山岸凉子「鏡よ鏡…」(1990年5月20日第1刷発行)

 収録作品

・「千引きの石」(1984年「ぶ〜け」9月号)
「両親の離婚を機に、東京からN市へ引っ越してきた水谷可南子(中学二年生)。
 転校初日に寝坊して、ちゃんと紹介されなかったことが祟って、クラスにうまく溶け込めないまま。
 そんな彼女が親しくなったのは、隣席の西町(イケメンだけど、無神経)とクラス委員長の榊(由緒ある神社の息子で、秀才)の凸凹コンビ。
 ある日、家庭科の宿題で、帰りが遅くなった彼女は、校舎の外れにある古い体育館を覗いてみる。
 彼女は、次の体育の授業のために、跳び箱の練習をしようと考えていた。
 体育館は鍵が壊れていて、扉を開けると、果てしなく下へと続く階段があり、底からどす黒い気が立ち昇る。
 その光景は一瞬だけで彼女は自身が見間違えたものと思い、中に入ろうとした時、西町と榊に声をかけられる。
 二人と一緒に帰ろうとした時、可南子は、体育館に、家庭科の宿題を忘れたことに気付く。
 榊と共に、体育館に戻るが、彼女がそこで見たものとは…?」

・「鏡よ鏡…」(「星の運行」改題/1986年「ぶ〜け」10月号)
「羽深緋鶴(うぶか・ひづる/34歳)は最も美しく、最も脂がのり切っていると評価される女優。
 彼女には、付き人、マネージャー、ヘアデザイナーといった七人の恋人にかしずかれ、本物の女王様のよう。
 だが、彼女の娘、雪は、母親から受け継いだのは、白い肌だけで、まんまる太った女の子。
 中学校では、子豚ちゃんと呼ばれ、いじめにあうが、母親に憧れて、立ち居振る舞いだけは真似るも、全く逆効果。
 雪は、母親のそばにいたいと願うが、母親は彼女に対して徹底的に無視し、かけるのは冷たい言葉ばかり。
 ある夜、雪は、母親が全裸で鏡の中の自分を見つめているところを目にする。
 その眼はとても恐ろしく、あらゆる角度から自分の身体をチェックしていた。
 ある日、母親に八人目の恋人ができる。
 それは、映画会社をはじめ、幾つもの企業を動かす大人物で、恰幅のいい初老の男性であった。
 しかも、彼は、母親の最初の恋人だったらしい。
 彼と偶然に出会ったことから、雪の運命は大きく変わっていく。
 母親が鏡の中に見出そうとしていたものとは…?」

・「蛇比礼(へみのひれ)」(1985年「ぶーけ」9月号掲載)
「ブティックのオーナーの女性のもとに、八年前に妹が産んだ女の子、相馬虹子がやって来る。
 北海道へ開拓団として入植した妹は分娩後、亡くなり、父親は産まれたばかりの赤ん坊と共に失踪。
 赤ん坊は死んだものと思われていたが、父親の死後、虹子を引き取ってほしいと役所から通知が来たのであった。
 虹子は八歳の少女には似つかぬ色気を持ち、その家の一人息子、達也は彼女が気になって仕方がない。
 そして、切れ長の一重の目、赤い口唇、白く細い喉…彼女の全てが彼の強迫観念となり、彼の存在を飲み込んでいく…」

・イラストエッセイ「わたしはこうして着物の海にオボれた」

 山岸凉子先生のオカルトものは、禍々しさ、生々しさの点でずば抜けていると思っておりますが、「千引きの石」はイマイチな感じです。
 後ろの袖に「作者から」という文章が掲載されており、
「「千引きの石」のようなオカルト的作品はしばらくひかえようと思っています。最近、少し身の危険を感じて…。」
 とありますので、いろいろとあったのかも…。
 「鏡よ鏡…」は、男の私には到底、女の業は理解できません…。

2020年10月4日 ページ作成・執筆

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