吉國よし「鬼眼謎払い あやかしの恋」(2013年12月23日第1刷・2017年3月18日第2刷発行)
・「序章」
「終戦から一年後(1946年)。
左目に包帯を巻いた帰還兵が品川駅に到着する。
彼の名は密丸昭良。
両親と妹は空襲で亡くなり、彼を迎えに来る者はいない。
だが、彼の身の回りには小鬼が三匹、まとわりついていた。
これに気付いた信田という男に密丸は左目の秘密について話す。
彼は昔、妖怪を視ることができた。
長い間、視ることはなかったのに、戦争中、大陸で…」
・「第一章」
「昭和二十六年(1951年)、密丸は助手&降霊少女の江島わか奈と探偵社を始める。
それから七年後の昭和二十八年(1953年)、今回の依頼はある洋館の婦人からであった。
彼女の家には猫がたくさん飼われていたが、一匹の黒猫の様子がおかしいという。
ある日、その黒猫はイヤリングを拾ってきて、それを皮切りに、ネックレス等を持ってくるようになる。
遂には人の耳をくわえてきて、婦人は探偵に相談をしたのであった。
江島わか奈が猫を視ると、猫に憑いているものが彼女に憑依する。
それは首を捨てぬと殺すと猫を脅しているらしい。
首と聞き、密丸は最近、失踪女優の首が発見された事件を思い浮かべる。
そこで、カストリ雑誌の記者をしている信田に話を聞くと…」
・「第二章」
「密丸は、殺害された女優の友人である園崎乃々に話を聞きに行く。
彼女は人間離れした美しさがあった。
一つだけ気になったのは、首元の横のアザ。
密丸が左目で彼女を視ると…。
一方、わか奈は見世物小屋に囚われている猫又に応援を要請する。
この猫又は香川の山中から連れてこられ、故郷に帰すことを条件に、密丸たちに協力することとなる。
そして、信田は園崎乃々の母親に会いに行っていた…」
・「第三章」
「猫又は町内の猫たちに聞き込みをして、猫だけでなく、他の動物もおかしくなったことを知る。
猫又の案内で、雑木林を奥に進むと、妙にカラスが増えてくる。
その先には失踪した女達の生首が幾つも埋められていた。
そこに刃物を持った男が現れ、密丸の胸を刺し、わか奈をさらう。
この男の正体は…?」
・「第四章」
「わか奈が目を覚ますと、納屋の中で、手足を紐で縛られていた。
彼女の頭の中に、首を斬られた女達の霊が入り込み、犯人について教える。
だが、わか奈のそばには先程の男がいて、彼女の身にも危険が迫る。
生首切断犯は一体誰なのであろうか…?」
・「終章」
「事件は終り、平穏な日々が戻って来る。
しかし、密丸にはある疑問があった…」
あとがきによると、『墓場鬼太郎』に影響を受けて100ページ超えのネームを描き、ダメもとで「『この漫画がすごい!』大賞」に応募したところ、優秀賞を受賞してしまい、数か月で完成させたのがこの単行本とのことです。
そのために、ストーリーを練る時間がなかったようで、幾つかの説明不足が目立ちます。(方相氏と密丸の関係、密丸がわか奈と出会った経緯、首を切断された身体はどうなったの?、密丸が眼帯を外した時の変化…etc…)
でも、ストーリー自体は面白いし、キャラ立ちもなかなか。(特に、女性キャラがステキ)
そして、特に好感を持ったのは、一生懸命描いていることが伝わってくること。
ところどころ、作者が力尽きてる場面もありますが、それでも、個人的には許せてしまいます。
ただ一つ、残念なのは続編がでなかったこと。
どうも吉國よし先生はその後、フェードアウトしてしまったのか、グーグルで調べても、ほとんど情報がありません。(ペンネームを変えた可能性もありますが。)
それでも、吉國先生に描く意欲があるのなら、どんなかたちであれ、是非とも続きを描いていただきたいものです。
2023年7月4・6日 ページ作成・執筆