井出知香恵「夢魔の女・愛」(1993年2月16日第1刷発行)
奈津見摩弥(なつみ・まや)は妖怪「夢魔」と人間の間に生まれた「宿命の女」。
彼女の父の家は昔、遊郭をしており、彼女の母は、奈津見の先祖に恋人を奪われ殺された達次という怨霊に犯され、摩弥を身籠る。
それを知った父親は外に女をつくり、摩弥には容子という異母妹ができる。
摩弥は、容子の幸せを願い、「奈津見コンピューター・ベース」の社長の座を彼女に譲り、自分はVIP相手の高級コール・ガールの仕事を選ぶ。
それは、彼女の身体にとり憑いている夢魔達に彼女の身体を介して男達の精力を与えるためであった。
また、彼女には、彼女が人生で本当に愛した圭介を殺した犯人を捜し出す目的もあった…。
・「PART.1」
「南米J国の元首・ビバルを腎虚に追いやった後、摩弥に電話がかかってくる。
電話の主は、摩弥が命よりも大切に思っている甥の秀を誘拐したと告げ、十億円を要求する。
容子の家に向かうと、彼女と夫の武夫が彼女を待っていた。
そこに誘拐犯人から電話がかかり、摩弥は犯人の要求を飲む代わりに、秀の無事を確かめるため、写真を送るよう求める。
摩弥はその写真を、ホテルで出会った、圭介そっくりの男性のもとに持ち込む。
彼は泉恭二といい、売れっ子のプロカメラマンであった。
写真を彼に分析させ、摩弥は写真が撮られた場所を特定し、警察と共に駆け付けるのだが…」
・「PART.2」
「鳥川かずこは、日本でも屈指のファッション・デザイナーで、摩弥の親友であった。
その彼女が摩弥に相談を持ち掛ける。
彼女の夫、直人が彼女を捨て、別の女のもとに行ったという。
彼の居場所を知りたいが、手掛かりをしっているのは連絡係を務めた宇月弘というピアニストのみ。
摩弥は自分の身体をエサに、彼から直人の相手と居場所を聞き出す。
相手は花屋のみや子という娘で、S半島にいるらしい。
S半島には、かずこの別荘があり、摩弥達は急いで向かう。
だが、半ば腐乱した直人とみや子の全裸死体がベッドで発見される。
警察は無理心中と判断するが、摩弥は何かが引っかかる。
宇月弘の洩らした「不自然なこと」は何を意味するのか…?」
・「PART.3」
「摩弥にしつこく個人的な取引を申し込んでくる末巻章吾という男。
彼はビデオソフト会社の社長で、ドラッグテープのヒットで財を成していた。
このドラッグテープというのは、映像でドラッグ体験を疑似体験できるというものであった。
摩弥は、彼の城のある、瀬戸内海の島を訪れる。
そこで、彼女は、彼のドラッグテープを見せられ、その感度に圧倒される。
だが、ドラッグのハイな気分の中に、女性の殺意が明らかに込められていた。
気絶した摩弥が目覚めると、彼女は実験室のような所でベッドに拘束されていた。
末巻章吾は、彼女を犯して、擬似SEX体験テープを作ろうと目論む。
だが、このままではテープに夢魔の淫らな心が取り込まれ、テープを視る者から精力を奪い取ってしまう。
そこで、摩弥は自己催眠にかけ、何も感じないようにする。
業を煮やした末巻は彼女を地下に放り込むが、そこにいた女性は…?」
・「PART.4」
「摩弥の義母妹の容子に、田島英巳という男性からデートの申し込みがある。
田島英巳は会社のトップエンジニアで、性格は温厚で仕事の鬼、また、浮いた噂は全くない。
ある晩、彼が容子を迎えに来るが、摩弥の夢魔は彼に「血しぶき」を感じ取る。
しかも、いつもはきっちりしているのに、ネクタイも締めていない。
不審に思いつつも、摩弥には他に懸念することがあった。
昨日、圭介を殺した犯人に心当たりのあるコール・ガールから電話があり、公園で会おうと約束していた。
摩弥は約束の公園に行くが、そのコール・ガールは何者かに背後から刺殺されており、また、その場に居合わせた、中条という刑事に逮捕されてしまう。
警察署で摩弥は尋問を受けている最中、犯人が自首してくる。
犯人は、妹とデートをしていた田島英巳であった。
彼は公園で、昔、彼をだました女を見かけ、発作的にドライバーで刺し殺したと供述する。
これで摩弥の容疑は晴れたものの、どうもすっきりしない。
摩弥は刑事の中条を使い、田島英巳について調べるのだが…」
夢魔と人間のハーフの女性を主人公にしたエロティック・ミステリーです。
詳しいことはわかりませんが、前編や続きがあるようです。(電子書籍で読めますが、未チェックです。)
若干、無理な謎解きもありますが、ドラマティックな展開で読ませるのは流石だと思います。
2022年1月27日 ページ作成・執筆