外薗昌也・原作/高港基資・作画「赤異本」(2016年8月20日初版発行)

 十数人の男女が座敷に円座になって、百物語をする。
 百話目が終わる時…。

・「その1 木の立ちふさがる家」
「坂本はバイク仲間の堀と共にツーリングに出かける。
 M県の山中の峠道で休憩していた時、堀は道沿いに一軒の家を見つけ、二人は様子を見に行く。
 その家は廃屋のようだが、奇妙なことに玄関の前に一本の木が立ち、玄関をふさいでいた。
 木はかなり太く、家の築年数よりもずっと時が経っているように見える。
 わずかだが、玄関の戸から出入りができたため、二人は中に入る。
 その家は無人であったが、整然として人の入った形跡がない。
 その後、坂本はツーリングから帰り、アパートで荷物を整理していると、中から手鏡が出てくる。
 その手鏡はあの家にあったもので、堀がいたずらであった。
 その夜、彼がなかなか寝付けないでいると…」

・「その2 AV女優・前編」
「あるデザイン会社に変わった職歴の男性が入社してくる。
 名は陣内で、元・AV監督であった。
 ある日、デザイン会社の廣瀬は陣内から業界の「怖い」話を聞かされる。
 その話とは、ある撮影の時に起こったことであった。
 撮影日の朝、女優のマネージャーから電話があり、自分は別用があるので、女優だけ先に行かせるという。
 ところが、撮影所に来た女優は目が虚ろで、全然生気がなく、ゾンビのようであった。
 とは言うものの、スケジュールはギリギリで、この女で撮影することとなる。
 そのうちに、スタッフたちは奇妙なことに気付く。
 女の容貌や姿かたちが見る度に異なっているのであった。
 女の異常さに気付きながらも、撮影は進み、絡みのシーンとなるが…」

・「その3 AV女優・後編」
「半年後、陣内はデザイン会社を辞めるが、廣瀬はあるホテルで彼と再会する。
 陣内は古巣のAV業界に戻り、今はネット配信のアダルト動画の制作会社で働いていた。
 彼はまた廣瀬に業界内の「怖い」話を幾つか語る。
 そして、廣瀬に会社で「強烈なのが映って」いる動画を見せようと誘うのだが…」

・「その4 動かぬ少女」
「五十過ぎの女性は六、七年前から少女の霊を視るようになる。
 少女は両腕を少し曲げて前に出し、両手は下に下げていた。
 顔はうつむいたままで見えず、突然、現れては消える。
 ある夜、彼女は奇妙な夢を見る。
 廃校のような場所に彼女はおり、廊下を進むと、広めの部屋に出る。
 部屋の中央では、あの少女が両手を縛られて柱を抱き、泣いている。
 そこに教師らしき男性が現れ、手にしたバットで少女の背中を殴打する。
 目覚めた女性は四十年前の小学三年生の時、自分と友人の三家族で夏休みにキャンプに行ったことを思い出す。
 そのキャンプ場は田舎の廃校を利用して作られており…」

・「その5 死んでいる人間」
「漫画家の高岬米助はある女性漫画家と合同サイン会をすることとなる。
 その女性漫画家は温かな家族を描いた作品で知られ、本人はとても美人であった。
 だが、高岬は彼女に生気というものをあまり感じない。
 サイン会の次の日の朝、高岬の妻が彼に昨夜見た夢の話をする。
 彼の妻は霊感があり、過去の出来事を当てたり、未来を予知することがあった。
 彼女は夢の中で、真っ暗な夜の海で小舟に乗っていた。
 夜の海には数々の死体が浮かび、その中に非常に美しい女性の姿がある。
 女性が目を開き、妻が助けようとすると、櫓を持った船頭が「この子はもう死んでる」と止めたのであった。
 妻の夢はこれ以上、あの女性漫画家と関わらないよう警告するものだと高岬は考えるが、来週には二回目の合同サイン会がある。
 そのサイン会の後、彼は女性漫画家から呼びかけられ、彼女の家族について打ち明け話を聞くこととなるのだが…」

・「その6 座る男」
「樋口は中学の時の同級生だった梶谷からメールで「会いたい」と連絡を受ける。
 彼女とは大して親しくなかったので、訝りながらマンションの部屋を訪れると、中はゴミだらけで凄まじい異臭が漂っていた。
 奥からか細い彼女の声が聞こえてきて、奥に進むと、彼女は蒲団にくるまり、体調がひどく悪いらしい。
 彼女の話によると、高校卒業後、キャバ嬢として羽振りの良い生活を送っていたが、半年前から、奇妙なことが起こり始める。
 彼女に背を向けて正座している人物が部屋の隅に視えるのであった。
 大して怖くはなく、そのまま、ニ三か月が過ぎた頃、彼女はその背中に見覚えがあるような気がする。
 はっきりとは思い出せないため、人物の前に回ると、中学校の時の平野という少年であった。
 彼女は彼を率先していじめ、彼は二年の時に交通事故で亡くなったと処理されていた。
 彼女は平野の霊を嘲笑しデコピンすると、霊は消える。
 だが、それが始まりであった…」

・「その7 めまし」
「ホラー作家の岡園にはkという女性の同業者がいた。
 Kは実際に怪異を体験した人に取材して執筆するタイプで、彼女あるメールを読み、次の取材を「めまし」に決める。
 そのメールとは「妹が市立医大の旧校舎廃墟で『めまし』を見て、ひきつけを起こすくらい怖い思いをしてしばらく歩けなくなりました」というもので、このメールの提供者の「M県 S」というのは彼女の郷里の同窓生であった。
 彼女は実家に帰りがてら、Sとその妹に話を聞きに行く。
 だが、以降、岡園は彼女と連絡が全く取れなくなる。
 ある日、彼は彼女を見かけるが、両足が悪く、膝が曲げることができないように見える。
 彼女は彼を避けようとしていたが、彼は彼女を追いかけ、彼女から何が起こったのか聞く。
 彼女は帰省した際、すぐにSの家を訪問したのだが、そこで目にしたものとは…?
 そして、「めまし」の意味するものとは…?」

 内容は面白いのですが、「百物語」の体裁をとる必要があったのかな?と思います。
 話の数は十話もないので、ボリューム不足というだけでなく、結末も説得力を欠いて、もったいないです。

2024年1月24・28日 ページ作成・執筆

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