あつたゆりこ
「悪霊夢〈ナイトメア〉@」(1986年6月30日第1刷・1987年1月25日第4刷発行)
「悪霊夢〈ナイトメア〉A」(1986年7月30日第1刷・1987年1月25日第4刷発行)

 収録作品

・「悪霊夢〈ナイトメア〉」(「週刊マーガレット」昭和60年40号〜昭和61年8月号に連載)
「松井里奈は、映画好きの女子学生。
 今日もボーイフレンドの遠野達郎とレンタルビデオ店でデートをする。
 その夜、借りてきたビデオを観るが、そのビデオは借りてきた映画のビデオではなかった。
 その内容は、画面に、椅子に座った、美しい女性が現れ、女性が話しているうちに、その顔がドロドロに崩れ、悪鬼のようになるというものであった。
 翌日、里奈はビデオレンタル店に行くと、このビデオがどこから出てきたのか、わからないという。
 以来、里奈は奇怪な夢や幻覚に悩まされるようになり、様子が激変。
 更に、達郎に横恋慕していたクラスメートの岡田咲子が怪死してから、里奈の顔はビデオに出てきた女性と同じ、醜悪な容貌となる。
 また、性格も凶悪になり、里奈とは全く違う声で、汚い言葉をあたりかまわず、喚き散らかすようになる。
 達郎は里奈の変貌に大きな衝撃を受けるが、そんな彼の前に、一人の刑事が現れる。
 刑事は達郎に数年前に同じような事件があったことを話し、里奈を救えるのは彼しかいないと訴える。
 刑事に促されて、再び里奈のもとを訪れた達郎は、里奈が憑依した悪魔と必死に戦っていることを知る。
 里奈を救うために、達郎と刑事は、里奈の部屋から持ち出した、問題のビデオを分析して、手掛かりを得ようとする。
 悪霊の憑りついたビデオの秘密とは…?」

・「恐怖!テレビドローム」(「ザ・マーガレット」No.13(昭和60年)掲載/「悪霊夢A」に収録)
「真美は、不眠症気味の女子高生。
 ある夜、深夜放送が終了するまで観ていた真美は、サンドストームの中に一瞬、見知らぬ屋敷の映像が現れる。
 それが消えると、画面に徐々に人の姿が映し出され、恐ろしく醜悪な女性の顔が大写しになる。
 次の夜も、真美が深夜放送終了までテレビを観ていると、今度は、サンドストームの画面の中から、先日の化け物面した女性が画面から現れ、真美に襲いかかる。
 それ以降、真美の容貌はその女性と同じものに変わり、一日中、寝室で何も映らないテレビ画面をのぞき込むようになる。
 真美の幼馴染の史郎が真美を心配して、お見舞いに行くと、真美が覗き込んでいるテレビのブラウン管に、助けを求める真美の姿があった。
 真美が観たと話す、屋敷の映像に謎を解く鍵があると考えた史郎は、テレビ局でその映像を発見、問題の屋敷を突き止めるのだが…」

 あつたゆりこ先生の代表作というだけでなく、1980年代を代表する怪奇マンガだと私は考えている「悪霊夢〈ナイトメア〉」。
 内容は、ぶっちゃけ「エクソシスト」と「ビデオドローム」(注1)を強引に融合させ、あと、様々なホラー映画の影響を散りばめたものです。(注2)
 また、「呪いのビデオ」という内容は「リング」の先駆けとも評価されております。
(ただし、私は、「貞子」も「リング」もいまだちゃんと触れておりませんので、都市伝説の観点から、語る資格はありません。)
 まあ、ごちゃごちゃ言うのはやめましょう。
 この作品の最大の魅力は「グロ描写の絨毯爆撃」なのであります。
 いや、本当に私の知る限り、この領域まで達したマンガって、ほとんどないと思います。
 とは言え、そこに価値を見出す人は実に少数派なのでありまして、一般の人からすれば、単に胸糞の悪いマンガでしかないでしょう。
 それは首肯しつつも、ここまで圧倒的に「バッド・テイスト」だと、逆に、胸のすく思いがしますね。

 あと、「恐怖!テレビドローム」は「悪霊夢〈ナイトメア〉」の原型です。
 短編「恐怖!テレビドローム」が好評だったらしく、それに溢れんばかりのグロ描写を叩き込んだものが「悪霊夢〈ナイトメア〉」です。
 さすが、あつたゆりこ先生、わかっていらっしゃる…。

・注1
 「ビデオドローム」(1982年)はデビッド・クローネンバーグ監督の代表作の一つ。
 高校生の頃に観ましたが、大して感心しませんでした。
 二十年以上経って、今回観返したら、映像的にはまあまあ面白かったものの、ストーリーが相変わらず理解できず、やっぱり評価はビミョ〜です。
 再見の際の収穫は、ブロンディーというバンドのデボラ・ハリーのおっぱい…ではなくて、エンドロールのスペシャル・サンクス欄にて、アメリカのゲーム会社「アタリ」のクレジットがあったこと。
 確認は取っていませんが、予告編のヘンなCGや音楽に「アタリ」が関わっているものと思われます。

・注2
 個人的に、大感激したのは、二巻に出てくる「里奈に見つめられた暴走族が口から内臓を吐き出す」シーン。
 おお〜っと、これはルチオ・フルチの「地獄の門」ではありませんか!!
 ルチオ・フルチの三部作(「サンゲリア」「地獄の門」「ビヨンド」)の中で、腐乱しているわりに、ゾンビの身体能力が一番高いところが魅力です。
 それから、ビデオ・パッケージにもなった、有名な頭蓋骨ドリル貫通は、いまだにどういうトリックをつかったのかわかりません。
 何回もDVDでそのシーンを観返した結果、ドリルの先が尖ってなく、そこから血が出ているのではないかと推測はしているのですが、確信はありません。
 まあ、とにもかくにも、若い女性の観る映画ではないですよね。

 あと、脱線ついでに書いておきますが、「地獄の門」以上か同等に若い女性向けでないゾンビ映画「ゾンビ3」、もしも劇画化とかされる機会があれば、作者は「青木智子」先生以外に考えられません。
 誰かクラウド・ファンディングで立ち上げてみませんか?

 それから、「恐怖!テレビドローム」での「指が頬にずぶずぶ入る」描写は、「遊星からの物体X」と見ました。

2016年11月25日 ページ作成・執筆

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