葉月シモン「時越峠」(1982年3月30日第1刷発行)

 収録作品

・「時越峠」(1981年「週刊マーガレット」28・29号連載)
「受験生の辻村恵介は登山中、川に降りようとして滑落する。
 気が付くと、彼は、和服の少女に手当てを受けていた。
 彼は河原で倒れているのを発見され、二日も寝ていたらしい。
 彼は東京の実家に電話をかけようとするが、少女もその父親も電話の存在を知らない。
 それもそのはず、彼は明治38年(1905年/日露戦争集結の年)にタイム・スリップしていた。
 戸惑う彼を、トキという少女は健気に励まし、彼が未来から来たという話を信じてくれる。
 彼は彼女の家で働くようになるが、地主の息子、常吉がトキに目を付けて…」

・「果たされた約束」(1981年「週刊マーガレット」20号連載)
「片瀬聖子のもとに、守から電話がかかってくる。
 去年の春休み、彼女は、高校生のクラスメート五人と高原のバンガローに行き、来年、またここで再会しようと約束していた。
 また、聖子と守の二人きりの時、彼が留学から帰ってきたら、彼女と結婚したいと話していた。
 わくわくしながら、聖子は電車で高原のある駅に行き、守を除く四人と再会する。
 彼らはバンガローに向かうが、何故か、守の話題に触れないようにしていた。
 バンガローに到着してから、聖子は彼らにその理由を尋ねる。
 実は、少し前、守の運転していた車が崖から転落して、湖に沈んだと留学先から連絡があったと言う。
 しかし、聖子には彼から電話があり、冗談なのか本当なのか判断がつかない。
 沈む雰囲気の中、彼らは守が約束通りに来るのではないかと思い始めるのだが…」

・「テクノドクター良 熱い疾走!」(1980年「週刊マーガレット」夏の増刊号連載)
「高梨良は平凡な町医者。両親は亡く、身体の弱い妹、つぼみと二人暮らし。
 彼は、妹と一緒に自転車に乗っていて、自動車事故にあい、両手・両足はサイボーグであった。
 ある夜、彼のもとに急患が運び込まれてくる。
 それは、轢き逃げにあった進という幼い男の子で、神山代議士の息子であった。
 進は血液型が特殊で、また、両親はパーティーに出席しており、手当の甲斐なく、彼は亡くなってしまう。
 神山は、息子の死を良の責任にして、彼に対し、様々な嫌がらせをする。
 遂には、妹のつぐみを暴力団に誘拐。
 良は、神山が向かった伊豆の別荘に急ぐのだが…」

・「宇宙より愛をこめて」(1981年「週刊マーガレット」3・4合併号連載)
「このご時世で資金難となり、クニミツは四井古組を解散する。
 責任を取るため、彼はビルから跳び下り自殺を図るが、この世界にあやまってワープして来た宇宙船に衝突し、助けられる。
 宇宙船には、弁天様のように美しい女性、ミムロとロボットのビップが乗っていた。
 ミムロは八百年先の未来の人類で、地球をガンダーラ星人から取り戻すべく戦っていた。
 命を助けてもらった恩義がある以上、クニミツも彼女と共に戦う道を選ぶ。
 彼は彼女に惚れてしまったのだが、彼女の方は、さて…」

 葉月シモン先生の二冊目の単行本で、ファンタジー、怪談、SFとバラエティー豊かな作品集です。
 個人的に感銘を受けたのが、「果たされた約束」。
 稲川淳二さんの怪談で定番の話の一つですが、1980年代初頭にはもうあったんですね。
 このマンガの元になった話が何なのか、非常に気になるところです。
 「テクノドクター良 熱い疾走!」はSFアクションかと思いきや、やるせないラストです。
 あいつらを血祭りにあげれば、もっとスカッとしたんですが…。(良い子はこういう考え方をしてはいけません。)

2022年1月7日 ページ作成・執筆

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