鬼」の話を聞く。
雪鬼は冬になると山から降りてきて、森に迷い込んだ人を凍らせて食べるバケモノらしい。
良太はその話を一笑にふすが、老人の姿はいつの間にか消えていた。
帰り道、良太と父親の乗る車は、とび出した鹿をよけた際にスリップし、事故を起こす。
父親が救助を呼びに行く間、良太は車で待機することになるが、奇妙な唸り声が近くで聞こえてくる。
気になって見に行くと、カチカチに凍り付いた鹿の死体があった。
そして、物音のする方向には、老人の話した雪鬼の姿が…」
・「ヨジンベの怪」
「小学生の小山は、家ではウンコをするが、学校ではしないと友人達に約束する。
その夜、彼は、学校でウンコをするという夢を見る。
すると、夢の中に、妖怪ヨジンベが現れ、彼に「ウンコの呪い」をかける。
以来、彼がトイレに行くと、便器の中から巨大な舌が出てきて、お尻をなめるので、排便できなくなる。
家に限らず、どこの便所も、野外すらアウトで、彼のお腹は二週間たまったブツでパンパンになる。
彼はどうにかしてヨジンベの呪いを解こうとするが…」
・「黒いダルマの怪」
「受験に合格したお礼に神社にダルマを納めに来たオサムと弟の修二。
修二は神社の隅にボロい小屋を見つけ、壁の穴から黒いダルマを引っ張り出す。
そのダルマは顔の部分に封印の紙が貼られており、修二が紙を剥がそうとした時、宮司に怒られ、二人は逃走。
だが、オサムは携帯電話を落としてしまい、夜更け、神社に捜しに来る。
すると、例の小屋の扉が開いており、中では宮司が黒ダルマに埋もれていた。
二人が宮司を引っ張り出すと、宮司の顔はのっぺらぼうで、黒ダルマに顔を奪われていた。
宮司の顔をした黒ダルマは手足を生やし、更に顔を奪おうと兄弟に襲いかかる…」
・「読書の怪」
「谷村という少年は、読書感想文のための本を探していた。
彼は、Xゾーンの案内役から、とても面白いらしい本を借りる。
ただし、この本は彼のコレクションであり、貸す際に三つの条件があった。
一つ目は、この本を誰にも触らせないこと。
二つ目は、本の内容を誰にも話さないこと。
三つめは、どんなことがあっても最後まで読み通すこと。
その条件を承諾し、彼は本を読み始めると、すぐに夢中になる。
この本に書かれているのは「不思議な世界に迷い込んだ主人公が、数かずの恐怖体験をしていく物語」であった…」
・「最終話 終わりの始まりの怪」
「Xゾーンの案内役の青年(少年?)。
彼は自分のコレクション・ルームを見せ、彼が何故、奇怪な物語を集めているのかという理由を聞かせる代わりに、とっておきの世にも奇怪な物語を語り始める。
とある時代のとある場所、一人の男が、美しい妻と可愛い子供達に囲まれて、幸せに暮らしていた。
平穏な生活に飽き足らず、男は、家族に宝物を約束して、旅に出るのだが…」
(「別冊コロコロコミック」2009年10月号〜2010年8月号掲載)
コロコロ・コミックの隠れたトラウマ・ホラーの逸品「世にも奇怪な物語 Xゾーン」の最終巻です。(偶数月のみの連載ですが、約四年間、続いてます。ヒット作だったのでは?)
当初は「学校の怪談」や「都市伝説」をテーマにしたものが多かったのですが、この巻ではヘビーなモンスターものがメインです。
特に、「赤い実の怪」「黒いダルマの怪」は子供向けにしては強烈で、また、この中途半端な終わり方が、多くのチビっ子にトラウマを植え付けたはずです。
でも、まあ、個人的に一番怖いのは「ヨジンベの呪い」ですがね…。ラストもサイアクです。(詳しくは、コミックを読んでください。)
そして、最終話で、Xゾーンの案内役の過去と正体が明かされ、物語は完結します。
この物語のまとめ方はベテランらしく巧みで、様々な怪談を一つの世界観で統一させることに成功しているように思います。
「ミステリーゾーン」タイプの怪奇マンガとしては、まずまずの成功作ではないでしょうか。
2018年7月27日/8月6日・7日 ページ作成・執筆