宮脇明子「ブラディ・ローズ ―血のバラ―」(1983年2月25日第1刷・1984年11月25日第3刷発行)

 収録作品

・「ブラディ・ローズ ―血のバラ―」
「リナはしがないバニーガール。
 だけど、恋人のエディはローリングス・コンツェルンの御曹司。
 エディは、母親を説得すると置手紙を残し、リナのもとから連れ去られて以降、音信不通となる。
 二か月後、リナの妊娠が判明。
 リナは一人で育てる決心を固めるが、そんな彼女の前に、エディの弟、フレディが現れる。
 彼は、エディは、連れ戻された日に、二階のベランダから転落死した旨、リナに伝える。
 呆然自失の態のリナは、エディの父親に引き合わされ、赤ん坊を産むまで面倒を見ると伝えられる。
 彼女はその間、エディの母親の邸で過ごすこととなる。
 ローリングス夫人は何かと言うとエディのことばかり話し、リナに対しては冷淡であった。
 そして、エディの部屋は彼の死以来、固く閉ざされていた。
 その部屋の窓からエディの後髪を見たと思ったリナは、彼がまだ生きているのではないかと考える…」

・「ひき裂かれたカルテ」
「高岡霞は大きな病院の一人娘。
 成績優秀でゆくゆくは病院を継ぐ身。
 だけど、常に優等生でいるのも疲れるもので、たまには不良娘としてクラブで息抜きが必要。
 ある夜、ふとしたことから盗んだバイクで走り出した霞は、山中の道で、乳児を抱いた女性を撥ねてしまう。
 瀕死の母親は重傷を負った乳児を病院に運ぶよう霞に頼むが、彼女は発覚を恐れ、母子を見捨てて、走り去る。
 翌日のニュースで、母子ともに死んだことが報じられる。
 以来、霞の周辺では奇怪なことが続発。
 更に、事故死した母子が入っていた17号室で産まれた赤ん坊は、死んだ赤ん坊の生まれ変わりでないかという噂が立つ。
 産まれた赤ん坊には、死んだ赤ん坊と同じく、手の甲に青いアザがあるのだった。
 霞は確認するために、17号室に向かうのだが…」

・「死者の棲む館」
「ソニアは鉄道でラヴァンジュ館に向かう。
 マルトおばから従妹のロザリーンの家庭教師を依頼されたためであった。
 久しぶりに訪れるラヴァンジュ館は陰鬱で、館も人も皆、暗い影を宿していた。
 館の住人は、ラヴァンジュ氏の息子、ピエールとその妻マルト、そして、ラヴァンジュ氏の娘、ロザリーン。
 館の主人のラヴァンジュ氏は、コレットとジャニーヌが死んでから、離れ屋敷に一人住み、メイド頭の女性以外は一切近づけなかった。
 コレットは、ラヴァンジュ氏が妻として突然連れてきた、娘ほども年の離れた女性であり、ジャニーヌは彼らの間の娘であった。
 ラヴァンジュ氏はジャニーヌに全ての財産を与える予定であったが、晩秋、コレットとジャニーヌは湖で溺死する。
 そして、ラヴァンジュ氏はいまだジャニーヌの死を信じられず、彼女が生きているように振る舞う。
 更に、ロザリーンはしばしばジャニーヌの亡霊を目撃していた。
 そのために、彼女はたびたびヒステリーを起こし、健康まで損なうようになっていた。
 ソニアは全てはこの邸のせいと、ロザリーンを支えようと決意する。
 そんな中、アルベルト・ギュンターという青年が邸を訪れる。
 彼とは、ソニアがラヴァンジュ館に向かう電車の中で知り合っていた。
 彼はロザリーンと大の仲良しになるが、彼の思惑とは…?
 そして、ジャニーヌの亡霊は本当に出るのであろうか…?」

 「ブラディ・ローズ ―血のバラ―」は、ネタばれとなりますが、「サイコ」です。
 後半、広大な邸での、サイコなローリングス夫人との命を賭けたかくれんぼとなり、ちゃんとアレンジしているところに好感を持ちます。
 「ひき裂かれたカルテ」はこの単行本で最も面白いと思います。
 かなりグロく、ラストもヘビー。好きです、こういう作品。
 「死者の棲む館」は個人的には物足りなく感じました。
 短編で扱うには、ちと無理がある内容だったかも…。

2017年8月11日 ページ作成・執筆

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